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🟨 続・日本人の9割が知らないタイ飯 ⑦〜タイでチキンライスと言えば〜 🟨


カオマンガイだけじゃない

カオマンガイ

日本人はタイのチキンライスと言えばカオマンガイ(ข้าวมันไก่)をほとんどの人が思い浮かべるはず。でもタイにはもう一つのチキンライスがある。それはカオモックガイ(ข้าวหมกไก่)。名前はカオマンガイによく似てるけど見た目も味も発祥も全然違うメニュー。

カオモックガイ

ちなみにカオマンガイのカオはご飯、マンは脂そしてガイは鶏。そしてカオモックガイのモック(หมก)は埋めるとか、蒸し焼きと言う意味がある。これは鶏肉とスパイスで調理した「カレー」を鍋に敷いてその上に米をかぶせて蒸し焼きのようにして「炊き上げる」作り方からきてるんだと思う。

カオモックガイの鍋(釜)
カオモックガイの鍋(釜)

カオモックガイとビリヤニ

カオモックガイはぶっちゃけタイ風チキンビリヤニのこと。ビリヤニ(บริยานี)はインド料理だと思ってる人が多いと思うけど、遠くは西アジア(トルコ、イランやアラブ圏)から南アジア(インド、パキスタン、バングラデシュ)、東南アジア(インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン)までの広範囲で主にムスリムが多く食べてる。
ビリヤニについて詳しくは日本語Wikipediaにもあるのでそちらを参照していただきたい。

アラブ料理 Mahmoud Shawarma

呼び方もインド料理のお店のビリヤニはタイ語でカオモックビリヤニ(ข้าวหมกบริยานี)と呼ばれたりする。インド料理店のビリヤニの作り方もほぼほぼカオモックガイと同様で鶏肉の「カレー」の上にバスマティ米を被せて蒸し焼き状態にする。この時に鍋と蓋の間に小麦粉を捏ねたもので密閉状態にするのがインド式。

インド料理 Pumjab Grill
インド料理 Pumjab Grill

カオモックガイの起源

ビリヤニの起源はペルシャと言われててその後インドへと伝わったらしい。タイへビリヤニが伝わったのは19世紀ラマ2世の頃だったが、交易に来たペルシャ人とインド人から伝えられた()。

ペルシャの米料理Zereshk polo Wikipediaより

別の記録ではペルシャから伝わったビリヤニはカオブリ(ข้าวบุหรี่)と呼ばれ、ブリとはタイ語でタバコの意味だけど、ペルシャ語でビリヤニを指すبریانがこう発音されるようになったと言われる。カオブリはペルシャ出身の貴族の家系ブンナーク家が発祥のタイ王室メニューとして伝わってる。現在のカオモックガイとは違ってターメリックが入らないいわゆるピラフ(ข้าวพิลาฟ)だったという話もある()。

ちなみに当時のレシピを守って100年続いてると言われる()「クンレックカオモックガイ」に3年ぶりに行ってみた。場所はバンコクのムスリムエリアの一つで、バンコク最古のムスリムエリアとも言われるチャルンクルン通りをチャオプラヤ川沿いに下っていってラマ3通りとの交差点のさらに奥。

前回2021年来たときは
創業80年だった看板が100年に変わってた
ぱっと見普通にカオモックガイ

このお店に来るのは3年半ぶり。注文したのは前回と同じく普通のカオモックガイ。ご飯は他のお店に比べてやや薄めに黄色がかった感じ。ホントにターメリック不使用かどうか聞くのを忘れてしまった。ご飯はクローブ、八角、シナモンっぽいスパイスの香りがかなり強め。揚げタマネギはかかってるけどレーズンとか豆類は混ぜてなかった。

ご飯はターメリック不使用(⁇)

骨付きの鶏肉は柔らかくて肉がホロっと離れる感じ。色味も薄めでクリームっぽいソースがまとってる印象。キッチンを見せてもらってソースの秘密を聞いてみたら牛乳で煮込んでるとのこと。牛乳を使ってたのには少しビックリ。カオモックガイに牛乳を使ってるお店は他にないんじゃないか。

ホロホロに煮込まれた鳥もも肉
鶏肉は牛乳で煮込んでる

タイでよくあるカオモックガイのつけ合わせのナムチムは緑色したミントベースの甘いやつが多いけどここのはインド料理屋にありがちの甘いマンゴーチャツネ。カオモックガイにマンゴーチャツネは初めて。そしてキュウリのアチャール(酢漬け)もついてくるけどこれもかなり甘め。

つけ合わせはキュウリのアチャールと
マンゴーチャツネ

たしかに他のカオモックガイと違うポイントもあるけど基本は同じって感じ。


タイのカオモックガイはマレーシア発?

