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「やり抜く力」のやり抜ける程度はどれくらいなのか
「グリット」という概念も,この10年ほどですっかり定着して広まってきた印象があります。子どもの学校に行っても,見聞きすることがありますからね。それだけ研究の世界から現実のさまざまな場面へと,新たな概念が広まってきたということなのでしょう。
そういう意味では,新しい概念が提唱されて,その概念が世の中に広まるという,貴重な現象を目の当たりにしているとも言えます。
しかも,まだまだこれからも広がる勢いがありそうです。
ところが,ある概念が広がってくると,それに少しだけ「待った」をかけるような研究が行われるのも,この研究の世界の特徴のひとつです。「役に立ちますよ!」という主張がされると,誰かが「ちょっと待って,それは本当ですか?」と立ち止まらせようとします。それはそれで,研究の世界のなかの健全な動きではありますよね。
グリットのメタ分析レビュー
今回は,そんな研究のひとつを見てみましょう。いや,別にグリット概念を否定しようという論文ではありません。実際にいろいろな変数とどれくらい関連があるのかを問題にした研究です。
それは,グリットのメタ分析を使ったレビュー論文です(Much ado about grit: A meta-analytic synthesis of the grit literature)。この論文を見ると,グリットがさまざまな変数とだいたいどれくらいの関連を示すのかがわかるので,グリットという概念の特徴を探るには良さそうです。
メタ分析は論文を検索するところからスタートします。心理学論文のデータベースや他の検索システムを使って,とにかく“Grit”について書かれた論文をしらみつぶしに検索していきます。
探すだけではだめで,その論文を読んで,メタ分析に使える情報が記載されているのかをチェックしていきます。この論文では最終的に,73論文,88サンプル,66,807名から得られたデータをメタ分析に使っています。
グリットとの関連が検討された変数も多岐にわたっているのですが,学業成績(各学校段階のGPAなど),学校や職場での忍耐力,ビッグ・ファイブ・パーソナリティ,感謝やポジティブ感情,幸福感やレジリエンスなど,各種の心理的変数もメタ分析の対象になっています。
結果は?
さて,グリットの特徴はどのようなものになったでしょうか。代表的な結果を見ていきたいと思います。数字は,それぞれの変数とグリットとの統合された相関係数です。メタ分析での統合のしかたが複数ありますので,おおよそこの範囲という値を示しましょう。
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