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子どもの幸せ④(自己肯定感)子どものためにできること

ウサギ仙人(ウ仙)から子どもを幸せにするためのポイントを伝授してもらってきた亀子であったが、

ウ仙「いよいよ最後の『自己肯定感』じゃな」

亀子「はい、一番楽しみにしておりました」

ウ仙「なんせ一番大事なことじゃからな」

亀子「また一番大事なことは後回しなんですね」

ウ仙「今までの3つを理解した上で『自己肯定感』に臨まんとわからん部分が多いんじゃよ。おぬしもこれまでの3つで知らんうちに成長しとるはずじゃよ」

亀子「なんかウサギ仙人様の教えはドラゴンボールに出てくるカリン様の超聖水みたいですね」

ウ仙「超聖水自体は単なる水じゃが、超聖水を手にするまでが修行ということじゃな。わしの教え自体は単なる理屈じゃが、それを学ぶまでに知らず知らずに子育て力がついておるかもしらんな」

亀子「では『自己肯定感』について教えてほしいですが・・・」

ウ仙「その話をする前に一つのエピソードを紹介しよう」

 私が物心をついた頃に父はいなくて、母は再婚もせず、私を女手一つで育ててくれました。学歴もなく、特別な技術もなかった母は、個人商店の手伝いみたいな仕事で生計を立てていました。
 それでも、当時住んでいた土地には、人情が残っていたから、何とか親子二人、質素ながら暮らしていくことができました。しかしながら、当然のごとく、娯楽などする余裕すらなくて、休みの日は、母の手作り弁当を持って、近所の河原などに遊びに行っていました。母は給料をもらった次の休みの日には、クリームパンとオレンジジュースを買ってくれました。
そんなある日、母が勤め先から、プロ野球のチケットを2枚もらってきました。野球少年だった私が喜ぶだろうと、母はサプライズを仕掛けてくれたのでした。私は生まれて初めてのプロ野球観戦に興奮して、母は普段あまりお目にかかる事のない唐揚げやウィンナーの入った豪華な弁当を作ってくれました。
 野球場に着き、チケットを見せて入ろうとすると、私たちは係員に止められてしまいました。実は母がもらったチケットは、「招待券」ではなく、「優待券」だったのです。係員から「チケット売り場で一人二千円を払って、入場券と引き換えなければならない」と説明されました。帰りの電車賃くらいしか持っていなかった私たち親子は、球場外のベンチでお弁当を食べて帰りました。
 帰りの電車の中で、無言の母に「楽しかったよ」と私が言うと、「ごめんね、母さんバカだね」と言って、涙をこぼしました。
 三十年後、母が癌で余命宣告を受け、いよいよ最期の時かと言う時に声を振り絞って言いました。「あの時、野球、見れなくてごめんね。」
「こんな時に何を言ってるんだろう。もっと話したい事とかあるでしょう。」と思っているうちに、間もなくして母は息を引き取りました。
 今は年に二~三回、妻と子供を連れて野球観戦に行くことにしています。その時、お弁当に唐揚げとウィンナーは必ず入れてくれと妻にリクエストしています。「母さん、あの時のお弁当、本当に美味しかったよ」 

『野球のチケット』

亀子「泣けてくる話ですが、昭和の香りがしますね」

ウ仙「もちろん昔話じゃがな。子どもの自己肯定感のベースにあるのは、『自分が親から大事にされた』という記憶なんじゃよ。たとえ経済的に貧しくても、親が愛を持って、子どものためにできることを精一杯すれば、それが子どもの自己肯定感のベースを築くことになるんじゃ」

亀子「子どものためにできることですか」

ウ仙「例えばな、子どものために手料理を作るということも大事なんじゃ」

亀子「手料理ですか」

ウ仙「ちなみにおぬしはおにぎりと言えば、どんな形じゃ?」

亀子「三角ですね」

ウ仙「一番ポピュラーじゃな。わしが仕事で若い社会人に講演をする時、『おにぎりといえば、どんな形をしていますか?』という質問をするとな、『三角』がだいたい半分くらい、『俵形』のおにぎり三分の一くらい、残りが『マン丸』に手を挙げるんじゃ。それぞれ育った家庭で作ってもらっていたおにぎりの形が違うからじゃ。それが母が握ってくれた形なんじゃよ」

亀子「コンビニのおにぎりも三角のような気が・・・」

ウ仙「まぁ三角の中にはコンビニおにぎりしか食べたことないという者もおるかもしらんな。しかし小さい頃に家庭で味わっていた料理は大人になってもずっと心に沁みついておってな、社会人になって苦しくなった時にも、実家に帰ってそれを口にすると、涙が出て来て、再び頑張る気持ちが湧いてくるということが往々にして起こるんじゃ」

亀子「なるほど」

ウ仙「今は調理済みの手軽な惣菜がスーパーやコンビニで簡単に手に入るが、手間をかけて子どもたちに料理を作ることで自己肯定感を育むことにつながっていくので、手料理を作るということも大事なんじゃ」

亀子「そういうことなんですね。わかりました。子どもたちにできることですね」

こうして亀子はレベルが上がった。
「子どもたちにできること」の呪文を覚えた。(つづく)


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