なつはたのしい
昨日の夕方の出来事。
夕飯を作っている最中に、次男が食卓で宿題をしている。
毎日の、キッチンカウンター越しに見る変わらない光景。
「書けないー、書けないよぉーー」
宿題が終わらないようだ。いつもの光景。
詩の宿題
「何の宿題?何が書けないの?」
「国語。先生が詩を作ってこいって言うの。ほんとは授業中にやるんだけど、出来なかった人は宿題だって。出来なかった人は10人いて、ぼくはそのひとり。ああああ、もう嫌になっちゃう!」
「どんな詩なの?」
「えーと、文のいちばん始めの文字をつなげて読むとそこも文になっているの。そんで、横の文と縦の文の意味も合ってなきゃいけないって、もう難しくてぼくには無理」
開いてある国語の教科書を覗き込むと、「詩の工夫を楽しもう」という単元で「それぞれの行の最初の字をつなげて読んでみよう」とあり、そこにはこんな詩があった。作者は和田誠さん。
からはおもくて
たくさんあるくと
つかれるけれど
むりしてたてた
りっぱなおうち
はせみつこさんの詩も素敵だった。
ことばはつなぐ
とおくとちかく
ばらとみつばち
だれかとだれか
いまとむかし
すきときらい
きみとわたし
なるほどなるほど、と宿題の内容を把握した。
これ、けっこう難しくないですか?3年生で。国語が好き、作文が得意な子には楽しいテーマだと思うのですが、と心の中だけでつぶやく。次男は国語、それも特に文をつくることに苦手意識が強く、嫌いなのだ。
「授業中ずっと考えても出来なかったから、もうぜったい無理。なんでこんな宿題でるんだよーうおーーー。詩って何、わけわかんない。詩きらい」
「あのさ、詩を書こう、詩を書こうと思わなくていいからさ、好きなことを思い出してみなよ。そこから好きな言葉を探してみたらどうかな?例えばだよ、今日って雪が降ったよね。雪、寒い、雪合戦、楽しい、冬、雪だるまとかさ。どんどん好きな言葉をあげていって、そういうのをつなげて何か書けば、詩っぽくできないかしらね」
例えば…とメモ紙に私が即席で考えたものを書いて次男に見せた。
最初の字をつなげて読むと「ふゆはたのしい」になるもの。小学三年生っぽく書いたのだけど、どうかな?こんな感じで書けば、宿題として出せそう?と、私の中では次男が真似しやすい「お手本」のような気持ちで書いたものだった。
なつはたのしい
「あのねお母さん、ぼくが国語が苦手なの、お母さんも先生も知ってるでしょう?だからこれだとうますぎて、ぼくが書いたんじゃないって感じがするでしょう。だからやっぱりぼくが自分で書いた方がいいと思う。今これを読んだら、なんだかちょっと書けそうな気になってきた。ありがとう」
そう言って、新しいメモ紙に文を書き始めた。
「お母さん、今、冬なのに、夏のことを書くのはおかしいの?ダメかな?」
と聞かれたので、どの季節のことを書いてもいいと思うよ、暑い夏に寒い冬のことを考えるのも楽しいし、あったかい部屋でアイスを食べるのもおいしいしね、とへんてこな返事を慌ててしてしまった。
苦手なことに直面するとすぐに泣き始めて、ともすれば「お母さんが書いたのを写していけばいいか!」と自暴自棄になる次男が、急にとても大人びて見えた。
「お母さん、これ、どうかな」
なつは暑い
つめたいかき氷
はな火はきれい
たくさんの虫たち
のはらに
しずかな風がふく
いいこと起こる夏
「すごくいい詩だと思う。お母さん、この詩、ものすごおーく好き」
なにこれ、素敵じゃないか!!(親ばか、わかってます、すみません)
「よかった。じゃあノートに本番書くね。あと、挿絵も描かなきゃいけないの。超めんどくさい。スイカがいいかな、簡単だし。あと、かき氷も描こうかな。ぼくの好きなブルーハワイのやつ」
子供部屋に色鉛筆を取りにいった次男。
毎日いろいろなことを見て聞いて考えて身体いっぱいに吸収してるんだな、成長しているのだなと夕飯作りを再開しながら思っていると、
「お母さん」
また呼ばれた。
「あのね、かき氷を描きたいんだけど、どうしてもモリモリってなって、う〇こみたいになっちゃうの。どうしたらかき氷っぽくなる?」
と言うので、メモ紙にかき氷を描いて渡した。モリモリはソフトクリームの方なんじゃないの、あと食べ物にう〇こって言わないでねと笑いながら。
「ああ、お母さんはやっぱりかき氷もうまいなぁ!!」
と言ってくれた。ありがとう。
その晩子ども達が寝た後に、次男のランドセルから国語のノートを取り出して、暗闇のなかスタンドの灯りでもう一度詩を読んで、声を出さずにちょっと泣いてしまった。
寝たふりをした長男に見られた気がするけれど、お互い気づかないふりをして私は子供部屋の扉を閉めた。
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【追記】次男作の「なつはたのしい」は、私が作った「ふゆはたのしい」を読んだ直後に書いた詩なので、ふたつを比べるとちょっと似ている箇所もあります😅私自身は、私のなんて正直関係ない、彼の詩が数万倍いいと思って(親ばか)似ている箇所の事を本文中に丁寧に書かずに載せてしまいました。(コメントに載せてあります)
次男のが「まったく何も見ない状況」から書いたものではないことだけ、伝えさせてください。この詩が嬉しくて嬉しくて、次男に断りなく私のnoteに載せてしまったのも実は気がかりだったので、昨日学校から帰ってきてから聞きました。事後報告でしたが、OKをもらえました。恥ずかしいから声に出しては読まないで、と言われました。noteだから大丈夫。
今度から気をつけたいと思います。いつも読んでいただきありがとうございます。やさしさあふれるコメント、ありがとうございます。 2021.1.30 あやしも