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長いトンネルを抜けた先 〜その世界に思いを馳せて〜
ここ数日、雨のわずかな隙間をぬって、ミンミン蟬が忙しなく鳴いています。長雨や水害のニュースが続く中で、ようやく夏がやってくるのだなと思うと、普段は暑さを感じるセミの鳴き声にも、ちょっとホッとした気持ちになります。
先日、スーパーの売り場の一角に、子どものプール用品が並べられていました。色とりどりの浮き輪やビニールボール、ゴーグルやバスタオルなど。その前でしゃがみ込んで真剣に選んでいる小さな背中に、そうか幼子にとっては普段と変わらない夏なんだなと、改めて気づかされました。
そして、この夏はシークレット花火大会が催されていますね。慰霊や疫病退散をその起源とする花火、そう教えられて見る花火は、華やかである一方で、儚さや祈りを感じ、一抹の寂寥感すら感じます。そして来年はどんな状況でこの花火を見ることができるのか、希望と不安の入り混じった複雑な思いで一杯になります。
今まで見ていた景色や音色と同じはずなのに、受け取る側の心のありようによって、こうも違う景色に見えるのかと、今年は特に感じます。制限のある生活を送っていると、普通の生活と思っていた、かつての日常が、どんなにか自由で貴重であったかと、多くの方が感じているでしょう。
あの頃は良かったね、早く戻れるといいね、そんな風に励まし合うのも、もちろん大切だと思うのです。ありきたりな挨拶のようだけど、多くの人が共感できることだから。だけど、過去に戻ることばかりでなく、今しか見ることができない景色や感情も大切にしたいなと、忘れないでいたいなと思います。
トンネルを抜けた先に、新しい世界や新しい価値観がきっと開けるでしょう。いつかこの困難な時期を思い返したとき、貴重な経験をした、悪いことばかりではなかった、あの時に本当の幸せや大切なことに気づき、ターニングポイントになったんだ…そんな風に思えるよう、丁寧に生きていきたいと思うのです。
もうすぐ梅雨が明けますね。
またひとつ季節が変わります。長いトンネルはまだまだ続きそうですが、その先にある世界に思いを馳せ、将来の自分を作っていくために今できること、今だからこそできることは何か、問いかけていきたいと思います。
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