現在タイでよく見かけるカオモックガイはほぼぜんぶがターメリックライスを使う黄色いご飯のスタイル。そしてお店はマレーシア系の人がやってる。つまりカオモックガイが一般に広まる中でペルシャ由来のレシピがマレーシア発のビリヤニに置き換わったじゃないかと考えたけどこれについての記録は見つからず。

シンガポールのビリヤニ Wikipediaより

バンコクでは多くあるタイ人経営のカオモックガイ(タイ系)屋以外に南アジア系とミャンマー系のビリヤニのお店がある。


🟧カオモックガイ(タイ)

マレーシアのナシビリヤニとの関係は不明だけどバンコクでカオモックガイと言うとほとんどのお店がマレーシア系ムスリムの経営。特徴としてはご飯が単なるターメリックライスで黄色でレーズンとかの混ぜ物が入ってないこと。ご飯自体の味付けも塩味、辛味がほぼない。ナムチムは甘くて緑をしたソース。

🔸ワンブー

ワンブー ร้านอาหารหวังบู่ สุเหร่า

バンコクの隣県サムットプラカーン県のパクナムにあるお店。すぐ近くにモスクがある。ご飯は具なしで1色。ナムチムは甘くて赤いチリソース。

🔸Amin Mutton & Chicken Biryani

パンデミックの時に閉店、1年くらい前に復活した創業90年以上の伝説のハラル食堂。つけ合わせにアチャール、ご飯は具なしの2色。緑の甘いナムチム以外に酸っぱいスープと小鉢がついてくる。

Amin Mutton & Chicken Biryani ข้าว​หมก​แพะ​-ไก่​อามีน​

🔸アイサ・ロッディー

アイサ・ロッディー อาอีซะห์ รสดี

カオサン近くの老舗でインドネシア系ムスリムのお店。味付け薄めなターメリックライス、甘い緑のナムチム。タイでよく見かける典型的なカオモックガイ。

🟧南アジア系

インドやパキスタン、バングラデシュなどの南アジア系のカオモックガイ(ビリヤニ)は塩味、辛味さらに各種スパイスなどご飯自体の味付けが濃い。色味もオレンジだったり緑だったりする。ナムチムはインド系だとヨーグルトベースのライタが付いてくる。緑のナムチムもあるが甘味がない。あと鶏肉の上にご飯を盛りつけることも特徴。

🔸Khan Restaurant Bangkok

Khan Restaurant Bangkok ข่าน

パキスタンレストランのビリヤニは熱々で塩味辛味もある2色ご飯。緑のナムチムは甘さゼロ。ここでは鶏肉がご飯に埋もれて提供される。

🔸ボンベイ マサラ

ボンベイ マサラ

熱々ご飯が山盛りの中に鶏肉が埋まってるアソーク界隈じゃ有名なインド食堂。ご飯の中になぜか白い米粒が混ざってた。ゆで卵が載ってきたビリヤニは初めて。ナムチムはヨーグルトベースのライタ。

🔸อาหารตุรกี Istonbul Food

อาหารตุรกี Istonbul Food

南アジアではないけどアジアの西端トルコ料理屋のビリヤニ。ご飯は2色仕様。鶏肉はもも肉丸ごとだったけど柔らかさはイマイチ。ナムチムはヨーグルトベースのライタ。

🟧ミャンマー系

ミャンマーではカオモックガイをダンパウ(ဒံပေါက်)と呼ぶ。インドやバングラデシュの影響が強いのか南アジア系のビリヤニのようにご飯の味付けが強めでレーズンとかが混ぜてある。色味もオレンジや緑が混ざった3色ご飯。付け合わせナムチムはないけどアチャールやミャンマー風の漬物が付いてくる。基本は鶏肉とご飯は別に調理するようで鶏肉が柔らかい。

🔸Zwekapin restaurant

Zwekapin restaurant

鶏のもも肉が丸ごと載った豪華仕様のダンパウ。ご飯は白、黄色、オレンジの3色仕様。ナムチムは付いてないけどミャンマー漬物と揚げタマネギ付き。

🔸バンボン市場 ตลาด สุขสวัสดี

バンボン市場 ตลาด สุขสวัสดี

ミャンマームスリム食堂。小さめのぶつ切り鶏肉が黄色と緑のご飯に埋まる仕様。ご飯はしっかり味付けしてある。付け合わせは甘めのアチャール。

🔸バンボン市場 ตลาด สุขสวัสดี

バンボン市場 ตลาด สุขสวัสดี

非ムスリムのミャンマーお惣菜屋兼食堂。ご飯は2色で味付けしっかりタイプ。付け合わせは納豆の和物的ななにか。鶏肉は骨付きドラムスティックでよく煮込んである系。


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