【読書日記3】 クリームイエローの海と春キャベツのある家
4月5日発売のこの本が発売日を過ぎても我が町で手に入らないと愚痴ったのが、ちょうど先週の日曜日のことだった。
それから4日後(発売日から6日後)、ようやく私の手元に届いた。
ちょうど今の季節に合う、柔らかな色合いの装丁に、「創作大賞2023」の文字。
裏表紙の帯には、9人のnoterさん達の感想コメントが並んでいる。
同じnote界のすみっこに生息する身として、本当に誇らしい。
土曜日の昨日、拝読した。
note掲載時の作品を読んだ時も感じたことだが、タイトルが本当によい。
クリームイエローという言葉には、たいていの人が「ふんわりして優しい」イメージを持つことだろう。この装丁を見ればなおさらだ。
ところが、その「クリームイエローの海」の正体が明らかになるシーンでは、読者は主人公と同じく絶句することになる。私は「うげっ!」と声が出そうになった。
確かに、性別も年齢も違う複数の子ども達+父親のそれらが積み重なると黄色みが強くなるかもしれない。しかし、それを「クリームイエローの海」と名付けた作者の感性は驚くばかりだ。
読み進めていくと、note掲載時のものからかなり肉付けされていることがわかる。
初めて読んだ時、その完成度に圧倒され、もうこのまま本にすればいいんじゃないかと思ったものだが、改稿や加筆を繰り返された単行本はやはり違った。
一番手が加わったのが、主人公のプロフィールだろう。
note版とは父親の職業が変わり、自宅で開業している設定だ。専業主婦として家事に没頭する母親はそのままだが、鬼気迫るほどの様子はさらに細かく描写されている(この母親を主人公にしたスピンオフが読んでみたい)。
そして主人公。華やかな大手商社から一転、家事代行サービス業に転職する流れが、深く掘り下げられている。
それらのエピソードが増えたことで、主人公の行動や感情の移ろいに説得力が増したように、私は感じた。
どんなに改稿されていても、物語の軸は変わっていない。
note版で私が感動したフレーズやセリフは、ほとんどそのままだった。いや、肉厚になったぶん、初見とは違うシーンで涙が滲んだ。
昨年春から夏にかけて開催されたnote創作大賞2023。10月に大賞が発表され、この4月にこの作品が商業出版された。
その一連の流れをつぶさに見ることができ、私もわくわくさせてもらった。
あらためて作者のせやま南天さん、noteや出版社の方々にお礼とお祝いをお伝えしたい。
今年の創作大賞はまだ発表になっていないが、開催されるのだろうか。
またあっと驚くような素晴らしい作品が生まれ、noteから羽ばたいていくよう、楽しみにしたいと思う。