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01.29 恋未満

「今日は16箱です。」

「確認しました。控えです。」

これだけの言葉を交わす時間が1日で一番長く感じてしまうのです。



青いシャツのボタンを首元まできっちり止めているくせに、陽に当たると琥珀みたいな色をした髪に僕は違和感を覚えました。

後ろ姿をじっと見ていると、振り向いたその人と目が合いました。

前髪のかかったその目は優しくて、
それから僕はその目を見ることが些細な楽しみになっていました。




夕方4時、
耳にかけていた髪を戻して、裏口が開くのを待ちます。

僕はその人の目を見たいけれど、その目で僕の耳を見られたくないのです。

今日も西日に当たった琥珀の髪に優しい目は半分隠れています。


朝起きてその人のことを考えながら服を選ぶこともなければ、夜寝る前に明日もその人に会えたらと願うこともない。

けれど、夕方4時に僕の手は僕の耳を隠します。

その人の目を見ている時は1日で一番長く、
安い苺味のチョコレートみたいな気持ちが僕をまた少し生かします。



P.S.
ストロベリー味はケミカルで苦手だけれど、
苺味は嘘みたいに甘酸っぱいから好きです。


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