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おどろきの中国 橋爪大三郎・大澤真幸・宮台真司

知りたいこと

  • 帯の裏に書かれていた「なぜ日本人の常識は彼らに通じないのか?」と言うこと

  • 日中は憎み合いを演出されているが、その根本的な政治的理由

概観

目次から各章で書かれている内容は割と読み取れそうな本。各章は、知りたいこと+これらも意識して読んで見ることにした。
著者3人による議論形式(鼎談)で、主に橋爪氏が二人の質問に答えると言うもの。同じような形式で書かれた本(ふしぎなキリスト教)があるようでこちらも気になる。

パッと見て、気になった章・第二部「中国人はいつ中国人になったのか」

ここで知りたいと思っていたことと実際の内容

それは、中華民国(通称・「台湾」)と中華人民共和国(通称・「中国」)があるが、一体中国人はいつ「中国」人になったのか、ということと、そして中国人と「中国」人はどう違うのか、ということだった。

実際ここで述べられていることは、
「近代の日本と中国での国民の連帯意識の違いは何か、その原因は?」。
もっと詳しくいうと、
「日本人は国内で分裂していても、外国に立ち向かうために一旦団結する、と言う手段をとった。一方で、中国は国民党と共産党という国内の対立の決着を優先して、日本や海外に対して団結して挑むということにはなかなかならなかった。それは何故か?」という話。要は、ここで言っている「中国人」とは、国民党と共産党という隔たりを超えた一つの『中国』にはいつなったのか、ということ。そもそもなったか?国民党は台湾に移ったのに。と思った。

宗教、とはやや異なるが根底にある伝統的思想の違い

日本:天皇の下に国がある。天皇は「神々」の子孫であり、我々国民もまた「神々」の子孫であるとするので、神秘的な血縁上の関係性がある。
中国:儒教という倫理的なルールのようなものはあるが、結びつきを定義するものではない。よって、重視する関係性は実際的な血縁関係で、その外の集団との結びつきが弱い。

ここで述べられていることは、国家として統一ではなく、国民が自国民であるという意識を持つ、という統一であった。

近代の中国は、当時日本に留学生をたくさん送り、明治維新を参考にして西洋の文化を輸入したらしい。孫文の三民主義(民族主義・民権主義・民生主義)はこれを目指していたものらしい。

これは面白い!あんなに巨大な国家を築いた、多民族国家の中国が、国民を「一つ」にするために他から学んでいたとは。

もう一つ、面白い点は国民としての統一という観点である。これは2013年ごろの鼎談で、彼らは、中国は今も国民として統一感というのは弱い、と言っている。では日本はどうなのだろうか。これは中国に関する本なので日本に関して詳しく述べられいないが、少なくとも私には、今の日本人に一体感というのはあまりないように思える。女性天皇と女系天皇がどっちでも良いという意見があるように、最早天皇による結びつきは弱まっている。

宗教観もなく、伝統的文化の天皇での結びつきもない今、日本人は団結できるのだろうか。

私は、政治に関して話すことがとても苦手だ。おそらくもっと若い人はもっと苦手な人がいるだろう。その理由は、人の悪意や悪企みに触れることへの不快感である。それを乗り越えること、または、それを一種のゲームとして捉えることができないし、そのモチベーションがない。政治は人ごとではない!とどれだけ言われようと、自分のためだけに頑張る気にもなれない。要は、不快感というハードルを超える、(政治に関して議論する)重要性を知らないのだ。それが私の最大の問題かと長く思っていたが、そもそも結びつきを感じられていないではないか。この結びつきを知ること、もしくは信じること、もしくは作ることが根本的な問題解決と感じた。このような考えが全くなかったわけではないが、綺麗事や問題転嫁のように感じてしまってしっかり考えてこなかった。しかし、こうも過去の中国を例にはっきりとその例を示されると、意識せざるを得ないし、これはややサイコパス的視点だが、客観的に面白そうだな、とも思えた。

これは今や、新たに作り直す必要があると思う。単純なカリスマを作ってもダメだ。アメリカのように「自由」という信念をただ導入しても意味がない。これでは近代以前の中国と同じで、頭がすげ変わることに何の葛藤もなく、国民同士のつながりにはなり得ない。

こう考えると、三民主義がいかに素晴らしかったがわかる。中国人としてのアイデンティティの再定義を行い、その確立と維持を目指す、としたのだから。今の日本人のアイデンティティは何だろうか。

このような、集団として結びつきを定義する、ある種神秘的なアイデンティティというのは、国単位でも組織単位でも仕事グループ単位でも、極めて重要だと感じた。そもそもそれが目的になり得るはずなのだ。それを忘れていた。



読む前のサーヴェイは以上。
次回から実際にしっかり読んでいくことにする。



メモ

無知ゆえに、細かい歴史的事実で知らないことがたくさんあった。”社会のお勉強”は高校か中学の頃以来だ。一個一個調べるのは骨が折れそう。

三民主義(民族主義・民権主義・民生主義)
民族主義:帝国主義から民族として独立すること
民権主義:民主制の擁立
民生主義:経済的な平等性のある民生の安定

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