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目に見えない価値を大切にし教養を深める

和菓子を購入するというとき、私たちは「美味しいから」という理由だけではなくむしろ、「美しい見た目」「季節を感じるもの」「贈り物」「日本文化」として選ぶことが多いです。
目に見えない価値で選んでいます。

五感の芸術

虎屋の黒川光朝氏の言葉である「和菓子は五感の芸術」とは・・・

視覚:美しい情景を思い浮かべる見た目
味覚:口に含んだときに広がるまろやかな美味しさ
触覚:黒文字(楊枝)を入れたときの感じられるような固さ
そして・・・・想像できなかった聴覚

優雅な菓銘の響きや、それぞれのお菓子の名前を見たときに季節を感じること・・・・

語感や音感だけではなく
百人一首や、源氏物語、伊勢物語・・・・古典に由来した菓銘も多いのが特徴です。

和菓子をいただく際、「五感を使う」という意識を持っている方は茶道をされている方以外だと少ないと思います。

フランスには、キリスト教の公現祭にちなんで1月に食べる「ガレットデロワ」というお菓子がありますが、お菓子はその国の文化に深く繋がっており、特に和菓子はその中でも繊細で一つ一つにうんちくもあり、突き詰めると面白いものです。


ちなみに虎屋さんは室町時代後期の1520年代の京都で創業されています。

「虎屋 和菓子と歩んだ五百年」

によると

「水戸黄門、吉良上野介、皇女和宮、徳川慶喜、富岡鉄斎、岩崎弥太郎、初代中村吉右衛門、池波正太郎、ブレア英国首相夫人」さらには井原西鶴の作品の中に虎屋羊羹が登場するなど・・・・
知れば知るほど知的好奇心や想像心に刺さります。

虎屋

画像:虎屋HPより

老舗

私が生まれ育った京都には老舗と呼ばれるお店がたくさんあります。
老舗の定義は「30年」らしいのですが300年の老舗のお店をたくさん見てきたので30年???とびっくりしてしまいますが、300年前の情景に思いを馳せると歴史が受け継がれるというのは本当に素晴らしいと感じます。


伝統文化や老舗は、デジタルで手に入れた便利さや効率重視の今の時代からは真逆のところに位置していると思われていますが手を掛ける素晴らしさ、芸術というのは本来人間が大事にすべきことなのではないでしょうか。

ちなみに私は京都の大学時代経済学部でしたので卒論に選んだのは「京都の伝統産業について」でした。京都に限らず日本には世界に誇れる伝統工芸や職人技術があります。
ですが後継者が育たず事業継承できない、「もう売れる時代ではない」とその代で終わるお店も多々あるのです。

私が長年いたラグジュアリー業界と京都は性質が似ていると思っているのですが、その歴史や残すべきものと時代に合わせて変化していくという革新のバランスがとても重要です。流行っているからと言ってなんでもやるのではなく、削ぎ落とす美しさ(やらないという選択)これがあるからブランドとして残るのです。


老舗の話に戻りますがアートや音楽、芸術が文化として残っていくのも含め「残るもの」とは結局、人の心に残るものです。

便利な時代になっているからこそ、「手を掛ける」「効率ではないもの」「目に見えない価値」はますます希少です。
SNS時代になり、なんでも「映える」ものが流行っていると思いがちですが実はひとはそういう「広告めいたもの」に敏感になっていたり、なんでも簡単に手に入れやすくなっている便利な世の中で逆に「非効率的なもの」に刺激を求めているように感じます。
タクシーを使えばあっという間に目的地に着くことはできますが、歩いて初めて見える景色があります。
同じように人生も便利だけで得られるものは限られているのかもしれませんね。

感性を磨くことは教養に繋がります。教養があるのとないのではやはり見えてくる世界や、受け取れることが変わってきます。
感性を磨き続けることは忘れないでいたいものです。

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