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ご飯と味噌汁
5年生の調理実習は今回は「ご飯と味噌汁」。日本食の定番を学校で習います。ご飯は左に汁物は右にそして手前に箸置きを置いて箸を並べる。和食の基本を日本人として習う学習です。
お米が稲からできること。籾殻を取り、ぬか層を取り、玄米から胚芽を取り、白米になっていつも食べていることを学びます。私は、一番栄養のある胚芽の部分が米粒一つの生命として育つ所がとても大切だと考えているので、何分つきかで食べていることを伝えています。子ども達は学校給食と同じ白米を食べている子がほとんどなので、不思議そうな顔をしますが、「粕(かす)」という漢字は米偏に白と書くのだということを思い出し、「本来だったら玄米が良いのだけれど、口当たりが硬かったり、消化が難しくて合わない人もいたりする」と伝えつつ、できることならちゃんと胚芽がついている栄養化の高いものが好ましいことを毎回伝えます。甘く口当たりがよく美味しく感じるのが白米なので、それを否定することはしません。より良い方向性だと私が感じているだけで、選択の自由は各家庭にあるので、お知らせ程度にしています。
炊飯の歴史も少しだけ学びます。昔は釜戸に薪で火を焚べながら羽釜に木の蓋で炊いていました。それから少ししてガスコンロの上に文化鍋をのせて炊いていました。現代では電気炊飯器で炊いています。みんなはほとんどが電気炊飯器で炊いています。ただ歴史の古いものの方が実は美味しく薪で炊く羽釜のご飯は最高に美味しいということを食通の人は知っています。ただ、電気炊飯器も改良されていて、かなり高価な物は羽釜に近いほどの美味しさを追求している物があるのをテレビで見たことはあるので、一概に言い切ることはできません。
実は我が家は私が小学生の頃、ガスコンロに羽釜に木の蓋で炊いていました。みんなの家はもちろん電気炊飯器だったので、授業で先生に手をあげさせられる場面があってものすごく恥ずかしかったのを覚えています。我が家は古臭くて恥ずかしいと。でもしかし、本当は味にこだわった美味しいご飯を食べていたのだと知るのは大人になってからでした。
そんな中で、学校で学習するのは、文化鍋でご飯を炊く炊き方です。私は美味しいご飯が食べたいので、ご飯専用の土鍋を使っていつも炊いているのでさほど違いを感じませんが、炊飯器が毎日の子ども達にとっては目を丸くして興味を持ちます。中には「そんなことで炊けるの?」と聞いてきたり、「そんなめんどくさいことをしないといけないの?ボタン一つでいいじゃない!」という子もいます。この「めんどくさいこと」をしていないせいで、器用に何かができる日本人の特性が失われていっているのではないかと感じています。なので、「学校では手間暇かけてめんどくさい事を学ぶことで賢くなる所なんだよ」と私は伝えています。
この「ご飯・味噌汁」の授業は、本来はご飯だけ、味噌汁だけの別日で学ぶようになっていますが、せっかく日本人の定番「ご飯・味噌汁」というセットの感覚を身につける所だと思っていますので、私は一緒に作り上げます。知識的な学習と手順を2時間かけてじっくり学び、調理実習の時は2時間で同時進行で「ご飯・味噌汁」を仕上げていきます。
ご飯は授業前に30分ほどの浸水時間が必要なので、事前にお米をかしておいて鍋の中で水に浸しておきます。味噌汁は出汁が生命なので、煮干しを頭と腑を摂って事前にこれもしっかりと水につけておきます。これはATONのもう一人のメンバーで、東城百合子先生に学んだ料理研究家《まゆ》が、いつもこの授業の時にはゲストティーチャーとしてサポートしてくれているおかげで、私も学ばせていただきました。
彼女が来ると、調理の途中で失敗しかけたような場面になっても最後には必ず美味しいものに仕上がって、お腹も心も満足させてくれます。ちょっとした火加減、気持ちの込め方、切り方の工夫、子ども達の小さな動きにも気を配ってくれ、子ども達も気軽に声をかけてたくさん助けてもらっています。
ですから、最後の試食の時は大満足です。出汁で使った煮干しは手早く佃煮にして、「ご飯・味噌汁」が出来上がる頃にはご飯のお供としてグループに配られる心の遣いようです。食材を無駄にしない。最後まで使い切る思いを子ども達に伝えたいと、熱心に協力してくださいます。そのおかげで、家庭科を教え出してから、もう何年も過ぎましたが、一緒に調理実習をするこのひとときは本当に阿吽の呼吸で子ども達を活かしきり、食材を活かしきり、2時限という限られた中(45分授業なので正味90分間)で大満足させることに徹するゴールを目指した流れの中で、終えた時は今日も良き充実したみんな至福の時間だったと、私たちも喜びの中で終えることができるのが嬉しいのです。
「こんな美味しいご飯ならもっと食べたい」
「お味噌汁の出汁が本当に美味しかった」
「またやりたい」
「今度の調理実習はいつ?」
子ども達は嬉しさが止まりません。毎日の食事の中に作る喜びと食す喜びがあります。子ども達でも教えればちゃんと作ることができます。心を込めて作る喜び、食べる喜びを小さな時から知っている子に育って欲しいと願っています。
農耕民族の祖先をもつ私達。お米がたわわに実る喜びを知っていたご先祖様。日本の大切な食生活を子どもの時から美味しいと味わえる子に育って欲しいなあと願っています。いろいろな美味しいものが巷にはたくさんあります。それでも原点、和食に戻れるような、「ご飯・味噌汁」が好きだと言える子になったらいいなあと思っています。
《れい》
日本人
お米の恵み
いただいて
発酵お味噌で
美味しい汁物
作ったよ
ご飯を炊いて
味噌といて
ほかほかごくり
丁寧な食
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