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好きな映画レビュー第3回目『ウォーム・ボディーズ』

観たまま感想を頭の中に放置したくなく、かといってツイッターでぺろっと(?)流したくはなくて始めたこのレビューシリーズ、ようやく3回目を書けました。

こういったものって、好きであればあるほど言葉にするの難しいですよね。
この!心の中に広がったこの!感動をどう伝えればいい!まだ!この言い方じゃだめだっ!!
みたいになって生半可な気持ちで書けなくなってしまうのです・・・。

というわけで3回目はこちらです。


『ウォーム・ボディーズ』

生者の肉を喰らうゾンビやその成れの果てである「ガイコツ」が蔓延る終末世界。
生き残った人々は高い壁を築いてその内側に逃れ、暮らしていた。実はかろうじて意識の残っているゾンビの青年「R(アール)」は、廃空港の廃航空機内に住み着いていたが、ある日ゾンビとしての食欲に突き動かされ、仲間と街に出る。物資の調達に出ていた人間達と遭遇、襲うが、Rはそのうちの1人、ジュリーに恋をしてしまう。Rは怯える彼女を住処に連れ帰り、守ろうとするが・・・。

ゾンビ映画というのは映画好きの方々の中でも特にこだわりというか、原点であるような熱量を持って観ている、好きな作品がある人が多いジャンルのような気がします。
ゾンビというと普通、普通も何も、人間が戦って襲われてギャーというストーリーしか知らなかった私はこの
「恋しちゃうゾンビ」
というユニークな設定にがっしり心を掴まれ、観てみたわけです。

出だしからまずユニーク。ゾンビの青年「R」の語り口調から始まってくれるのです。
「あ、俺は死んだんだった」
「なんでこんなことになったんだっけ」
「自分は何をやっていた人なんだろう」
「1日中こうしてヨタヨタ歩くだけなのが解せない」
「人と繋がりたい」
というゾンビなりの葛藤?が語られちょっと微笑ましく、ライトな気持ちで観始められました。

この映画、「ロミオ&ジュリエット」がモチーフということで、それを感じさせる構図などが随所にあっておもしろいです。そもそも名前が「R」と「ジュリー」ですね。
当然人間を襲って食べるのですが、その人の脳を食べると記憶を得ることができるという設定が物語の展開をさらにおもしろく、人間とゾンビの因果のようなものを深いものにしています。

ゾンビのRくんがとにかくカワイイ。カワイイし優しい!
ジュリーに気に入られようと、「キモくなるな、キモくなるな」と心で言い聞かせながら話しかける(でも当然怖い)ところや、せっせと前髪を直すところ、Rの心の声のナレーションがこまごまとしていていいです。ゾンビ視点が新しい。
ゾンビ仲間の「M」との友情、Rの愛が徐々に周囲の世界を変えていくところ、人間と協力し戦う熱い展開はアメリカ映画ならではのかっこ良さがありました。
愛や交流で「血が通いだす」ところ、皆の世界がひらけたラストシーンは自然と笑顔になる。

でもきっと、これ、Rくんは生きていた頃は目立たず、モテず、パッとしない子だったんだろうなー。と思う。
すべてが揃った恵まれた世界では、こういう真の強さというか、ささやかで地味だが大切な優しさのようなものはないがしろになっていて悲しい。
この破滅した世界だからこそRの優しさが生き、世界を変えるまでのものになったんだなと考えるとちょっと皮肉です。

「愛は世界を変える」というちょっと鼻で笑われてしまうような言葉も、この映画を観た後は信じてしまいたくなるような素直に熱く晴れやかな気持ちになれる映画でした。




僭越ながらファンアート描いてしまいました。


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