生態系づくりを求め、ルールデザインを生業にした
こんにちは、あつきです。
前職ではプロダクトマネジャーをやっていました。
2023年4月より株式会社GaudiyにてProtocol Designerとして、経済学を始めとした多様な観点でルールデザインをしています。
また、12月からはPMとしての知見も活かしつつ、プロダクト組織づくりに焦点を当てたルールデザインをしています。
転職してどうだったか、入社してやってきたこと、これからすることについて書きます。多分長いです。やっぱ長かったです。
ちなみに、プロトコルとは、一般的な組織でいう制度設計でありゲームルールのデザインでもあります。
後ほど、自分なりのプロトコルについての解釈を述べます。
まとめ
カオスを求めて転職したが、DAOの再解釈をきっかけにカオスは嗜むものだと気づいた
カオスの嗜み方こそが、ニーズと願いを考えたプロトコルづくり
プロトコルによりプロダクト生態系を定義し、拡張する
カオスは嗜むもの
転職した理由
新卒で前職に入る時には、3年で出ることを決めていた
もっとヒリヒリしたいと思い、ベンチャーの不確実性を求めた
生態系に興味を持ち、Gaudiyを選んだ
▼ 詳しくは前職の退職エントリを
理由は浅はかだった
ヒリヒリを求め、カオスな場を求め、新しい知的好奇心を求め、ベンチャー企業を探し、Gaudiyに入社しました。
アドレナリンジャンキーだからです。
Gaudiyには3ヶ月ほどのお試し入社制度があり、お試し入社の終わり頃にふと気がつきました。
カオスじゃないな…
当時やっていたのは、すでに素案のあった選挙制度のブラッシュアップと実施、プロトコルチームへのプロダクトマネジメントの導入。
もちろん生態系づくりを考えたり、経済学などの新しいインプットは面白いが、どこか没頭しきれない自分がいました。
そして、カオスを求めて転職したのは間違いだったなと、転職理由の一部が浅はかだったことを知ります。
▼ 選挙制度についてはこちら
DAOの自分なりな再解釈が転機
GaudiyはDAOという思想を持っており、このDAOとは何か?それで組織が成り立つのか?という興味こそ生態系への興味の一部でした。
また、Gaudiyでプロトコルデザインをする以上は、DAOについての理解・解釈は必須なため、ずっと考え続けていました。
DAOとは、Decentralized Autonomous Organization…
Decentralized:De(離す)+centralize(中央化)→分散化
Autonomous:Auto(自己)+nomous(法律)→自律
Organization:Organize(組織化)+tion(※名詞)→組織化されたもの
それぞれもう少し踏み込んで考えてみると…
分散化は、権利の分散であり、DAOのメンバーには権利が付与される
PMの頃に読んだEMPOWEREDがまさにだと思うが、責任とそれにあった権限を与えられているということ
自律は、何に従うか?に対するアンサーとして自己に従う。つまり、DAOのメンバーは自己決定をするということ
余談だが、お釈迦様が残したとされる、他人ではなく自分自身を頼りとして生きるという意味の「自灯明」という言葉が近いと思う
組織化は、チェスター・I・バーナードの組織論に倣えば、「共通目的」と「協働意思」と「コミュニケーション」によって成り立つ
「共通目的」がなければDAOなりえず、「協働意思」を育み「コミュニケーション」を設計することも重要となる
余談ですが、上記の解釈においては、組織構造としての階層構造とDAOは両立しうると思います。つまり階層的な責任と権限の分散を行い、メンバーが自律的に行動する組織はDAOである。言い換えると、DAOとして階層構造をとることが出来ると考えています。
(よくDAO=階層のない組織って認識を耳にするので…)
自分はDAOのメンバーたりえたか?
自分なりなDAOの解釈に基づくのであれば、自己決定を行い、自分で責任を負い、組織として必要な行動を行わなければならない。
責任や権限を負ったか?
かなり自由を与えられつつも、研究者とのコラボレーションなどの大きな責任と権限をもらっていた
しかし、自由すぎるフィールドで立ち尽くすことも多かった
自己決定はしていたか?
分かりやすいカオスを待っていた
それは実はカオスじゃなく、自由すぎる状態に対して喫緊な課題という分かりやすさを求めていた
それは「自灯明」じゃない
組織の一員となろうとしていたか?
