偏屈おやじの意外な優しさ:映画『幸せなひとりぼっち』と『オットーという男』にみる人生の光と影
Netflixで10月から配信が始まったトム・ハンクス主演『オットーという男』、ご覧になりましたか? 2023年3月に日本で劇場公開されたこの作品、実はスウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』(2015)のハリウッドリメイク版なんです。どちらも心温まるヒューマンドラマで、私はすっかり魅了されてしまいました。
まず、リメイク版の『オットーという男』から観たのですが、主人公オットーの偏屈ぶりには笑ってしまうほど。町内一の嫌われ者で、いつも仏頂面。最愛の妻を亡くし、仕事まで失った彼は、まさに絶望の淵に立たされています。自殺を図ろうとするのですが、向かいに引っ越してきた陽気な家族、特にマリソルのお節介のおかげで(?)、彼の心に変化の兆しが現れ始めます。
あまりに面白かったので、つい原作であるスウェーデン版『幸せなひとりぼっち』も観てみました。こちらは数々の映画賞を受賞し、スウェーデンでは国民の5人に1人が観たという国民的映画だそう。納得の面白さでした。
スウェーデン版では、失った家族との思い出や深い愛情がより繊細に描かれていて、胸が締め付けられるようでした。ハリウッド版に比べると、よりシリアスで、人生の苦悩や痛みがリアルに伝わってくる印象です。
どちらの作品も、高齢者の孤独や社会とのつながりの喪失といった現代社会の問題を鋭く描いています。舞台がスウェーデンでもアメリカでも、そしてもし日本でリメイクされたとしても、きっと多くの人の心に響くはずです。なぜなら、これは私たち誰もが直面する可能性のある普遍的なテーマだから。
ところで、スウェーデン版を観ながら「頑固な老人」だと思っていた主人公が、実はまだ59歳だったと知って驚きました!(ハリウッド版では63歳設定)。こんな驚きは『サザエさん』の磯野波平の年齢を知った時以来というか、、
私の周りでは熟年離婚が珍しくなく、むしろ第二の人生を謳歌しようと目論むパワフルな友人が多いので、59歳で終活まっしぐらな主人公に少しギャップを感じてしまったのも正直なところです。
もちろん、大切な人を失い、仕事まで失えば、誰だって大きなショックを受けるでしょう。それでも、もう少し柔軟に生きてほしい…と思ってしまいました。
日本は高齢化が進み、60歳前に隠居する人は少なくなりました。熟年婚活も盛んですし、60代前後で社会から完全に孤立してしまうケースは減っているのかもしれません。しかし、70代、80代と考えると、この映画で描かれる孤独や不安は決して他人事ではないはずです。
この作品を観て改めて感じたのは、周りの人の関心は時にうっとうしく感じることもあるけれど、実はとてもありがたいものだということ。そして、孤独な状況に置かれた時にこそ、心を開いて差し伸べられた手を掴む勇気が大切だということです。
『幸せなひとりぼっち』と『オットーという男』、どちらもおススメです。ぜひご覧になってみてください。きっと、心温まる感動と、人生について深く考えさせられる何かが見つかるはずです。
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