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シチリアの旅④ ~ ヴィットーリア アリアンナ・オッキピンティ編 ~
僕がイタリアに来る前に住んでいた街、鎌倉の飲食店界隈では自然派ワインが盛んで、そこでその美味しさに触れることができたのは、料理人人生においてとても大きな収穫でした。
僕はアルコールにそれ程強くなく、ワインは自分の領域外の場所へ位置付けていた感も否めませんが、自然派ワインと出会ってからは、それは無くてはならない存在だということを確信しました。
普通とは順番が逆になるかもしれませんが、イタリアに来てからは自然派ワインとは呼ばれない所謂、普通のワインも好きになって行きました。
安いハウスワインでも、美味しいイタリア料理と合わせれば、塩・胡椒に次ぐ必須調味料と言っても過言ではありません。
今回は鎌倉で働いていた時も度々扱い、注目していたカンティーナ(ワイナリー)の1つ、オッキピンティさんへ訪問することにしました。
僕の知り合いの中にはワイン玄人が多く、彼らの見識には至りませんが、このシチリアのカンティーナが、どのような「風土」の中で、この素晴らしいワインを作り上げているのかを体感したかったのです。
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実はヴィットーリアからカンティーナまでは、バスや電車などの交通機関は通っておらず、朝から街中の自転車屋さんを探しましたが、レンタサイクルはどこもやっておりませんでした。(約1.5時間は歩き回った。まだアプリのレンタサイクルやキックボードみたいなやつは使いこなせていない。)
仕方なく駅に戻ってタクシー乗車。
イタリアのタクシーは不安だったので避けていたのですが、今では簡単な会話ならできるようになったので、あらかじめ値段を確認して乗車。
とても人の好い運転手さんでした。
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確か道を挟んで左がフラッパート種で右がネーロ・ダーヴォラ種。
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製作過程も見せてくれます。
スタッフさんがイタリア語(英語対応も可)で色々説明してくれるのですが、ほぼ分からない・・。
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五種類のワインを試飲しましたが、写真の端の二つは日本でも飲んだことがあり、とても華やかな味わいで美味しかったです。
この中でも、真ん中のコントラーダワインは別格の味わいでした。
コントラーダとは「限定的な地区・地域」の意味を持つのですが、このワインは地ブドウであるフラッパートを、土を変えて栽培し実験的に違いを研究したワインです。なので他に二種類あります。
これを飲むのと、「SP68」を飲みなれている方は驚くかもしれません。
深い味わいと香り、奥行きが今までのオッキピンティのイメージを覆してきます。
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帰り際に仕事中のアリアンナさんに出くわし、ちゃんと帰れるか心配されましたが(笑)、一緒に見学ツアーに来ていたイタリア人カップルの車に乗せてもらい、タクシーを使うことはなくヴィットーリア駅まで直行できました。
このカンティーナのHPには、アリアンナ・オッキピンティのワイン造りの物語や哲学が書かれています。
ゲーテやサンテグジュペリの言葉を引き合いに、創造という行為や、地球という資源に対する思いも語られます。
とても博識な女性で、自分もイタリア料理を理解するうえで、とても重要なヒントになりました。
日本に帰っても、僕はこのワインをずっと飲み続けることでしょう。
帰り際にサングラスをかけて、手を振ってくれた、ものすごく強いオーラを持つ美女アリアンナ。
シチリアの鋭い太陽の光と、それを柔らげるように吹いてくる地中海とイブレイ山脈の風に揺られるブドウ畑を思い出しながら。
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