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旅 ブルターニュ

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フランス、ブルターニュ地方の旅をまとめています。フランス人の憧れのバカンスの地、ゴーギャンなどのポン・タヴェン派やバルビゾン派の画家が集まった自然豊かな地方、日本からはなかなか行…
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ブルターニュ:カルナック

「一度は見る価値がありますよ。ストーンヘンジばかりが巨石文明の痕跡ではありません。ソールズベリーだって同じケルト文化圏なのです。そもそもストーンヘンジの石柱もカルナックの石柱もメンヒルと言いますが、ブルトン語ですからね。」  いや、もう少し分かり易く言ってませんか、そう言いかけた時、彼は顔を上げてこう続けた。 「ああ、失礼。カルナックはなかなか興味深い所です。まずは、案内所の上から眺めてみてください。全体像は空から見るしかありません。展望台になっている少し高い建物がありますか

ブルターニュ:イル川

「ミディ運河はたしかに良く知られています。大西洋と地中海を運河でつないでいるなど誰が想像できるでしょう。夏ともなれば、たくさんの船が行き交いますよ。でも、残念ながら、イル川にはミディ運河のような観光船が無いのです。夏のバカンスにでもミディ運河に行かれたほうが良いですね。」 運河沿いを少し歩きたいだけだと伝えては見たが、船で楽しむ冷えたシャンパンの方がまともだと信じているに違いなかった。 「えぇ、イル川沿いのハイキングも悪くありません。レンタルの自転車もありますよ。50km以上

ブルターニュ:ラ岬〜西の果て

「何もありませんよ。まったく何も。ほんとうの西の果てです。波がただ音を立てているだけでね、行きたがる人には何か理由があるのでしょうが、とんとわかりません。」 そう言いながら歪んだ青いキャップをボールペンに戻すと、パタと音を立ててそれを置いた。 「まぁ、言い過ぎたかも知れません。立派な灯台ならあります。あとは強い風と小さな観光案内所がひとつ。もしそれでも行かれるのなら風避けにジャケットか何かをお持ちなさい。大西洋の風は案外強いですから。」  ラ岬(Pointe du Raz)

ブルターニュ:ブロセリアンドの森

「あぁ、ブロセリアンドの森ですね。今はパンポンの森と呼ばれています。とても美しい森です。興味をお持ちですか。遠方からの方には珍しいですね。これまでブロセリアンドの森のことを聞かれたことはほとんどありませんでした。まぁ、わざわざ遠くから訪ねるような場所ではないと思いますよ。もっと他にたくさん良い場所があります。そうだ、教会巡りなどいかがですか。この近くにもなかなか美しい小さな教会がたくさんあります。」 彼はそう言ってコーヒーを一口飲むと、遠くに見える教会の尖塔を目で示した。 「

ブルターニュ:モルレー

「夏のバカンスには良いところです。大西洋岸よりは案外静かですよ。ただ、おそらくはモルレーの街ではなく、少し北の街を話されているのでしょう。確かにモルレーからも船はありますが、おっしゃりたいのはもしかするとロスコフでしょうか。」 いや、海ではなく高架橋が見たいのだと言うと、顎髭をさすりながら彼はこう続けた。 「血塗られた歴史です。確かに美しい鉄道橋ですが、それ自体はさして古くはない。いや、新しい方が良いのです。教会を見下ろすような鉄道橋です。むしろその教会を訪ねられたらどうでし