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拝啓、作者さま。〜登場人物の訴え〜③

⚫︎速水真澄の訴え

これはこれは美内先生。ご無沙汰しております。
大都芸能の速水です。
いつも弊社をお引き立ていただきありがとうございます。

さて。
時間がないので単刀直入にお伺いする。

おれとマヤは、相思相愛という認識でよろしいか?

であれば、今後この件はこちらにお任せ願いたい。
あとはおれが何とかする。

仮にもおれは、社員やタレントを多くかかえる企業のトップだ。
自分のプライベートのことでうだうだ悩んでいるヒマなどないのだ。
おれを元の冷血仕事虫に戻してくれ。

それでなくてもヘタレだの甲斐性なしだの散々言われているのだ。
これ以上、紫のバラをかかえて右往左往するわけにはいかない。
この物語の前半までのおれに戻るのだ。

ところで美内先生。
最近よく、部下や所属タレント、得意先からも、この物語はいつ再開するのか、ラストはどうなるのかと聞かれるのだが、どう答えたらよいだろう?

おれだけでなく、ほかの登場人物たちも困っている。
マヤも「あたしはいつまで紅天女の稽古をしたらいいの!」とキレかかっている。

そろそろ道筋を示してはいただけないだろうか。

企業活動は契約で成り立っている。
社員ともタレントとも得意先とも、契約書に縛られると同時に契約書に守られている。
契約とは信用でもあるから。

漫画の作者とその読者も、ある意味契約によって結ばれているのではないだろうか?

作者はその手によって世に出す作品で読者の興味を誘い、夢を与え、夢中にさせて対価を支払ってもらう。

読者はその作品から夢と興奮と希望をもらい、この続きを読みたいと願い、それに値する代価を喜んで支払う。

その契約を、作者の方から一方的に切られたとしたら。
置き去りにされた読者はどんなに悲しいだろうか。

もし描けないのなら、描きたくないのなら、描けない理由があるのなら、そう読者に告げてほしい。
あてのない希望をもたせる方がよほど残酷だから。

でももしそうじゃないなら。

あなたさえペンを取ってくれるのなら、我々登場人物は最高のパフォーマンスを見せると約束しよう。
読者の期待のはるか上をいくようなラストを見せると誓おう。

マヤも亜弓くんもこのおれも、ほかの登場人物たちも読者諸君も、ひとりも不幸にならないようなストーリーを、あなたと一緒に紡ぎたいのだ。

おっと、そろそろ会議の時間だ。
では今日はこれで。

ともあれ、この漫画ももう終盤だ。
あと少し、なんとかお願いしますよ。先生。

なに…?
まだ終盤じゃない…?
ほんの中盤…だと?

……勘弁してくれ。

※すべて妄想&願望です。

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