共通目的の理解やコミュニケーションの重要性はかなり意識していた
協働意思を持つ、持ってもらうことはおざなりだったかもしれない
(ここはシンプルに自分がまだまだガキっぽい部分)
つまり、DAOメンバーとして、不十分だったなと感じました。
カオスへの歩み寄り
世界に生きている以上、自分は常に「自由」というカオスに晒されていること、「自由こそ不自由」ということを強く再認識しました。
これまでの人生の大半を占めていた、アドレナリンジャンキーとしてカオスを求めているという自己認知は、むしろ分かりやすさを求めている自分の正当化でしかなかったのかもしれないと感じました。
それに気づいてからは、やるべきことは明確で、自由というカオスを嗜めるようにする。そのためには、自由を自分で制限することが重要だと思い、それこそが自己決定を行うということだと考えました。
▼ この辺の内省は「暇と退屈の倫理学」が結構影響あるなとも思います
改めて何に責任を持ち、何をやり、逆に何はやらないのかを宣言することを重視しました。組織における自己決定は、有言実行的に周囲に開示しなければ意味がありません。そして、その宣言こそ「縛り」として重くのしかかりつつも、前進する力になる。
(呪術廻戦でいう術式の開示…ハンターハンターでいう制約と誓約…w)
結果、Gaudiyにおける自分の戦い場所と戦い方が見え、没頭できる環境を自分で作り出すことができました。
プロトコルというゲームルール
Gaudiyにおける重要な思想であり、Gaudiyのルールであり、法的なもの。
そして、自分が戦う場所として再認識した生業です。
プロトコルはみんなのために
そもそもプロトコルがなぜ必要か?というと、人間は自立しつつも、他者と切っても切れない強い相互関係にある生き物だからと考えています。故に、完全なる自由において人間は、ホッブズ曰く「万人の万人に対する闘争」状態になるからです。まさに先述の「自由こそ不自由」ということ。
幼少期のはじめてのサッカーをイメージすると、それはサッカーというよりも球蹴りでしかない。それはサッカーとしての競技性を担保するゲームルールがないからです。もしくは、ゲームルールそのものはあったとしても、それを攻略するためのセオリー的なルール(この場合は共通規範と言い換えるとよりニュアンスは近いかも?)が存在せず、全員が徒にボールを追っかけていただろう。
Gaudiyには、「人は誰しもイノベイティブだ。」という思想があります。プロトコルは、人間を自由というカオスから解放し、本来持っている創造性をより発揮しやすくするためのゲームルールだと思っています。
▼ 最も代表的なプロトコルは「蠱毒」
とはいえ、なんでもかんでもルールをつくれば良いわけではありません。
無駄なルールはむしろ雁字搦めな足枷にしかならない。
プロトコルづくりはプロダクトづくり
プロトコルづくりで意識しているのは、課題(ニーズ)があり、それを解決するためのルールであることです。これは、江崎さんの「RULE DESIGN」という本でも分かりやすく事例を交えて紹介されていますが、課題のないルールは使われないしそもそも存在意義がないからです。
そのためには、プロトコルの対象となるユーザーの課題を深く知る必要があり、ユーザーリサーチは必須となります。また、ユーザーはそもそも人間であり、人間の理解が重要です。そのため、行動経済学やメカニズムデザインといった社会学の知見を理解することもプロトコルデザイナーの仕事です。
一方で、ルールは手段でしかなく、願い(ビジョン)のないルールデザインは、課題こそ解けど未来に繋がらないと思っています。Gaudiyに関わる人をどうしたいか?その先に人間社会をどうしたいか?その在り方の理想を形にしたものがプロトコルだと考えています。
プロダクトマネジャーの方はお気づきかもしれませんが、プロトコルづくりに重要な観点は、プロダクトづくりで重要な事業収益とビジョン実現の両立に似ていると思います。ユーザーのバーニングニーズにハマる必要がありつつ、その先にある輝かしい未来を描かなければならない。
転職の際に、プロダクトマネジメントはしばらくやらないと言っていましたが、入社早々からプロトコルチームのプロトコルづくりの考え方にプロダクトマネジメントを持ち込み、実はめちゃめちゃプロダクトマネジメントしていましたw
プロトコルはファン国家のために
短期的には、Gaudiyの中で生じる課題を解決し、より良い未来のためのルールデザインに焦点を当ててプロトコルづくりをしてきました。しかし、中長期的には、Gaudiyでつくったプロトコルをより広い人間社会に届けることを考えています。
ただの「ルール」ではなく「プロトコル」と呼んでいるのは、規則というよりも規格的な意味合いを持たせたいからです。組織の規則というよりも組織を形作る規格として、様々な組織において活用ができるものでありたいという想いを込めています。Gaudiy最適なプロトコルでGaudiyによく似た別の組織が生まれるかもしれません。少し変数を変えることで全く異なる組織を生み出すこともありえます。
大富豪の基本ルールに対するローカルルールのように
