子どもの幸せ①(成長意欲)選択肢を増やす
ウサギ仙人(ウ仙)から幸せの4要素のうちの「成長意欲」を高めるほめ方のポイントを教えてもらった亀子であったが、
ウ仙「もう一つ、成長意欲に関して大事なことを忘れておった」
亀子「大事なことなら先に教えてくださいよ」
ウ仙「わしもしゃべっとるうちに思い出すこともあってのぅ。ところでおぬしは自由の女神は見たことがあるか?」
亀子「ニューヨークの自由の女神は見たことがありますが、この写真はなんか違いますね」
ウ仙「これはフランス・パリにある自由の女神じゃぞ。元々、自由の女神はフランスがアメリカに独立100周年を記念して贈ったのじゃが、その返礼として今度はアメリカがフランスに革命100周年を記念して小さい自由の女神を贈ったんじゃ」
亀子「どうりでなんか小っちゃいと・・・」
自由とは選択肢が多いこと
ウ仙「おぬしは自由とはどういう意味かわかるか?」
亀子「自由?自由は自由ってことなんじゃないですか?自由自在くらいしか思い浮かびませんね」
ウ仙「自由というのはな、政治や経済の定義では『選択肢が多い』ということなんじゃ」
亀子「そうなんですか」
ウ仙「昔の絶対王政の政治や、現在の北朝鮮のような独裁政治の下では、国民の選択肢はほとんどないじゃろ」
亀子「まぁ朝食に何を食べるのかも配給された食材で決まってしまって、好きな物も食べられなかったって世界史で習いましたね」
ウ仙「その通りじゃ。どんな職業に就くかも、自分の意志で決められない人がほとんどじゃ」
成長意欲を高めるためには、選択肢が多いほうがいい
亀子「ところで成長意欲と何の関係が?」
ウ仙「成長意欲もな、与えられた選択肢が少ないと、やる気が起きないこともあるのじゃよ」
亀子「与えられた選択肢とは?」
ウ仙「たとえば子どもに『お前は医者にならないとダメだ』と決めつけて、小さい頃から大学の医学部に合格するためだけに塾に通わせても本人が『医者になりたい』と思わなければ、『やってみよう』とは思わないじゃろ」
亀子「その通りですね」
ウ仙「2018年に滋賀県で、小さい頃から『医者になれ』と育てられたのに医学部に入れなくて9浪した挙句、娘さんが教育虐待していた母親を殺害するという事件が起こったのは知っとるよな」
亀子「テレビの番組で見ましたね」
ウ仙「子どもの人生を親が勝手に決めてしまっても、本人がやる気にならなければ子どもを不幸にするだけなんじゃ。これは医者の話だけでなく、高学歴な大学を卒業した人やプロのスポーツ選手やオリンピック出場選手なんかにも有りがちな話なんじゃ。他人から見て羨むような地位に上り詰めても、本人は幸せとは感じていないことに陥ってしまうのじゃ」
亀子「なんか切ないですね」
ウ仙「だから子どもの人生は親が決めるのではなく、本人に決めさせるのが一番いいのじゃ」
亀子「なるほど。そういえばドラゴンボールでブルマとクリリンがナメック星に行くときに悟飯も『僕も行く!』って言った時にチチが大反対したけど、最終的には悟飯が『うるさい!』って言って、ちゃんと行きましたもんね」
ウ仙「よく細かいネタまで覚えておるのぅ。あの時、チチは『悟飯が不良になった』と思いこんどったが、悟空は喜んでおったし、悟飯はナメック星に行って最長老から潜在能力を引き出してもらったから、ずいぶんと格闘家としての可能性が広がったからのぅ」
亀子「ギニュー特戦隊との闘いは危なかったですけど・・・」
ウ仙「話を元に戻すとじゃ、子ども本人に生きる道を決めさせるには、選択肢が多くなければならないんじゃ。目の前にある道に、自分のやりたいことが見つからなければ、幅を拡げないといけないからのぅ」
亀子「たしかにそうですね」
成長意欲を高めるためには、世界観を広げる
ウ仙「だから子どもの成長意欲を高めるためには、世界観を広げる、すなわちいろんな体験をさせることが大事なんじゃ」
亀子「いろんな体験?」
ウ仙「そうじゃ。世の中にはいろんな世界があるということを教えるとよい。野球やサッカーといった一つのスポーツだけでなく、いろんなスポーツの試合を見に行くもよし、歌手のコンサートだけでなく交響楽団やジャズの演奏など、いろんな音楽イベントに連れていくもよし、東京ディズニーリゾートだけでなく、USJやナガシマスパーランド・富士急ハイランドなど、いろんなアミューズメントパークに遊びに行くもよしじゃ」
亀子「ずいぶんとお金がかかる話ですね」
ウ仙「興行的なことだけではないぞ。たとえば出産の際に子どもに立ち会わせて、弟(妹)のヘソの緒を切る経験をさせるのもよし、祖父母が亡くなったら斎場でお骨拾いさせるのもよしじゃ」
亀子「まさに『ゆりかごから墓場まで』って感じですね」
ウ仙「ちょっと意味が違うが、まぁ親が『子どもにこんな体験はまだ早い』とブレーキをかけるのではなく、何でも経験させれば、子どもはその中から自分のやりたいことを見つけるようになるのじゃ」
亀子「それは目からウロコです」
ウ仙「もちろん体験させるだけでなく、世の中には本や映像といった疑似体験できるツールもあるから、それは大いに活用したほうがよいぞ」
亀子「絵本の読み聞かせは大事ですよね」
ウ仙「そうじゃな。同じ絵本ばかりでなく、できるだけたくさんの絵本を読んであげるとよいぞ。図鑑とか写真集とか、子どもの興味を持ちそうな本を渡せば、子どもは夢中になって覚えるようになるじゃろ」
亀子「なるほど」
ウ仙「とにかく成長意欲を高めるには、選択肢を増やすという意識で子どもの世界を広げていけば、自ずと自分のやりたいことが見つかるじゃろぅ。それが本当の自由ということなんじゃ」
亀子「よくわかりました。息子が3歳になるから、そろそろ習い事を始めたほうがいいですかねぇ?」
ウ仙「習い事のことを話し始めると、また長くなるから別の回にやろう。今回は成長意欲の話だけで終わっておこう」
亀子「はい。ではまた別の回でよろしくお願いします」
こうして亀子はレベルが上がった。
「選択肢を広げる」の魔法を一つ覚えた。(つづく)