己の生きる意味
私の中で最も動く感情は、憎しみだろう。
23年間生きてきた人生で、楽しかった時間は
たった2日。合わせても6時間に満たない。
それ以外は無気力とストレスが占めていた。
将来の夢もなく生きた幼稚園。
不潔な人が嫌で結果的にいじめ、今度は別件で別の人からいじめられて、皆と同じ中学を選べなかった小学校。
2年好きだった人が、1ヶ月付き合っただけの人に
貞操を捧げたと知った中学校。
早く結婚するために実学である工業学校を選んだのに、愛する人も見つけられず、失恋のショックを
引き摺って過ごした高校。
そして、5年ぶりに好きになった女性にも
恋人がいたことを知った大学。
死のうと思った。
2日毎に思い浮かぶ
「明日死ぬか今日死ぬか」という観念。
人は命が終わるとき、一体誰に
会いたくなると思う?
愛する人
私の自殺願望は彼女を苦しめることになった。
仕事場に通う男
恐怖する女
最期に渡した手紙は恋文ではなく
遺書だった。
なぜ人々は愛する人とともに生きること以外に
楽しみを見いだせるのだろうか?
私は世界を犠牲にしても、愛する人を選ぶ。
失うべき世界は私の命が見せる悪夢だった。
私は警察に連行された。
失恋からおよそ10ヶ月後の出来事。
「相手は恐がっている」などと、自分でもよく知っていることを次々と連ねる警官の諭しほど、届かないものはない。
事務手続きなら機械でもできる。
この手続きを終えたら死ぬ。
取り調べ室で目に入ったカーテンの紐が私を誘う。
だが、踏み出せなかった。
頭に浮かんだのは、彼女の笑顔だった。
まだ心には、彼女の笑顔をもう一度見れるのではないかという、哀れな希望が残っていた。
今にも死にそうな私を警察は易々と親に引き渡した。
私はその役立たずの人間どもを置いていった。
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5日後私は樹海で保護された。
板橋区から富士の樹海まで、何も食わず歩いていった。
死へ踏み出すことができないなら、
自然と憔悴すればいい。
だが死ねなかった。
心は死んでいても、身体は生きようとする。
もっと正当な死ぬ理由が欲しかった。
私は就活の失敗を理由に自殺しようと思い、
就活を始めた。
40社受けて内定は4つ。
私は死ねなかった。
かわりに気づいたことがある。
この心はヤワではない。
私が大学で修得したシステム論は、実用の余地があることを知った。
私が死の縁にいた10ヶ月の間、
彼女の好きなアートを修得しようと、美術やクラシック音楽を、絶望の中詰め込んでいた。
それがようやく醸成しようとしていた。
学問が、アートが
私の生きる道を拓く
「これらは日本のビジネスに活用されていない」
私を殺そうとする願望は、
絶望を与えた世界に向けられた。
世界を憎むことでようやく釣り合うだけの感情で
愛されるのは彼女も酷だったろう。
生き残った私は、この世界をぶっ壊そうと思っていた。
しかし、これは共感されるものではない。
この社会で生きることを楽しむ人々は多くいる。
それらを短絡的にぶち壊しても、動的平衡システムは傷をすぐに修繕する。
私の命を世界に引き留めるには大義が必要だった。
私は社会を壊すため、人々を幸せにすべきだと思った。
既成の構造を崩すには、別の組織が持続する必要がある。
誰しもが幸福になりたい。だからそうした社会を作る。
人々が各々に好きな帰属組織を作るという「仮想国家」を思いついたのは、就活中の2017年の8月だった。
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恨むべきは人ではない。
私の敵ははっきりしている。
人を食い物にする社会システムそのものだ
国は将来ほとんど役に立たない暗記学習を子どもにさせて、優秀な人間が利用するための駒へと18年かけて育て上げる。
そして、ほとんどの人間が企業に勤め、週5残業までして働き、ストレスを経済的消費で発散させる。
当然、失った金を取り戻し、生活水準を維持するためには、嫌な仕事でも続けなければならない。
仕組みの思う壺。
登ろうとしても足を滑らせ底に落ちる。
社会が与えるレールは、コストパフォーマンスに見合わない。
この社会は将来生まれてくる子どもたちに、
希望のある環境を提供できているだろうか?
私はこんな社会で夢を持てと言うのが無理だと思う。
「顧客第一」と言うが、そのために人がストレスを抱える社会は健全だろうか?
人は人生の大部分を働いて生きる。
ならば、社会を良くすることとは、考えるまでもなく
「働くを楽にすること」
だろう
最も大切にすべきは、金を支払う顧客ではなく、
価値を生み出す社員
社会をより良く循環させようと努める人間のほうであろう。
だからビジネスは会社を維持するためではなく、人のためになければならない。
だから国家は自己を維持するためでなく、人の生活をより良くするためになければならない。
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学問とアートを修める過程で気づいたことがある。
人は美しいものを求める。
宇宙の法則は単純だからこそ、美しい。
それは決して、ビジネスと相容れないものではない。
偉大な経営者ほど単純な理念に則っている。
結果がどうあれ、この世界に存在するには、
単純な仕組みで己を律するしかないのであろう。
それが良かろうと悪かろうと、組織化したシステムは存在してしまう。
それが嫌なら壊すしかない。
私の敵はコミュニケーションと制度から成る社会
そいつらは人間ではない。
だから言葉では敵わない
自殺願望を抱えた人間のままでは勝てない。
自然の闘争に勝つためには
やつらと同じ次元に立たねばならない。
人を食い物にする社会が私の邪魔をする。
だから壊すんだよ。
それが"己を生んだ"意味だ。
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彼女はアートと学問が好きだった。
「音楽を日常に溢れるくらい身近なものにしたい」みたいなことも語っていた。
だから私は、この社会にアートと学問をもっと根付かせ、
人間をアップグレードしようと思う。
それが私のできる償いでもあり、最良のプレゼントでもある。
愛と憎悪は対立しない。
目指すべき社会は一つである。
…
単純なコトが世界に位置を占める
心よ美しくあれ
夜明けを告げる日の輝きのように
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