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Ryong あなたの明日を彩る執筆家
2021年4月21日 08:04
市長の取り締まり「君がゲヘナ・リンツだね?」突然後ろから声がした。もう随分と長い間呼ばれることのなかった自分の名前。それを呼ぶ何者かが、背後に立っているのである。慌てて振り返った。身体が大きく身なりの良い男がいた。禿げ上がった頭と、その代わりに立派にこさえたあごヒゲ。上質なスーツと毛皮のコートを着用していた。格好だけでも一般人ではないことがわかる。この方は確か…。少女は男に
2021年4月12日 16:39
プロローグ雪がしんしんと降っていた。街の中央を流れる大きな川が上流の冷たい空気を運んで来る。実際の気温よりもよく冷えた。道行く人は巻きつけたファーのマフラーを鼻まで引き上げる。そして外套のチャックを閉める。誰しも足早に帰路に向かった。「マッチは、マッチは要りませんか」少女の声が聞こえる。雑踏の音で掻き消されてしまう、か細い声だ。声の主は背丈の小さな女の子だった。赤い頭巾を