#9 ジュワっと脂がのった芦屋イワシみりん干しは、50年の積み重ねが生んだ安心の味
芦屋港の近く、遠賀川沿いに店を構える“中西商店”では、芦屋町ブランド認定品である「芦屋イワシみりん干し」を作っています。“せっちゃん”の愛称で親しまれる中西さんが、どうして芦屋町でみりん干しを作り始めたのか、50年以上も作り続けてきた理由と、芦屋港の今後に期待することをお聞きしました!
Q 芦屋イワシみりん干しは、どんな商品ですか?
イワシを開き、みりんなどを混ぜた調味料の中に漬け込み、乾燥させた商品です。脂がのってとてもおいしいという声をいただきます。骨を取り、開いて漬けるのに一晩、裏返してもう一晩漬けて味を染み込ませます。その後水分を落としながら300枚ほどのイワシをトレーに並べて乾燥させ、次の日に容器に入れるまで全て手作業です。「おいしくなあれ」という気持ちを込めて作っています。
召し上がるときには、焦げやすいので、弱火でじっくり10分ほど焼いてください。みりん干し以外にも鰆の春雨スープを販売しているので、手に取っていただきたいです。
Q 関西ご出身だそうですね。芦屋町に来たきっかけは何でしょうか?
大阪で生まれ育ち、結婚までは芦屋町に縁もゆかりもありませんでしたが、出産したタイミングで、夫が「両親のいる芦屋町に戻りたい」ということで引っ越してきました。最初は不安ばかりでしたが、23歳の時に越してきて、気づいたら50年も経っていました。
最初は釣具店だけのスタートでした。今は漁獲量が減っていますが、昔は芦屋町の海で魚がわんさか獲れました。たくさんの釣り人が家の前を通るのを見て、隣町の釣具屋さんが「あんたんとこ、釣り具置いたらいいやん」とおすそ分けしてくれて、たたみ1畳で販売を始めました。そこから釣り人の要望に応えて仕入れを増やし、拡大していきました。
Q どうして、みりん干しを作るようになったのですか?
親戚のこどもも合わせて5人を育てていたので、釣具店だけでは生活が大変でした。そこで近所の人たちに教えてもらい、芦屋町に根付いていたみりん干しを作り始めました。
寒い中夜通し作業をしたり、そのうち販売を始め、博多や小倉まで車を走らせたりしました。その頃は寝る暇もなく、配達の合間に10分刻みで寝ていました。私が売り込みを始めたので、近所で作っているみりん干しを集め、500パックほど預かって飛び込みで営業をかけたこともあります。一人で売り切り、その後大手スーパーが継続して仕入れてくれるようになりました。
Q どうして、50年近くも作り続けてこられたと思いますか?
お客さんが待っていてくれるからですね。作り始めた当時は近所の人とみんなで作っていましたが、今では私だけです。芦屋町のブランド認定品でもあるので、絶やしたくないという思いがあります。これまで天日干しをしていましたが、販売申請のために室内加工に変えました。加工所を整える間は製造できず、「いつ再開するの?」と待ち望んでくださるお客さんがいました。そして再販の日、売り場で待ち構えていてくれたお客さんもいたんですよ!楽しみに待っていてくれる、いつもの味として親しんでくれることが本当にありがたいです。また、芦屋町から遠方へ越した後にも、他県から注文してくださる方や、お歳暮やお中元として受け取ったことをきっかけにファンになって、注文してくれる方もいます。
Q せっちゃんのモットーは何ですか?
関西人らしい強い心ですね!芦屋町に来て50年は経ちますが、嫌なことを言われても「なにくそ!」と悔しさをバネにしてきました。昔家がボロくて雨漏りの修復をしている時に、通りすがりの人に「崩した方が早いばい」と嫌味を言われたことがありました。その時も、「お金を稼いで立派な家を建て、見返したる!」と、日々の商売をよりいっそう頑張りました。実家の親からも、きっと弱音を吐いて大阪に帰ってくると言われ続けましたが、その悔しい気持ちをバネにして、ずっと芦屋町に住み続けています。
Q せっちゃんの味がずっと続いてほしいです!
室内でつくると、乾燥の段階で適度に乾かすことができるのでふわっふわになり、味はそのままで新たな食感が生まれました。これまでは天日干しをしていたので、天気の心配が尽きませんでした。それが今では、毎日家の加工場で安心して作業ができています。
リウマチで、体中の関節が弱りゆがんだりと、いつまで続けられるか分かりません。でも、毎日作業しているからこそ体が動くし、脳もボケていないなと思うので、作り続けてよかったなぁと思います。これからも、町内や全国のお客さんに、変わらずおいしい味を届けることが、私の生きがいです。
Q 芦屋港の今後の活用について、期待することは何ですか?
芦屋港のレジャー港化について、詳しくは知りませんでした。ただ、1号上屋が「道の駅むなかた」のような活気ある産直になるといいな、と思います。漁獲量次第ですが、イワシ・イカ・サワラ・タイなどその時々でおいしいお魚を販売するのがいいと思います。
2023年に芦屋港活性化推進室の芦屋産品づくり講座に参加しました。アドバイザーに、他にも魚を使った総菜を作るのはどうかと提案をいただきました。今のところはみりん干しの設備も変わり手一杯なので、芦屋港の上屋が開業する頃には他の商品も展開できるといいな、と思っています。
(文―上田裕菜)
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?