とにかく大変だった。
夕方5時半過ぎ
「あー、仕事終わった」
ノロノロ歩きで帰宅していた。
背中痛い。パソコン仕事7時間45分でからだガチガチである。
車の走る大きな国道沿いにでた。歩道の幅も広く4メートルくらいある。
向かいから中型の茶色い犬が走ってきた。
後ろから中年女性が追いかけている。
ぼうっとその姿を眺めていた。
ーーー
犬がそばに近寄ってきたかと思うと、左足に痛みが走った。
一瞬の出来事で、痛みがあってから何かがあったのだと気がついた。
え?え?
後ろから走ってきた女性は
「ごめんなさい、大丈夫ですかー」
と叫びながら犬を追いかけて
…行ってしまった。
え?え?
あわててジーパンをたくしあげてみる。
(膝下のワンピースを着ていて、下に細めのジーパンをはいていた)
左のふくらはぎが、うっすらと皮が切れていて
内出血してる。
内出血が広がってる、、、、。
え?え?
犬に咬まれた!
ようやく、脳が事実を認識する。
どうしよう!
狂犬病とかならないよね。
どうしたらいい?
理科系夫に電話。
ところが、うまくiPhoneが反応しない。
暑さと緊張で、たくさんかいた汗が画面にポタポタ落ちて反応しなくなったのだ。
あわてて画面を拭いて、電話する。
理科系夫「犬に咬まれた?なんで?」
あつこ「よくわからないんだけど、
犬が走ってきて、
がぶっとされて
それで走って行っちゃった」
理科系夫「飼い主は?」
あつこ「犬を追いかけて、走っていっちゃった」
理科系夫「それ、立派な傷害事件だからね」
あつこ「どうしよう」
ーーーー
みっともないほど気が動転している。
理科系夫「まず医者でしょう。
うーん、何科かわからない。
とにかく内科に行って」
あつこ「内科、どこがあったっけ」
理科系夫「その場所だと駅前の少し行ったところにK医院がある」
あつこ「じゃあ番号を調べて電話してみる」
時間は午後5時45分。
そろそろ閉まってしまう時間かもしれない。
理科系夫「電話をしてるとたらい回しにされる。
電話に出ないとか、受けられないとか程よく断られる。
行ってしまえば診察しないわけにいかない。
とにかく行きなさい!早く」
あつこ「健康保険証も
マイナンバーカードも持ってないけど、事情を話してみます」
理科系夫「健康保険証とマイナンバーカードの写真が
Evernote (理科系夫が愛用しているメモアプリ)に入っている」
あつこ「もう、検索する気にならないから」(ちょっと怒りモード)
ーーー
あつこ、一路、K医院を目指す。
(あれ?ない)
知っている場所のはずなのに、すぐに見つからない。
1本手前の道を曲がってしまっていた。
汗が髪の毛の先から流れて落ちる。
もどる。まがる。
あった!
受付時間が5時、診療時間が5時半までだった。もう6時すぎだ。
電気が暗く、しまっていることが一目でわかった。
開かない自動ドアを手で押してみる。
お!
中から看護師さんがドアを開けてくれた。
あつこ「すみません、
つい先ほど犬に咬まれて、どうしていいかわからなくてこちらに来ました。
診察券はありますが、今持っていません」
普段着に着替えた医者が出てくる。
M先生「犬に咬まれたのは内科じゃないんですよ。皮膚科か外科です。
そばに皮膚科あったかな」
周りにいた看護師さん2人が素早く動く。
看護師さん「O医院がありますが6時までですね。
すぐそばのKコーヒーショップの2階にあるMクリニックなら7時までやってます。皮膚科です」
たぶんあつこは、汗ダラダラで普通じゃない顔をしていたのだろう。
看護師さんが心配してくれているのがわかった。
あつこ「ありがとうございます」
ーーー
が、Kコーヒーショップがわからない。
何度も前を通ったはずなのに駅方向に行くのか、
反対に行くのかがわからなくなってしまった。
情けない。
情けない。
どこなんだ。
引き返して、
駅寄りに行き、
コーヒーショップを発見する。
階段を駆け上がる。
かなり古びたクリニックだ。
大丈夫なのか?
