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『天使の翼』第12章(49)~吟遊詩人デイテのネバーエンディング・アドベンチャー~
その擦る音は、吟遊詩人の耳を持たずともすぐに分かる、複数の……いや、とても多くの擦る音の混じり合ったものだった。
それが、だんだん大きくなってくる。
地響きとまではいかないが、かなり大きなもの……生き物が、たくさん、近付いてくる。
……
音が止まった。
それは、もうすぐ目の前にいる。
目を凝らすが、光が足りない。
と、わたしの傍らのデビルが、目を覚まして、すぐさま、わたし同様洞窟の奥に向き直った。
彼女は、クーと鳴いた。
それに対する返事――としか言いようのない、ゴロゴロと喉を鳴らすのが聞こえ、わたしは、瞬時に見えない存在をマウンテン・デビルの母獣と悟った。
「よかった……」
思わず声にだし、マウンテン・デビルという生き物に絶大な信頼を寄せている――思えば、最初に話を聞いた時から、何か感ずるものがあった――自分に驚く。全然怖くなかったばかりか、だれか特別な人に会うような期待感すら胸に感じていた……