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子どもの幸せ①(成長意欲)可能性を信じる

ウサギ仙人から「幸せを4つの要素に具体化してもらった」亀子ですが、

ウ仙「まずは1番目の成長意欲から詳しく話していこうかのぅ」

亀子「はい、お願いします」

ウ仙「ところでおぬしは小学校の時にスポーツテストで『垂直跳び』という種目をやったのを覚えておるか?」

亀子「壁際でチョークを指先につけて、『えいっ』って跳ぶのですよね?」

ウ仙「そうじゃ。おぬしは何cmくらい飛んでおったか、覚えとるか?」

亀子「たしか40cmくらいだったような・・・」

ウ仙「高校3年生の女子の平均が44cmと言われておるから、小学生女子にしては大したもんじゃのう」

亀子「いやマイケル・ジョーダンは122cmだったらしいので、大したことないです」

ウ仙「バスケの神様のことをよく知っておるではないか(笑)」

亀子「垂直跳びは、たまにズルする子がいるので、パンチパーマでサングラスかけた6年生の怖い担任の先生が椅子に座って、見張ってました」

ウ仙「その先生は垂直跳びのアドバイスをしてくれたか?」

亀子「まぁウサギ仙人様と同じように『女子で40cm跳んだら、大したもんだ』と低い声でほめてくれましたがね」

ウ仙「垂直跳びは、2回チャレンジするじゃろ?そして2回のうち高かったほうのスコアをその生徒の垂直跳びスコアにするのじゃな」

亀子「1回目が40cmで、少しバテてしまって2回目は38cmだったような気がしますね。それで40cmってことになったと思います」

ウ仙「1回目が40cmでも、2回目に41cmまたは42cm跳べば、2回目のスコアがその人の垂直跳びの記録になるじゃろ」

亀子「そうですね」

ウ仙「おぬしの垂直跳びを見張っていた先生は、1回目と2回目の間に何か言ってくれなかったか?」

亀子「試合に負けている野球の監督のように腕組んで座ってるだけでしたね」

ウ仙「実はな、その監督している教員が1回目を跳んだ結果を見て、1回目の記録よりも少し上に、チョークで横線を引いて『ここを目指して2回目を跳んでごらん』と言えば、1回目のスコアに比べて2回目のスコアがほぼ全員高くなるのだよ。おぬしの場合じゃと、一回目が40cmじゃから、50cmのところにチョークの横線を引いて、それを見ながら跳べば、おそらく41cmか42cm跳べたのではないかと思う」

亀子「どうしてそんなことになるんですか?」

ウ仙「人間というのは、子ども大人に限らず、具体的な目標があったほうが力が発揮できるのじゃよ。ただし能力に見合わない目標だと、最初からあきらめの境地に陥ってしまうので、その人の能力の少し上くらいの目標がいいと言われておる。当時のおぬしであれば、一回目が40cmなわけじゃから、線を引くのが60cmや70cmだと記録は変わらないか、バテて落ちてしまうじゃろう。45cmから50cmくらいの線であれば、届きそうな気がして、2回目はそれに近づくことができるじゃろう」

亀子「言われてみれば、そうですね」

ウ仙「だから垂直跳びの監督をする教員は、その学校の垂直跳びの記録のカギと言っても過言ではない。1回目終わったところでアドバイスをするかしないかで、全員の記録が伸びるかどうかが決まるわけじゃから」

亀子「タッチの監督みたいなもんですね」

ウ仙「また古いネタを出してくるのぅ」

亀子「でも重大な役割だと思います」

ウ仙「そうじゃろ。実は子育てにおける親もまったく同じ役割だと言ってもおかしくはない」

亀子「そうなんですか?」

ウ仙「垂直跳びは一つの譬えとして出した話であって、子どものありとあらゆることに同じことが言えるのじゃ」

亀子「なるほど」

ウ仙「今回のテーマは成長意欲ということじゃが、前野先生の言葉を借りれば『やってみよう』ということじゃったろ?」

亀子「前回、そう習いました」

ウ仙「親が子どもに、少し能力を伸ばす環境を与えれば『やってみよう』という気になるのじゃ」

亀子「そういうことだったんですね。今回も前置きが長かったですね」

ウ仙「理屈で説明しても、なかなか納得するのは難しいじゃろ。自分が体験したことを基に話をされると、納得してしまうじゃろ?」

亀子「まぁ確かにそうですね」

ウ仙「そういえば、子どもが言うことをきかなくなってきたと言っておったな」

亀子「はい。とくに3歳になる子が最近まで素直だったのに、全然言うことを聞かなくなりました」

ウ仙「それは自我が芽生えてきて、自立に向かっている証拠だ。いいことなんじゃぞ」

亀子「出会った時もそうおっしゃってましたよね。いちいちこっちが言うことを『イヤ』って言われると疲れてくるんですよね」

ウ仙「もう3歳にもなれば、自分のことは自分で考えてやるようになるじゃろ」

亀子「それが危なっかしくて・・・」

ウ仙「『子育てに心配は百害あって一利なし』と言ったじゃろ」

亀子「それも伺いました」

ウ仙「3歳というのは自尊心が芽生える時期なのじゃ。親はあれこれ口出しせずに、本人のやりたいことに合わせて子育てするのが子どもの成長意欲にはいいのじゃぞ」

亀子「なかなか合わせるのが大変ですが・・・」

ウ仙「子どもが『何かをやってみたい』と言ったら、『○○(子供の名前)ならできるよ』と声をかければいいのじゃ。たとえばWBC決勝戦の日本vsアメリカ戦を見て、息子が『僕も将来、大谷選手みたいになりたい』って言ったら、『○○なら絶対なれるよ』と言えばよい」

亀子「大谷なんて、MLB史上でもベーブ・ルース並みの100年に一度の逸材じゃないですか。うちの鶴太郎じゃ無理ですよ。そんな無責任なこと言ってもいいんですか?」

ウ仙「なれるかなれないかは、未来になってみないとわからんじゃろ?でも少なくともおぬしが『鶴太郎なら絶対なれるよ』と後押しすれば、鶴太郎くんは『やってみよう』と成長意欲が高まるじゃろう。それが子どもを幸せにするということなんじゃ」

亀子「垂直跳びの話から、よく幸せに戻ってきましたね。すごい納得です」

ウ仙「子どもを幸せにするには、前回挙げた4つの要素をそれぞれ、いかに高めていくかを行動レベルまで落とし込むんじゃ」

亀子「はい。この調子で、他の3つもお願いします」

ウ仙「うむ。それはまた次回以降じゃな」

こうして亀子はレベルが上がった。
幸せの4要素のうちの「成長意欲」についての関わり方を少し獲得した。(つづく)

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