集まった人でより良いプロトコルを生み出し、より良い場を作れるように
ここでやっとGaudiyの事業と繋がります。Gaudiyは誰もが自分らしい在り方で生きがいを得られるファン国家の実現を目指していますが、ファン国家には法が必要です。それは先述の通り、ファン国家の国民がイノベイティブであれる必要最小限の自由のためです。この法こそがプロトコルであると捉えており、プロトコルを追求することが、さまざまなファン国家を建国し繁栄させ、その国民である何かしらのファンである皆様が夢中になれる未来につながると信じています。
まずはGaudiyというファン国家を成立させるために
その先にすべてのファン国家の理想を形づくるために
▼ CoolなHP
プロダクト組織への転写
プロダクト組織のゲームルール
以前、プロダクトマネジャーの役割について、プロダクトマネジメントは生態系づくりだとnoteを書いたことがあります。(長いので興味があれば…)
ハイコンテキストで分かりにくいとは思いますが、プロトコルは生態系を定義し、形づくるルールです。
直近、Gaudiyのプロダクト組織づくりの旗振りをしています。これはまさに以前から考えていたプロダクトマネジメントの本質をプロトコルという観点で行う、まさに自分に与えられた天命のように感じていますw
そしてその先には、プロダクトマネジャーが不要になり、プロトコルによってプロダクトマネジメントが機能している未来があると思っています。
プロセスという盲点
プロダクトづくりにおいて、事業収益とビジョン実現が大事であるとは多くのプロダクトマネジャーの方が認識し、アウトカムとしてその達成に頭を悩ます部分だと思います。一方で、これを行うためには組織づくりが確実に欠かせないはずですが、多くの組織ではここに注意を払いつつも中々時間を割けないのも事実ではないでしょうか。
偶然のアウトカム達成では、プロダクトづくりという長い旅はうまくいきません。また、気合と根性のアウトカム達成もそれ自体は素晴らしいものだとしても、次第にチームは疲弊していきます。
アウトカム達成のプロセスに再現性と持続可能性をもたらすことこそ、本当のプロダクトマネジメントのはずです。Gaudiyでも現在まさにそのプロダクトマネジメントそのものの実験をしています。
まだまだ仮説検証の段階ではありますが、現在の取り組みは、Scrum@ScaleというScrumをフラクタル的に拡張するモデルをもとにしたGaudiyに最適なプロダクト組織づくりです。
Scrum@ScaleではEAT(Executive Action Team)と呼ばれるチームが、組織横断的な課題の検知と改善を行います。このEATの代表として、プロトコル思想を反映させた仕組み・ルールを組織に提供していこうとしています。
すべてのプロダクトを輝かしい未来へ
Gaudiyのプロダクト組織が実験者兼被験者としてプロダクトづくりのプロトコルを生み出すことが、すべてのプロダクト組織で使えるプロトコルとして、すべてのプロダクトを未来に運ぶと信じています。
前職では、プロダクトマネジメントの民主化が出来ればプロダクトマネジャーという役割を破壊できると言っていました。実際には、プロダクトマネジメントの民主化一歩手前までは行きつつも、プロダクトマネジメントが健全な状態を保つためにプロダクトマネジメントマネジャー的役割を担っていました…
これまで鍛えてきたプロダクトづくりというスキルの上、プロトコルという思想、ルールデザインという武器、EATという実験室と仲間を得たことで、あとは邁進するのみだと思っています。
生成系AIが仕事を奪いそうだと言われているように、遠くない未来でプロトコルがいくつかの仕事を奪うと思っています。そして人間本来のイノベイティブを開放してもらうために、適切な自由を生み出します。
この記事を読んでいただいた方々のプロダクト組織を、会社を、ファン国家として輝かしい未来に導けるようなプロトコルづくりを進めていきます。
おわりに
プロトコルデザイナーとして、ファン国家や会社全体、プロダクト組織に特化したものや職能に特化したものまで、様々なプロトコルづくりをご一緒できる方を探しています。
組織やプロセスに再現性と持続可能性を与える。
そのために、経済学や心理学など人間の理解に興味を持つ。
その上で、課題と願いの両方に目を向ける。
とても難しい仕事です。
研究分野としてもかなり新しいものです。
そして何より、Gaudiyの信じるファン国家に直結する。
一緒に無謀な挑戦をしませんか?
もし興味ある方がいましたら、カジュアルトークでお話ししましょう!
おまけ
趣味・副業でゲームデザイナーもしており、先週URAROJI GAMESというボードゲームブランドにて一作目のボードゲームを販売しました。1週間で100名超えの方々にご購入いただき、目標額の500%を突破しました!
ルールデザインの経験になることやクリエイターとしての生き様を持ち続けたい気持ちもあり、今後もプロトコルデザイナーと並行でゲームデザイナーも楽しんでいこうと思いますので、応援よろしくお願いします。