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小さい本
2023年10月11日 11:48
それは実に呆気ない、しかし、致命的な3分間だった。その潜水艦は沈没の過程にあった。浮力を司る装置が故障したのだ。彼女は職業的な勘をもって、自分が助からないことを悟った。故障から水圧による大破までの3分間、彼女は夫と娘にボイスメッセージを残した。「潜水艦が沈没していて、私は助かる見込みがないみたい。今まで私を愛してくれてありがとう。私もあなたたちのことを愛しているわ。昔からの夢だっ
2023年10月17日 09:58
鏡に映る私は酷い顔をしていた。頬はこけ、目は落ち窪み、肌は青白かった。私は鏡に向かって言った。「どうしていつもこうなの?何をやっても結局はどこにも行かない…」そして、私は涙を流した。慟哭。泣き終えて、再び鏡を見る。私は戦慄した。なぜなら鏡に映った私は笑っていたからだ。「どうして笑っているの?」私は鏡に映った彼女に問う。彼女は言った。「それはあなたが一番良く知ってい
2023年11月29日 13:52
かたん。カップをソーサーに戻す音。「それで、結局彼とは付き合ったの?付き合ってないの?」彼女は私の目を覗き込もうと前のめりになった。「いや、付き合いはしなかった。」「付き合いはしなかったって何!?」私は口ごもってしまった。「そういう中途半端な態度だからあなたはダメなのよ」そう言われて、返す言葉も無かった。「私の中で踏ん切りが付かなかったの。だから、しょうがないじゃない
2024年1月13日 22:35
電車のホーム。特急列車の出発までにわずかな時間がある。「その場所に着いたらすぐに、君に手紙を書くよ。君はその手紙を受け取って今度は僕に返事をくれる。そして、僕がまたその返事を書く。次はまた君が。そのようにして僕らはずっと、愛し続けるんだ。お互いを忘れるなんてこと、あるわけがないんだ」彼女は泣いている。「いいえ、いつかはそんな習慣も薄れていくのよ。これは今生の別れってやつなのよ。私にはわ