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【映画制作の環境改善に向けて】 「映適」認定制度が開始される

はい、こんにちは。演劇・エンタメ分野をビジネス視点で語るAsakawaです。

演劇人、俳優の世界では厳密な「プロ」の基準というものはありません。

サッカーであれば当然「J1」と「J2」では選手、チームのクオリティに歴然とした差がありお客さんは「J1」カテゴリに入っているチーム同士の試合の方が面白い試合が観られるはずだと判断することができますが、演劇ではその判断基準が明確になっていないのです。

せいぜいどのくらいの規模なのか、予算、出演者の知名度、劇場のキャパシティなど、つまりどのくらいお金がかかっているのかでそれを推し量ることができますが、じゃあ小さな劇場を中心に、少ない予算で演劇活動をしている人達の作品はつまらないのかと言われたらそういう訳でもないので困ったものです。

スポーツでも高校野球、サッカーが毎年、注目されて時にプロの試合と同等の感動が生まれることもありますがトータルでみればやはりプロの方が技術的には上手いよね、白熱した試合をするよねで落ち着くと思います。

が、演劇の場合は例えば一大メディアであるテレビドラマに出演する権利を掴み取った俳優達は本来、芽が出ていない俳優が見れば嫉妬するくらい圧倒する演技、毎週目の話せない面白い物語を提供しなければいけないと思っているのですが、そこまでのものを見せているかと言われたら疑問であるというのがまた困ったものです😓 この気軽に観られるテレビで演劇の良さがいまいち伝えきれていないのも結構、致命的なんですよね。

まぁ、演劇はいくら俳優が頑張っても台本が面白くなかったら・・・と俳優自身では手の出せない問題もあるので難しいのですが。

お客さんだってどうせ時間とお金をかけて観るなら面白いと保証されている作品を観たいに決まっています。ではこのプロの基準が明確になっていない演劇分野で何を基準に選べば良いのか? テレビで放送されているからと言って必ずしも上質とは限らない、むしろ無料だから仕方がないかとすら思われているかも・・・?

その、一つの指標になるかもしれない取り組みが映画界で始まりました。

それが『映適』認定制度

映連、日映協、日本映画撮影監督協会そのほかの各職能団体(映職連)が経済産業省と連携し2022年に設立した「日本映画制作適正化機構(映適)」。本日これらの構成団体が協約に合意したことにより、2023年4月1日から「映像制作の持続的な発展に向けた取引ガイドライン」に則って適正な制作が行われた映画に「映適」マークを付与する制度が開始される。本制度は映画製作者(製作委員会)、制作会社、現場スタッフの多くを占めるフリーランスが対等な関係を構築し、公正かつ透明な取引を行うことで映画産業の持続可能な発展を進めることが目的だ。

制度設立の背景として、映適の審査員を務める阿部勉は「国内市場の頭打ちと制作費の低迷」「就業環境の悪化による現場の疲弊」「コンテンツの質の低下」といった国内における映画産業の現状を挙げた。人材の就業環境や取引の改善によってこれらの悪循環から脱するため、作品認定制度が導入される。認定対象となるのはドキュメンタリー、極めて芸術性の高い実験的な作品、教育を目的として制作される作品をのぞく実写作品。作品ごとにオンラインで申請を受け付け、規模によって異なる審査料も設定されている。審査基準となるガイドラインには映画製作者(製作委員会)と制作会社間、制作会社とフリーランス間の取引や、映画制作現場での規則など9項目にわたってルールが定められ、契約期間開始前に契約書を交付することや作業時間を1日13時間以内(撮影は11時間)とすることなどが明記された。

記事本文より引用

私の他の記事を読んでいただければ分かりますが、俳優を始めとした制作に関わる人達の待遇や労働環境はどこぞのブラック企業もびっくりするくらいの低賃金、或いは無償で働かされている場合もそんな珍しくありません。

参考記事↓

ビジネスにおいて基本の契約書すら交わされていないことも多い現状。さらには昨今、問題になっている演出家や監督といった立場の強い人が出演者に対してセクハラ、パワハラをしていたことが発覚など・・・。

たとえ素晴らしい作品を作っていたとしても、その裏で犠牲になっているものがあると知ってしまうとお客さんも失望してしまいます。

そんな環境で作品作りをするのはもうやめよう、お客さんだけではなく作り手にも配慮した環境を、その第一歩になるかもしれない制度だと思いました。

これからお客さんが作品を選ぶ基準に、この作品は妥当な、常識的な環境、待遇で制作された作品ですよ、と示すこの認証マークが選択肢に入り、そんな作品達がどんどん成功していけば改善に繋がるはずです。

原作や俳優、監督の知名度に頼る作品だけではなく無名だけども純粋に良い作品が多くの人に観られるためにも客観的に見てこれは優良作品だと分かる基準みたいなものは映画のみならず舞台にも絶対にあった方は良いと思います。

いくら良い作品を作っても業界全体がバラバラであるために、ヒットするかしないかは運によるところが大きいとも言ってきました。

それでは必死になって挑んでいる人が報われないだろうってことで、何か、今からでも演劇界で知名度や資金力は関係なく質の高いコンテンツですと示す基準、区分けをした方が私は良いと思っています。

その一つに労働環境、関わっている人の待遇がある基準を満たしているというのは有りだと思いました。

では今回は以上になります。ありがとうございました。



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