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実家を失った「柴犬らんまる」と、実家を失った「私」
2024年1月1日。
動物系Youtuber「柴犬らんまる」の「おうち」が崩壊した。
能登半島大震災である。
2024年1月1日。
私は居住地である愛知から東京に、初のプロレス観戦に行くため。
夜行バスに乗る準備をしていた時だ。
楽しみにしていた旅行であったが。
とても気が気じゃないものに変わってしまった。
■「柴犬らんまる」について
「柴犬らんまる」というのは。
文字通り「柴犬」であり、Youtubeに開設されているチャンネルである。
その動画は飼い主が一言もしゃべること無く。
ただただ。
らんまるが撫でられたり。
らんまるがおもちゃで遊んだり。
らんまるが散歩していたり。
無邪気で素直に生きる様子が公開されているだけのチャンネルである。
↑私が最近とくに何回も見てる動画
私は昔、犬といっしょに暮らしていた。
しかし人間より寿命が短いために、みんな往生してしまった。
らんまるの動画は、ただ柴犬が可愛いだけの動画ではない。
犬と暮らしたことがある人間にとって。
まるで自分もらんまると暮らしているような気になるのである。
それは飼い主さんがらんまるを愛する目線。
らんまるがありのままの姿を見せてくれる光景。
そんな自然な愛情が私たちに伝わっているからかもしれない。
■らんまるが「家」を失う時、「私」が家を失う時
私がいつから「柴犬らんまる」を見ているのか。
正確には覚えていない。
が、「五歳児」とタイトルに付いていたのが強く印象に残っているので、この頃からは確実に見ているはずである。
早いもので、らんまるは今年の6月で10歳になる。
前述したようにらんまるの飼い主さんは「喋らない」。
「喋らない」からどこに住んでいるのか、私は全く知らなかった。
ご家族の安全のためにも、そんな情報は誰にも知られる必要がないとも思っていた。
2024年1月1日。
「そんな馬鹿な」という驚愕と共に、初めて知ることになったのだ。
ちょうど当日投稿されたのが、この動画である。
それ以降。
柴犬らんまるの動画は。
らんまるの可愛い姿を見ると同時に。
現地の被害状況を伝えてくれるドキュメンタリーへと変わっていた。
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ところで。
私は2023年の12月に実家を失った。
実家といっても賃貸マンションなのだが、私が20年以上住んだ家である。
私が誰より愛した犬とも一緒に住んだ家だった。
オーナーが取り壊して土地を売りたいというので、追い出されたのだ。
柴犬らんまるも実家を失ったが。
私も同じぐらいの時期に、実家を失ったのである。
引っ越し作業というのは、落ち込んでいて進められるものではない。
私は自分を興奮状態に駆り立て、新居に移った。
ちょっと変なニオイのする、貸家のひと部屋だった。
落ち着いてくると寂しくなってくる。
しかし、帰れる場所はない。
失ったのは家だけではない。
私が20年間愛した景色も、私から離れてしまった。
私が愛した犬と、一緒に何度も散歩した町が。
私の元から離れていった。
関係ない人間からすれば。
ただのつまらない郊外の町だった。
しかし。
私にとって長年自分を包んで、支えてくれた町だったのだ。
どうしても寂しくなって、一度元いた家を訪ねる。
当然誰も住んでいない、古くて寂しいマンションに変わっていた。
私は入れないドアの前で泣いた。
■らんまるが与えてくれたモノ
この寂しさを打ち払うことができたのも。
柴犬らんまるも、実家を失っていたからだった。
柴犬らんまるは実家を失ってもニコニコ笑っていた。
好奇心旺盛に知らない町をクンクン嗅ぎ回って散歩していた。
そして被災してるのにも関わらず。
私たちに元気を送ってくれていたのである。
「らんまるは強いなぁ。自分もがんばらなきゃ」
私は犬がバカだとは思わない。
私は犬が何も感じないとは思わない。
犬だって。
ツラいことはツラいし。
悲しいことは悲しいのである。
それでも柴犬らんまるは家族を元気づけ。
視聴者を元気づけてくれた。
らんまるはまさしく「愛」であった。
柴犬らんまるが失ったのは家だけではない。
24年10月の能登半島を襲った洪水により。
震災から守ってくれた思い出の車が破壊されてしまう。
悲劇は続き。
放し飼いにされた同じ大型犬に二度も噛まれてしまう。
らんまるは、ただ元気と幸せをくれるだけではない。
『何の落ち度もない存在でも、苦痛は避けられないのだ』という。
世界の理不尽さ、無常さを教えてくれたのである。
しかし。
世界がどんな理不尽であろうと。
どれだけ無常であろうと。
笑って生きることは出来る。
そう教えてくれたのも、柴犬らんまるだった。
■おわりに
私の願いのひとつは。
今は仮設住宅住まいのらんまるのご家族が。
新しい「おうち」を建てる際、少しでもお金を工面することだ。
今までも少額なれど募金してきたが。
もし建設する時になって。
資金が足りないなら、10万円ぐらいなら借金して送ろうと思う。
常に私を励ましてくれたらんまるは、本当の意味で尊い存在なのだから。
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