幸福感と自尊感情って何が違うのか
「似ているけれど違う」という現象は世の中にたくさんあります。親子もきょうだいも,一卵性のふたごだって「似ているけれども違う人」です。
そもそも「似ている」とか「似ていない」というのは,何か絶対的な違いがあるわけではありません。
そこにあるのは「相場」です。「何と何の関係よりも似ている」とか「これとあれとの関係は,これとされたの関係よりもよく似ている」と考えた方が良いものです。
そして,比べるものが違えば,似ていないと思っていたものも,よく似たものに変わっていってしまいます。
似ているものの比較
たとえば,
◎一卵性双生児は違う人だが,二卵性双生児よりもよく似ている
◎二卵性双生児は歳の違うきょうだいよりもよく似ている
◎きょうだいは親子よりもよく似ている
◎親子は夫婦よりもよく似ている
◎夫婦はクラスメイトどうしよりもよく似ている
◎クラスメイトは日本人どうしよりもよく似ている
◎日本人どうしは国の違うアジア人どうしよりもよく似ている
◎アジア人どうしは世界の人間どうしよりもよく似ている
◎人間どうしは人間と類人猿よりもよく似ている
◎人間と類人猿は人間とクジラよりもよく似ている
◎人間とクジラは人間とバナナよりもよく似ている
◎人間とバナナは人間とバクテリアよりもよく似ている
◎人間とバクテリアは人間と石よりもよく似ている
といった風に,です。
このように,何と何との類似性を何と何との類似性と比較するかによって,その評価は変わってきます。「全然似ていない」というのは,「何を想定しているか」によって左右されてしまうと言うわけです。
幸福感と自尊感情
心理学の概念でも「似た者同士」があります。たとえば,幸福感と自尊感情です。どちらも「ポジティブな心理特性」であることに変わりはありません。
幸福感は,自分自身を幸せに思う程度です。過去には色々な研究があったのですが,最近ではまとめて大きくふたつのまとまりで捉えることも増えているように思います。ひとつはHedonicな幸福感(Hedonism; 快楽主義)で,喜びを感じ苦痛を回避していることです。もうひとつはEudaimonicな幸福感(Eudaimonism; 幸福主義)で,いわゆるウェルビーイングです。これは,心や生活が良い状態であることを指します。
一方で自尊感情は,自分自身を評価した感情だと言われることもあり,自分を「これで良い」と感じる状態のことを指します。
どちらも「良い状態」を指しますので,確かに似ていますよね。
どこが似ているのか
でも,いくら似ていても「違うもの」どうしなのですよね。
では,どこが似ていてどこが似ていないのでしょうか。そこでそのような検討を行った研究を見てみましょう。この論文(What are the Differences between Happiness and Self-Esteem)です。
調査の内容
調査に参加したのはカリフォルニア州南部の51歳から91歳,平均70歳の大人たちでした。調査に参加したのは621人で,公益事業会社の退職者たちだったそうです。調査は質問紙を郵送することで行われました。
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