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ガラスと私  もりたからす

ベランダに風鈴を飾るタイプの風流人がいる。
在京時代、アパート隣室の住人がそうだった。

「集合住宅の敷地内に、個人の嗜好で音の出る物を設置する」という点で既に私とは価値観を異とする。

その上、あろうことか隣人は風鈴を吊るしたまま数日、部屋を留守にしたのである。

そういう時に限って、台風が本州を直撃する。

あの日、一晩中鳴り続けたガラスの風鈴の高音が、今でも耳にこびりついている気がしないでもない。

だからという訳でもないが、私はガラス製品があまり好きではない。透明だったり、煌めいていたり、私にはやや刺激が強く感じられる。日用品には落ち着きが欲しい。

自宅のキッチンに、ガラス製品は二つしかない。

一つは快獣ブースカのコップ。
東京駅地下のウルトラマンワールドM78で購入した。とても可愛い。

私は月に一度ほど上京し、東京駅周辺をぶらつくことにしている。
書店をはしごして回り、洋書や専門書を予算の限り購入して帰るので、同僚や親類からは、

勉強熱心、次代のエース、一族の誉れ、金銭感覚欠如人間、穴の空いた靴下を履いて東京に行くな

等々の大絶賛を受けることしばしばだが、実際は丸善よりも東京キャラクターストリートやポケモンセンタートーキョーDXの滞在時間の方が長いとの疑惑がある。

二つ目はHARIOのティーポット。
紅茶を入れる際には、やはり茶葉のジャンピングを観察したいので、透明なガラス製品一択だ。

私は紅茶が好きだ。上京の折は銀座まで足を伸ばす。教文館で聖書関連書籍を買うのが主な目的だが、こちらの場合も、リーフルやマリアージュフレールの滞在時間の方が長くなりがち。

私は毎月、何をしに東京へ行っているのか。

リュックを書籍でパンパンに膨らませ、ブースカとコダックの新製品をチェックしつつ、次の上京までには飲みきれない量の茶葉を購入するハシボソガラスを見かけたら、それが私である。

都会はハシブトガラスが多くて肩身が狭い。そっとしておいて欲しい。




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