勝つために必要なのは“筋力”ではない!スポーツ科学が解き明かすエネルギー戦略
どうも、足ひれ社長のヨシです!
「前半飛ばして、後半我慢!」
「最初にリード広げて逃げ切る!」
「とにかく前半から攻めの姿勢で!」
...こんな声、プールサイドでよく聞きませんか?
実は、これらの戦略は競泳の考え方をそのまま持ってきているんです。でも、フィンスイミングではそれは通用しません。むしろ、危険な選択になることも。
なぜなら、フィンスイミングの中距離レースには、競泳とは全く異なる特徴があるからです。
中距離種目の"落とし穴"
私は中距離のスペシャリストとして、数々の大会で試行錯誤を重ねてきました。そこで気づいたのは、「一般的な競泳の戦略」を真似している選手が多すぎるということ。
これはとても危険です。なぜなら...
✅ フィンスイミングは競泳の1.5倍のスピード
✅ 1回のキックの負荷は競泳の数倍
✅ 乳酸の蓄積スピードが圧倒的に早い
この3つの特徴が、レース展開を大きく変えてしまうんです。
科学が示す"最適解"
私が20年の競技経験と指導経験から導き出した答えは、「テンポを重視したペース配分」。
その理由を、3つの科学的根拠とともに解説していきましょう。
1. 流体力学から見る真実
水の抵抗は速度の2乗に比例します。これは高校の物理で習いますよね。
つまり、速度が2倍になると抵抗は4倍に。3倍なら、なんと9倍にもなってしまうんです!
ここで、200mを1分30秒で泳ぐ場合の具体例で考えてみましょう。
驚きの結果ですよね。同じ1分30秒のタイムでも、前半型は平均型と比べて約6.6%も多くのエネルギーを消費してしまうんです!
これは特にフィンスイミングで顕著です。なぜなら、フィンスイミングのベーススピードは競泳の約1.5倍。つまり、競泳以上に水の抵抗の影響を受けやすいんです。
前半飛ばす戦略は、いわば「自分で自分の首を絞める」ようなもの。せっかくの貴重なエネルギーを、水の抵抗に対して無駄遣いしているようなものなんです。
2. 乳酸との戦い - 運動生理学からの視点
「フィンがあるから楽に泳げる」
多くの人がそう思っていませんか?
実は大きな誤解です。フィンを装着することで、1回のキックの負荷は競泳の数倍になります。ここで重要なのが「乳酸閾値(LT:Lactate Threshold)」という概念です。
乳酸発生のメカニズム
運動強度が上がると、筋肉は次のような変化を見せます:
【有酸素運動域】(LT以下の強度)
乳酸の産生と処理のバランスが取れている
長時間の運動が可能
エネルギー効率が良い
【無酸素運動域】(LTを超えた強度)
乳酸の産生が処理能力を上回る
筋肉内のpHが低下(酸性化)
筋収縮効率が急激に低下
エネルギー産生効率も悪化
フィンスイミングの特徴として:
フィンの負荷により、素手・素足の競泳より筋出力が2-3倍必要
大きな筋群を使うため、乳酸産生量も増大
一度LTを超えると、回復が非常に困難
乳酸の影響の違い
フィンスイミングでは、競泳と比較して:
より大きな筋群を使用
1回のキックあたりの負荷が増大
より多くのエネルギーを必要とする
そのため、同じような運動強度でも、競泳以上の乳酸産生が予想されます。
回復時間の比較でも明確な違いが見られ:
競泳200m後:15分程度で通常値に
フィンスイミング200m後:25-30分必要
この違いは単なる数字ではありません。一度乳酸が蓄積すると:
筋肉が酸性化し、力発揮が困難に
ATP(エネルギー)の生成効率が低下
フィンを動かすための負荷が重荷に
フォームの維持が極めて困難に
これは「悪循環の連鎖」と呼べる状態です。
だからこそ、フィンスイミングでは:
LTギリギリのペース設定が重要
前半の無理は禁物
徐々にビルドアップする戦略が有効
実践的なアドバイスとして、200-400mでは「快適に泳げるペースの105-110%」を目安に。これがおおよそLTに近いペースとなります。
3. 戦略としての確実性 - 再現性の高いレース展開
「でも、前半飛ばして上手くいったことあるよ!」
そう思う人もいるでしょう。
でも考えてみてください。それは「たまたま」上手くいっただけかもしれません。大事なのは、どんなコンディションでも再現できる戦略を持つこと。
特にフィンスイミングでは、一度乳酸が溜まりすぎると取り返しがつきません。なぜなら:
フィンが「自重以上の重り」となって足に負担
競泳なら腕のストロークで調整できても、フィンは逃げ場なし
一度崩れたフォームを立て直すのが極めて困難
だからこそ、確実性の高いテンポ重視の戦略が有効なんです。
テンポ重視の泳ぎなら:
LT(乳酸閾値)ギリギリのペースを維持できる
コンディションに左右されにくい
疲労の予測がしやすい
ラストスパートまでの余力を確保できる
これは単なる理論ではありません。中距離種目で数々の記録を残してきた私の、実戦で証明された戦略なんです。
具体的な戦略とは?
では、実際にどう泳げばいいのか?
私がおすすめするのは「3-3-2-2」の配分。
例えば400mの場合:
最初の150m:テンポ重視の快適ペース
次の150m:同じテンポをキープ
次の50m:少しペースアップ
ラスト50m:全力
このように、テンポを基準に考えることで、より安定したレース展開が可能になります。
よくある質問
Q:「じゃあ、スピードはどうでもいいの?」
A:違います。スピードも大切です。ただし、それは「テンポの中でのスピード」。キックの強さではなく、リズムの中での効率を追求するということです。
Q:「でも、ライバルが飛ばしてきたら?」
A:それこそチャンス!相手の戦略に振り回されず、自分のペースを守ることで、後半での逆転が狙えます。
あなたのレースが変わる3つのポイント
テンポを重視する
リズムを作って泳ぐ
強さよりも頻度を意識
乳酸と上手く付き合う
前半の無理は禁物
少しずつビルドアップ
再現性を重視する
練習で確認できるペース
どんな状況でも泳げる余裕
次回のレースでは、ぜひこの戦略を試してみてください!
きっと、新しい可能性が見えてくるはずです。
ということで、今回もここまで読んでくれてありがとうございました。
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それではまた次回お会いしましょう!
またね〜
フィンスイミングスペシャリスト
足ひれ社長 関野 義秀