勝手につぶやき＜光る君へ（第33回）＞

★無理

在宅ワークから通勤ワークになるならまだしも、いきなり寮生活はきつい。
私は寮生活の経験はないが、若いころの旅はほとんどドミトリーだから、どういう人と同室になるかで快適さに大きな差が出ることはわかる。
長い結婚生活を経たからか、年齢を重ねるにつれて、旅の宿についても、どんなに質素でもいいから「私だけの空間」を求めるようになった。
昔、山小屋で雑魚寝をしていたことなんか嘘みたいだ。

だから、8日で「家で書きたい」と言い出したまひろは、よくそこまで持ったよなぁと思う。（私なら3日？）
だって、落ち着かなさすぎる。
夜、みんなが寝静まってから書きたいけど、共同生活ではそうもいかないし。
道長は「局まで与えたのに」って言うけど、壁もないのよ。
無理。

★意思

それでも、藤壺に戻る気になったのは、「謎」だった彰子が意思を示したから。
冬が好きで、青が好き。（私も！）
わずかに開いた扉の奥を、もっと覗いてみたいという思いが「共同生活は無理」という気持ちに勝ったのだろう。
物書きとしての好奇心もあるのやも。

道長による「人質政策」としてだが、敦康親王を引き取ったのは、彰子にとっては良かったのかもしれない。
火事のときに帝が気にかけてくれたこともあるだろうが、親王がその幼さゆえに無用の忖度をせず親しんでくれたことが、彰子の心のハードルを下げていったのかもと思う。

そうなっていく過程に、おそらく誰も気づかなかったのだ。
彼女の意思に、誰も興味を持たなかったのだ。
まひろだけがそこに気づき、好奇心は、互いに思いを共有できる喜びに変わっていくのだろう。

★願望

「夜遅くまで足もみに行っていたのか」と問う女房たちの脳裏には「自分ならそうする」という前提がある。
男女が親しくしている場面を見て、すぐに色恋や夜伽（既婚者なら不倫）に結び付けて言うのは「私ならこんなふうに男といたらsexしかない」という想像（願望）を暴露しているようなものなので、他人の交際や不倫疑惑に騒ぐのはみっともないと思っている。

★共有

道長から褒美として扇を贈られるまひろ。
図柄は幼かった自分たちの出逢いの場面に見える。
俺たち、あのころからのつきあいだよな、みたいな。

道長は、源氏物語が帝のお渡りのきっかけになることだけじゃなく、我が娘が他者に心を開けるかもしれないという希望を持てたことが、父親として嬉しいのではないか。

「いまも変わらず愛してる」というのじゃなくて、初恋の記憶を共有している雰囲気に惹かれる。
月夜に抱き合うシーンよりずっと。
私はモトカレと、二人だけしかわからないかつての房事について言葉でくすぐり合うのが結構好き。
そういう関係性がという話。

★武力

平氏を登用することを拒絶する道長。
朝廷も武力を持つことを検討してはと提案する隆家。
大挙して押し寄せる興福寺の僧兵。
見るほうは、この望月が欠けていくことを知っているので、過剰に反応する道長に時代の変化を感じ取る。

去年の大河ドラマは早々に離脱したので、「鎌倉殿の13人」を再視聴ししていた。
今年の「光る君へ」を見ながら、ここを繋ぐ物語が恋しくて仕方がなかった。
教科書や年表に載せられない細やかな人間関係や心情が見たい。
それで、有料の配信契約をひとつ解約して、別のものに入った。
1か月は無料期間である。

今朝からオンデマンドで2012年の大河ドラマ「平清盛」を食い入るように見ている。
放送時、まだ夫がいて、私の見られる（録画できる）番組は制限されていた。
大河ドラマは戦国と幕末のみ。
夫は自分が関心のないものに私が興味を示すのが嫌いだったので見られなかったのだ。
それで、ずっと見たい見たいと思っていたのを、今日、ようやく実現に至った。
私の大河ドラマの好き好きランキング3位に入ることがすでに決定している。
なんで視聴率が低かったんだろう？
画面が汚いと言った知事のせい？
今回、見ることができて本当に良かった。
これを見ないままでいるのは「人生の楽しみの損失」とさえ感じる。

そこには「源氏物語」へのオマージュもあれば、「鎌倉殿～」のほうが逆にこれを意識して描いていると思えるシーンもある。
そうか、そうか、そうつながっていくのよなとか、あのできごとを暗示しているのよなとか、それぞれの視点から書かれた歴史ドラマを楽しむ。

作家のアレンジに「ん？」と思うこともある「光る君へ」だが、「平清盛」を見たことで、面白さが盛り返したような感じだ。
もし来年の大河「べらぼう」を離脱したら、清盛からの流れを踏まえてもう一度「鎌倉殿」を見ようと思う。
歴史物語は、こういう連鎖が面白い。
いや、現実も、きっといくつもの偶然が連鎖しているのだろう。
気づかないだけで。

今日は、熱がある。
ネットスーパーの配達員さんにしか会ってないので、コロナの可能性は低い。
久しぶりに「冷えピタ」をおでこに貼っている。
台風は低気圧に変わったが、今日も曇りときどき雷雨。