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【読書感想文】『かがみの孤城』

辻村深月さんの『かがみの孤城』を読みました。
これから読む方のためにネタばれはなしで書きます。

「王様のブランチ」での紹介で知ったあと、2018年に本屋大賞を受賞され、ずっと読みたいと思っていました。文庫本で刊行されたことをきっかけにやっと読むことができました。
期待もあり、引き込まれるストーリーにほぼ2日間で完読。

そんな『かがみの孤城』の感想文を書こうと思ったきっかけはこちら。
帯にnoteで感想文を募集していたからです。
読書感想文は大の苦手・・・しかも最後に書いたのは思い出せないほど昔のこと・・・。それでも、オススメしたい本なので書いてみようと思います。

あらすじはこちら。

あなたを、助けたい。
学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた―― なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。 生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。
(ポプラ社より)


次の3つの観点から思ったことを書いてみます。

誰に感情移入するか

この小説は、誰に感情移入するかで読み方が変わると思います。
多くの人は主人公の「こころ」や鏡の世界で出会った6人かもしれません。

そんなわたしが心動かされたのは、”こころのお母さん”。
自分自身も母親であることから自分の子どもに「学校に行きたくない」と言われたらどうするか、考えてしまいました。
子どもが自分の部屋に引きこもり、何があったかも話してくれない。体調が悪いとは言うけれど、原因はわからない。
いつそんな状況が自分に起こってもおかしくないという気持ちで読みました(子どもは2歳ですが・・・)。

こころもこころのお母さんもお互いを想い合っているからこそ、すれ違ったり、上手く伝えられなかったり。こころがお母さんの気持ちを描写する場面が切なく感じました。

「ああ、お母さんは行ってほしいんだとわかる」
「お母さんはお母さんなりに、精一杯、気を遣っていたんだと思う。」

こころ以外の親子の関係も複雑に書かれています。子どもたちの目線で描かれる大人たちの描写が印象的でした。

テーマは「生きづらさ」

学校に行けない子どもたちと子どもとの関係を上手く築けない親たち。
小説の中に悪人はでてきません(一部を除く)。
それぞれがそれぞれの立場で”生きづらさ”を感じ、もがき、苦しみ、それでも「生きていこう」とする。

登場人物たちが向き合っている”生きづらさ”は、誰もが感じたことがあるのではないでしょうか?

小説がヒットした理由がそこにあるのではと思いました。
親子の不和、友だちとの不和、社会との不和、わだかまりは心に小さな闇を生みます。
その闇がやがて大きくなり、自分自身を苦しめます。大きく膨らんだ闇から閉じ込められて出られなくなってしまった、そんな人たちのストーリーです。誰にでも共感ポイントがあるように思います。

生きづらくしているのは「ふつうさ」。

「学校に行くのは普通でしょうか?」
「親子が良い関係を築けるのは普通でしょうか?」

普通でないといけない、普通から外れてはいけない、そんな目に見えない抑圧もまた“生きづらさ”につながっているのだと思いました。
現実の生きづらさから飛び出した鏡の世界での冒険を通じて、自分にとっての「普通」は、誰かにとっての「普通」ではない、そんな当たり前のことに気づかせてくれます。
鏡の中で見つけた友情の絆が、現実の世界にも「勇気」を与えていくことに心が温まります。

受け取ったメッセージ「逃げてもいいよ」

かがみの城自体はフィクションではありますが、鏡を覗けばその先に世界があり、「誰か」がいて、救いになる。

逃げ場がある


筆者が伝えたかったのはそんなことではないでしょうか。
苦しくても生きていれば、いつか解決の光が見える瞬間がくる。解決しなくても時間が経てば、折り合いが持てる時がくる。大人になればうまくできるようになる。
それまで生きて欲しい、逃げてもいいから生きてい欲しい。

それが小説と同じように”生きづらい”現実世界で苦しんでいる人たちへ筆者からのメッセージなのかと受け取りました。同じようように苦しんでいる人がいたら『かがみの孤城』を届けてあげたいですね。


最後の最後までワクワクが続き、こころに響く小説です。ぜひ読んてみてくださいね。


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