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【エッセイ】そこをなんとか
警察署にて、視力検査。
運転免許の更新である。
この手続きは5年に一度なので、毎回手順や勝手を忘れてしまう。
とにかく必要なものを持って警察署に行ったら、まずは視力検査をするように言われた。
カウンターに置かれた器械をのぞき込む。あれ、と思った。「C」がはじめからかすんでいる。輪郭がぼやけて、何重にも見えるのだ。
視力検査で視力に不安を感じたことはないので、この器械はちょっと古いに違いないと思った。だから画面が劣化していて、見えにくいのだ。しかし警察署で警察官に物言いをつけて逮捕でもされては嫌なので黙っていた。
警察官が器械を操作して、改めて「C」が映される。それはやっぱりぼやけているようだったが、そのまま検査を始めると案の定、すぐに「C」の切れ目の位置はわからなくなった。「O」にすら見える。はっきり言って、全然見えなかった。
何度か回答を間違ったところで、警察官は「メガネかコンタクトは持っていないんですか」と言った。
「え?持ってないです。普段は視力で困ることはないので(器械が悪くてよく見えないだけです)」
「このままだと、視力が基準を下回っていますよ」
まさか、悪いのは器械ではなく自分の目の方なのか。視力検査で引っかかろうとは。
「体調や目の調子もありますが、」
と言いながら、警察官は両目で測ったり片目ずつ測ったりしてくれ、「左目の視力が低いようですね」と言った。測りなおしても基準には至らないらしい。そこをなんとか、という言葉を飲み込んで、
「メガネは持ってないので。。。もう一度だけお願いできますか」
泣きの一回である。
ゆっくりとまばたきをしてから、いくぶん目を器械から離し、(勘も織り交ぜながら)ゆっくりと回答した。
警察官はまあいいでしょう、というふうに頷き「目の疲れもあるかもしれませんが、見えにくさが続くようならメガネとかコンタクトを作るようにしてください」と釘をさして検査を終えた。
視力検査は無事に終わったらしい。
出直すことにならずひとまず安堵したが、視力の低下について指摘されたことはひどくショックだった。メガネってどうやって作るんだろう。
(あの視力検査の器械の性能について、私はまだ疑っている。)
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