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酢漬け卵でにきびが消える?!~平安時代の驚きの美容法~
医心方とは?
私は最近、図書館で『医心方』を借りてきて、読んでいます。
『医心方』とは、平安時代に書かれた、日本最古の医学書といわれるものです。
丹波康頼(912~995)という針博士(現代でいう鍼灸師、当時の宮中医官)によって書かれた、全三十巻にもおよぶ大作です。
今回は『巻4美容篇』より、平安時代の美容法をご紹介します。
その前に、話がそれますが、丹波康頼(たんばのやすより)の生没年が、912年~995年になっていることに驚きました。
平安時代に83歳まで生きたということですよね。
やはり、自らの体調管理を徹底して行った結果でしょうか。
このような点からも、『医心方』のことを、「科学的ではない」などと、容易にあなどることはできないと思いました。
では、現代の感覚からすると少し不思議な、平安時代の美容のお手当についてお伝えしていきます。
酢漬け卵でにきびが消える?!
以三歳苦酒漬鶏子三宿當軟破取以塗良
訳:三年酢に鶏卵を三日漬けると、殻が溶けて軟らかになるだろう。これを破って中身を採り、患部に塗ればよろしい。
三年酢:三年を経た酢
槇佐知子『医心方巻四美容篇』より
さらに、著者である槇佐知子さんが書かれた序章には、以下のようにありました。
食べても良い材料なので試しに作ってみた。
密封できるガラスの容器に酢を入れ、鶏卵を漬け、酢を容器に満たす。(略)
三晩とあるが、一週間漬けておくと殻が溶け、卵が酢を吸ってふくらむ。
殻を指先でこすると被膜だけになり、楊枝の先がふれただけで中身がとび出す。
これを白身と黄身に分けて別々の容器に入れる。
ニキビに塗ると一晩であとかたなく消えた。
残りを手の甲へ塗り、乾いてから洗い去ると手袋でもはめたように、くっきりと色の違いがわかる。
それも一回で歴然と判るのだ。
槇佐知子『医心方巻四美容篇』より
長くなるので割愛しますが、さらに槇さんが学生たちにもこの酢卵を試したところ大好評だった、という内容が続きます。
「現代の卵パックより秀れていることがわかった。」と、明言されています。
おそるべし、四世紀初頭の美容術。
「本書は円融帝(院)に献上されたあと秘本になった」とあることから、天皇クラスのほんの一握りの人しか読むことができなかった、トップシークレットの情報だったようです。
それを今、田舎の主婦が図書館で借りて無料で読めるのですから、ありがたい時代ですね。
実際に作ってみた!
さて、その平安時代の幻の妙薬を実際に作ってみました。
用意するもの
・卵
・酢
・小さなビン
※卵は「大地の卵」という平飼い有精鶏卵を使用しました。
※酢は米酢を使用しました。三年酢というものがなかったのですが、ずいぶん前に購入したものです。
作り方
①卵をアルコール度数の高い焼酎をつけたキッチンペーパーでふきます。念のための消毒です。
②ビンに卵を入れます。割らないようにそっと入れます。
③ビンの口のギリギリのところまで酢を入れます。
④卵が浮いてきて、表面が酢から出てしまうので、ラップをはさんでから蓋をしました。
⑤あとは一週間まつだけ♪
どうなることやら…。一週間後、完成したらまたブログにてご報告しようと思います。
報告がないときは、察してください。笑
平安時代の「美」とは?
続いて平安時代の「美」について、ご紹介したいと思います。
平安時代の身分の高い女性は人前に顔を現さなかったので、女性美の評価基準は「扇の上にわずかにのぞく額ぎわの気品や、髪の長さと量」だったようです。
「額ぎわの気品」って…。
現代の美のモデルとはかけ離れています。
美の基準なんて、時代とともにうつろう曖昧なものなんだ、ということがよくわかります。
しかし、ばかにはできない点もあります。
東洋医学的にみると、髪は腎の状態があらわれるところです。
髪が長くて量が多いということは、腎が強いとみることができます。
腎は生まれもった生命力や生殖機能をつかさどります。
腎が強いとお産にも強く、母子ともに元気で、丈夫な赤ちゃんを生むことができます。
医療が発達していない当時は、出産で命をおとす母子も多かったでしょうから、髪の豊かな腎の強い女性が人気があったのも、少しうなずけます。
ちなみに腎とは、腎臓ではなくもっと広い意味での「腎機能」をさします。
珍美容術
髪が美の評価基準になるので、『医心方美容篇』の前半部分はずっと髪に関する内容です。
特におもしろかったものをご紹介します。
・髪を軟らかにする術。洗髪後、さらに酒でリンスすること。
・千回以上とかせば、白髪にはならない。
・白髪を抜き、上等の蜂蜜を毛孔に塗りつけると、黒髪が生えてくる。
・禿の治療方。油で鉄さびを磨き、これを塗れば毛が生えてくる。
このような治療法が無数に登場します。
ここで挙げたものは現代でもやろうと思えばできるので、もしご興味があればお試しください。
(ただし、自己責任でお願いしますm(_ _)m)
かつての秘伝中の秘伝の療法はいかがだったでしょうか。
昔の人の悩みの内容が今とあまり変わらないのがおもしろいですよね。
読んでくださってありがとうございました(*^^*)