見出し画像

自己効力感はどんな目標の持ち方に関連するか

自分が価値があると感じるものごとを,やり遂げたいと思う傾向のことを,達成動機といいます。人間は誰もが,目標を達成したいという動機(目標達成動機)と,失敗をしたくないという動機(失敗回避動機)をもっているものだ,というのが達成動機です。

一口に「やる気」と表現される達成動機ですが,その中身はそれほど単純でもなさそうです。

たとえばこの論文(『達成動機の構成因子の分析』)では,社会・文化的に価値のあるものを達成しようとする社会的達成欲求と,個人の価値に基づく個人的達成欲求の枠組みから尺度を作成しています。そして,「社会的達成欲求」「個人的達成欲求」に加えて「挑戦・成功欲求」という因子が見いだされています。


遂行目標と熟達目標

何かをやり遂げようとするときには,目標を設定します。その目標の設定によっても,やる気は大きく左右されます。皆さんは,何かをするときにどのような目標を決めがちでしょうか。

たとえば,遂行目標と熟達目標という目標の分け方があります。

熟達目標(mastery goal):課題をうまくこなしたい,上達したい
遂行目標(performance goal):良い成績をとりたい,高い能力を示したい

熟達目標よりも遂行目標(パフォーマンス目標ともいいます)のほうが,行動が持続しないとか心理的にストレスが大きいとか,あまりよくない結果に結びつきやすいようです。

また遂行目標をさらに2つに分ける理論もあります。

遂行接近目標(performance approach goal):自分の有能さを示して良い評価を得たい
遂行回避目標(performance avoidance goal):自分の能力のなさが明らかになることを避けて悪い評価を避けたい

良いものを得ようとするか,それとも悪いものを避けようとするかという分類の枠組みは,目標の他にも心理学ではよく見かけるものです。そしてさらにさらに,熟達目標も接近と回避で整理しようとする試みもあります。

熟達接近目標(mastery approach goal):前の自分よりもよくできるようになりたい
熟達回避目標(mastery avoidance goal):前の自分よりもできなくなることを避けたい

有能さの評価基準が個人内にあるか他者との相対的な比較にあるか,有能さがプラスかマイナスかで4つの目標が整理されます。

また,目標の整理としてはこの2×2をさらに3×2に拡張するモデルもあります。課題接近・回避,自己接近・回避,他者接近・回避の6種類です。


達成目標と自己効力感

達成動機の中には,「その課題を達成できそう」という見通しが含まれているはずです。そうじゃないと,活動が継続されませんよね。「この課題をうまくこなすことができる」という実感のことを,自己効力感といいます。自己効力感は,特定の課題に対して抱く場合もありますし,特定の課題ではなく全体的なものに対して抱くことがあります。「たいていどんなことでもうまくできる」という感覚でしょうか。自己効力感の高さは,心理的な健康や適応の指標としても用いられます。

では,目標の持ち方と自己効力感にはどのような関連があるのでしょうか。メタ分析で検討している研究を見てみましょう(Achievement goals and self-efficacy: A meta-analysis)。

ここから先は

742字
【最初の月は無料です】心理学を中心とする有料noteを全て読むことができます。過去の有料記事も順次読めるようにしていく予定です。

日々是好日・心理学ノート

¥450 / 月 初月無料

【最初の月は無料です】毎日更新予定の有料記事を全て読むことができます。このマガジン購入者を対象に順次,過去の有料記事を読むことができるよう…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?