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【24】楽しみにかわる

地球での食べ物が楽しみの一つだった『ちゃん』にとって、
コープの注文書を見ることは、わくわくそのものだった。

私にとっては…
忙しい中、忘れずに注文するものを選ぶ「行為」は、
「やらなきゃいけないこと」「面倒なこと」

正直、
「わぁ♪ 見せて見せて♪」
「これなぁに?おいしそう♪」
という、『ちゃん』と一緒に見るのは時間がかかり…

「しまった…。ちゃんに見えないように隠しとくんだった」
と後悔するときもあった。

ある日。
「ね♪ また注文しないの?あれ」
と、隠しておいたのに、『ちゃん』から要求されて

ちゃん…。注文書見るの好きだねぇ」
とつぶやくと

「ママは好きじゃないの?」
と驚くので
「うん。ママはめんどくさいかな」
と答えた。

すると、『ちゃん』はびっくりした顔で

「え!!ママのために、こんなにたくさん…
ママのために、『どれがいいですか?』
て、こんなに美味しそうなもの、たくさん用意されてるのに!?
わくわくしないの!?」
と、信じられない!という風に言った。

「ママのため‥‥っていうか」
と言うと

「ママのためだよ?だって、ママが注文したら
どーぞって持ってきてくれるじゃん。
なーんでも!ここにのってるのどれでも!」
と、ちゃっかりお刺身用のタコを指さしながら
『ちゃん』は言った。

「この紙に書いたら、持ってきてくれるんでしょ?
ちゃんは、すっごくわくわくするよ?
ちゃんの知らない面白い食べ物があって、
それ食べたいって思ったら、持ってきてもらえるなんて!」

うーん。なんでもかんでも、好きなものたのんでいいわけじゃ…
と、説明したくなった私は

「でもね。値段。っていうのがあって。数字が書いてあるでしょ?
あんまり高いのたくさん頼んじゃいけないからよく考えて…」
と、遠い星の男の子にむかって説明しようとした。

すると『ちゃん』は…

「え。ママ?430円ってもってないの?」

と、タコの値段を指さして質問した。

その真剣な顔!
目をまんまるく開いて、
どうか、430円持ってますよーに
買えますよーに!
食べたい!!
という真剣な眼差し。

かわいくてたまらないエネルギー。

もう、笑ってしまった。

「そうだね。ママお金持ってるね。
そして、ちゃんが食べたい!って言ってるタコを注文して、コープさんが持ってきてくれて。
ちゃんが「美味しい!」て喜ぶ顔見れるんだもんね。
幸せだねぇ。ちゃん。」

それを聞くと、『ちゃん』は大喜びして

「今度は、タコのお刺身がきまーす!」
と、ナッツの部屋に入って行った。

きっと、小さい頃の私も、
『ちゃん』と同じように、
母の買い物に、わくわくついて行ってたはず。

いや。今も、本当はわくわく注文できるはず。

いろんな人が、いろんなアイデアや工夫で
「もっと美味しいものを」って作ってくれている。

それを見て、「美味しそう♪」ってときめくものを、
『ちゃん』みたいに、「欲しい!」って素直に注文すればいいんだ。

私は、タコのお刺身を大喜びで食べる『ちゃん』を想像しながら
注文書を書いた。


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