極めるべきは能力じゃない！【読書感想文】
『天才！成功する人々の法則』という本を読んでいた時の出来事だ。
この本は、かの有名な1万時間の法則など、天才は天賦の才能ではなく、周りの事象によって偶然にも出来上がるものだと論じられている本である。
その本を読んでいると、ある一節が目に飛び込んできた。
数学は能力ではなく、態度である。
上記の言葉が出てくる直前にはこんなエピソードがある。
数学への興味はそこまでではない看護師の彼女は、講師の出したちょっと意地悪な数学の課題に対して22分も費やし、答えまで気が付いた。
中学生であれば、3回試して、ちょっと考えた2分後に「わかんない！説明して！」と音を上げるくらいの難易度だ。
この事実から講師であった教授は、数学が得意になるためには、問題を解くために何度も試す「態度」が重要だと結論付けた。
そして筆者は他の調査結果も挙げて、数学が得意な原因を探す。
その1つが、中国や日本などの稲作地帯の人々は、ものすごく数学に対して強いというものだ。
理由は2つ。一つは中国語（あるいは日本語）は数の数え方がシステマチックで明快であること。
もう一つは稲作を毎年行うということは、ほぼ365日働いているということである。すなわち、複雑な業務を毎日行い、限られた土地からいかにして最大の利益を得られるか、といったことを長く思考するからである。
この文化が、つまり中国や日本で培われた文化が、数学に対する態度を育むにはぴったりだそうだ。
しかし物事は逆に進んでいるように思える。
僕が学生の頃、必ず聞いた言葉は「数学？キライだよ！」だ。
日本のSNSでは数学離れが頻繁に嘆かれている。
数学嫌いが年々増え続けているアンケート結果も出ている。
それに対する対策が教育の現場で積極的に議論されている。
素人ながらも、理由は想像できる。
だって農業をやっていないから。
サラリーマンの子供は毎日稲作のようなことをしていない。YouTubeの動画を流しながらゲームをして寝る。
だって素早さが重要視されるから。
ビジネスの世界では素早い報連相を求められるが、この常識が子供ながらに刷り込まれていく。
だって情報過多だから。
すぐに答えが見つけられる。AIに聞けば解き方も分かりやすく教えてくれるだろう。
そんな今でも、数学が好きな人だっている。その違いは何か？
そこはやっぱり、「態度」だと思う。
解答だけを追い求めるか、解答を見つけるまでを楽しんでいるかの違いで、点差はものすごく開いていく。
僕は文系大学だが、数学も勉強していた。
勉強方法は教科書の解答パターンや証明パターンを全て暗記すること。
問題に楽しさは感じられなかった。
解答から得られる10点の方がはるかに大事だった。
数学好きの例として、所属している部活の理系に進んだ同級生を挙げたい。
地元は農家も、職人も多くいるところだから、その子供が多いんだと思う。
彼の数学の勉強方法は、どうやって解くのか説明できるまで問題を解くこと。
違いは歴然だった。
僕は数学の試験のある大学に落ちた。
彼は農業の大学院に進んでいる。
耳に胼胝ができるほどよく聞くが、「答えのない問い」という言葉がある。
では、答えのない問いを解決するためにはどうしたらよいか？
ここまできたら、答えは1つ。
問いに対する「態度」を変えればいい。
答え重視からしこう（思考or試行）重視へと。
まあ、このパラダイムシフトを腰を据えてできる時は決まっている。
自由時間の長い10代とか、仕事と家庭の落ち着いた60代以降じゃないと難しいと思う。
宿題に長く時間を使える、余裕のある時じゃないと、答えをすぐに求めてしまう。攻略法をすぐ検索したくなる。
これじゃ逆戻りだ。
しかも、もうビジネスの世界に両足を突っ込んでしまった。
受け答えを高速で行う世界に足を踏み入れてしまった。
「態度」を身につけられずに。
けど、希望はある。
今から「態度」を身につけるために、一番いい方法があるじゃないか！
趣味だ。
趣味を極めよう！
試行錯誤ができる趣味なら何でもいい。問題が発生する趣味なら何でも。
ゲーム、イラスト、考察、ファッション、料理、プログラミング、etc…
目標を自分で決めて、達成のために繰り返し考えながら行動する。
これは最初に言われていた稲作に似ているのではなかろうか？
稲作ほど厳しいものではない。ましてや生き死にに関わるレベルではない。
でも、極めるほどより難易度が高くなっていく。
それに伴う過程も複雑に絡み増えてゆく。
「態度」を身につける練習として最適ではないか。
僕の中での結論が見つかった。
つまり極めるべきは能力じゃない。
態度だ。
さらに態度を極めるなら学習と趣味だ。
そしてまわりまわって能力が身につくだろう。
他人がそれを見て羨ましがることがあるかもしれない。
能力はパッと見で分かりやすいが、しかし重要なのは裏にある努力なのだ。
努力するためには、態度が関わっているのだから。