【エッセイ】年末の思い
年越しが苦手だ。
無理やりに物事を清算し、新しく切り替えようという感じがいやだ。「すべきこと」に支配され、人や時間や物に影響されて自分の日常が乱されるのがいやだ。寒いのがいやだ。荒天だともっといやだ。
なるべくふだんと同じように過ごすように心がけ、12月31日と1月1日は昨日の今日でひとつながりの時間なのだと思うようにしている。
だから去る1年を振り返らないし、新年の目標もたてない。たぶん、自分にいらぬ呪いをかけるような気がするからだ。
大そうじを年末にやらねばならないと決めたのは誰か。しめ縄を飾らなくても縁起物を食べなくても、正月はやってくるし過ぎていく。目標など、思いついたときに定めれば良いではないか。
しかし口に出すと誰かの機嫌を損ねそうなので黙っている。苦心して自分の心を保ちながら、作られた慌ただしさに身を投じる。
あれは買った? 注文のものを取りに行くのは誰? 予定は何時? 黙したまま、ただ役割をこなす。ひどく疲れる。年越しのための犠牲の大きさは何なのだろう。
ああ、今年も年越しがやってくる。その前後数日を無事に乗り切ることを、今年も心から祈っている。
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