7つの黄金郷(エルドラド)
山本鈴美香、という名前を知らない人も、
「エースをねらえ!」はご存知なのではないでしょうか?
かつて一世を風靡したテニスの漫画ですね。
アニメも大人気でした(今でも主題歌、歌えます)。
その作者が描いた「7つの黄金郷」。
子どもの頃、夢中になって読みました。
ネットのなかった当時、図書館に通っては、エリザベス1世の時代のイギリスについて読み漁った記憶があります。
新教と旧教の違い、エリザベス女王とメアリ・スチュアートのこと、バチカンのこと、そして公爵と侯爵はどちらがエライのか、なんてことまで。
良質な漫画は夢みる少女の探究心をかきたてました。
大人になって文庫版が発売され、それを全巻買ってまた熱がぶり返しました(ガラスの仮面と同じ道です)。
6巻で中断されたままだったこの作品。一時は再開されると発表されたのに、結局されずじまいでした。
その時買ったはずの文庫版6冊がなぜか行方不明なので、記憶を頼りに書いてみます。
大丈夫、登場人物の名前やあらすじくらいはスラスラ書ける程度には読み込んでいたはず。
舞台は16世紀の(ここはググリました)イングランド。
海賊の首領で美髪王と呼ばれたレッドフォード侯爵の双子の子どもたちが主人公です。
兄のエロールと妹のオリビエ。
ふたりは性別を隠したまま育てられ、その美しさから天使たちと呼ばれます。
オリビエは幼い頃誘拐され、背中にインカ帝国の謎にまつわる暗号をイレズミされます。
暗号を手に入れようと命を狙われるオリビエ。
父親の侯爵は、外からは見分けがつかない双子を守るため、有能な若者を付き人につけます。
登場人物がみんなもう美しくて。
オリビエの付き人、マンスフィールド伯アーサー・ローレンス。
エロールの付き人、ビンセント・ブルー。
そしてアーサーとは別の立場でオリビエを守る妖しい美貌のクレメンテ公ロレンツォ。
ちょいS系正統派2枚目が好みの私は、アーサー推しでした。
ほんとに中身も外見も男前でかっこよかった。どっかの社長みたいにヘタレてないし。
作者の確かなデッサン力に支えられた豪華絢爛な絵に、詩的ですらあるネーム。息をつかせない展開。
多くのファンをとりこにしました。
それなのに、突然連載は中断します。
中断の直接的な理由はご病気とのことで、心よりご快復をお祈りいたします。
しかししばらくして、作者が巫女になって宗教を興したとの報道がされました。
イギリスとか女王とか貴族とかキリスト教とかをさんざん描いていた人が巫女?
ご病気でしたらもちろん仕方ないことですが、新興宗教の教祖になられたというのは複雑な思いがします。
天才はこうも宗教に惹かれるのでしょうか…。
美内すずえさんはまだ描く意思を表明されていますが、山本鈴美香さんはその望みもなさそう。
そう諦めていました。
ですが、今日この記事を書くためにネット検索してみたら、2013年に山本鈴美香さんが描いた色紙の画像が出てきました。
雑誌マーガレットの50周年記念に寄せた色紙だそうです。
そのなんと美しいこと!
エロールとオリビエと岡ひろみが、乾杯しながら微笑んでいます。
現役の頃とかわらない、いえむしろ前より美しいほどの絵。完璧なデッサン。
(画像を貼りたいくらいですが、気になる方はググってください)
7つの黄金郷が連載中断したのが1977年。
2013−1977=36。
36年ぶりに描いた絵があれなんて。
まさか不老不死の神とか?
これならすぐにでも再開できるじゃん!
もったいないーーー!
美内すずえさん、山本鈴美香さん。
どうかその才能を封印されませんように。
感染症の猛威に脅かされる私たちに、どうか一筋の夢と希望を。
宗教やスピリチュアルは確かに人々を救うかもしれませんが、あなた方の紡ぐストーリーはもっともっと多くの人の心を癒し元気づける。
私はそう信じています。
「7つの黄金郷」エロールとオリビエ。