金属性のノブを右に回して開けるドア。
なぜか懐しい。
待合室は狭い。雰囲気が昭和だ。
狭い受付窓口。
職員の顔が1部しか見えない。
受付の中年女性に声をかける。
あつこ「先ほど犬に噛まれてしまって、どうしていいかわからなくてこちらに来ました。
保険証もマイナンバーカードもないのですが、写真は見せられます」
受付女性「実物がないと診察できません」
あつこ「明日持ってくるのではダメですか?」
受付女性「いろいろな人がいて、例外を認めていると、診察ができなくなってしまうので」
ーーー
あつこ、再び理科系夫に電話をかける。
あつこ「悪いんだけど、マイナンバーカードと保険証を持ってきてもらえませんか?
透明なポーチです」
理科系夫「え?どれ?」
タイミング悪く、診察券関係のポーチをつい最近変えたばかりだった。
100円ショップで売っている透明なポーチ。
中身が見えるのが便利である。
ところが夫はそのポーチがわからず、そこで5分ほど経過した。
既にお風呂にも入っていて、申し訳ないと思ったが、背に腹は代えられない。
ーーーー
そうこうするうちにどんどん患者がやってきた。
若い人もいれば親子連れもいる。私の後に9人来た。
こんなレトロなのに、なかなか流行っている。
夕方7時までやっているのは便利なのであろう。
わたしは最後だなと思いつつ待ち続ける。
15分経過。夫が来ない。
10分もすれば来るはずなのに。
冷静沈着の理科系夫よ。どうした。
電話がかかってきた。
コーヒーショップがわからなくなってしまったとのこと。
夫も焦っているのだと、その時気がついた。
ーーー
いったんクリニックを出て
外の道路で連絡をする。
ほどなく夫の姿が見えた。
スマホで連絡が取れるのがありがたい。
マイナンバーカードと保険証をゲット。
待合室に戻り、マイナンバーカードを読み込ませる。
よし!受付終了。
今からだときっと1時間近くかかるだろう。
待合室には12人いた。
夫は待合室の状況を見届けると帰っていった。
ーーー
それから10分後、思ったより早く呼ばれた。
部屋には、真っ白なおかっぱ頭のおじいさん。
まるでハリーポッターの映画に出てくるような先生だ。
あつこ「犬に咬まれました。飼い主は走って行っちゃいました」
先生「傷を見せてください」
内出血が広がっていたが、薄皮がむけているだけで、血は流れていなかった。
先生「ジーパンを履いていてよかったですね。
抗生剤を出しますので、二日間飲んでください。
あと、この塗り薬を塗ってください
腫れるとか、熱を持つとか異常があったらまた来てください」
あっけなく診察は終了。
待合室に戻る。
受付の女性が声をかけてきた。
受付「犬に咬まれたのは交通事故と一緒で保険が使えないんです。
だけど、今回は相手がわからないので、保険を使いました。
本当は、飼い主が100%、その費用を出すんですよ」
なるほど。
ほっとした途端に、怒りの気持ちが湧いてくる。
あの時、びっくりしてしまって状況がよくわからなかった。
追いかけていったのだから、リードを握っていなかったのだろうか。ふりほどいたのか。
あつこ「ここで診察していただけてよかったです。
まさか63にもなって、初めて犬に咬まれると思っていませんでした」
受付女性が笑っていいものか、困ったような顔をした。
ーーー
そうだ。状況がわかったらすぐに連絡をすることと夫に言われていた。
あつこ「診察してもらいました。
抗生剤と塗り薬を出されて、異常があったらまた来るようにとのことでした」
理科系夫「良かった。今回は仕方ないけど、相手をちゃんと確認しないとだめだ。
これ警察に届けていいくらいの事故だから。
傷害事件だからね」
あつこ「はい」
娘たちの反応
なっちゃん「ママ、犬に咬まれたの?
この前ベビーカーで肋骨折って
今度は犬?」
はるちゃん「ママ危険予測できないの?
犬が駆け寄ってきたら、
さっと横によけるとか反応できないの」
…。
返す言葉もない。
ーーー
教訓
5分先に何があるかわからない。
ぼーっとして道は歩かない。
マイナンバーカードをいつも持ち歩く。
理科系夫「しかし順番を早めて診察してもらえてよかった。
あの状態で1時間待つのは辛かったと思う」
不意に、クリニック受付横の手書き文字の張り紙を思い出した。
(ああ、、、わたし、ハチに刺されたと同じ扱いだったんだ)
気がついた。
1日経ちましたが、あつこは無事です。
(あ、連続投稿は途切れてしまった)
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