どれだけ気づける?この映画の怖いところ【映画】「関心領域」
話題の映画「関心領域」を観た感想などを綴ります。
ホロコーストを描いた映画は過去にも沢山ありました。
「ライフイズビューティフル」「戦場のピアニスト」「サウルの息子」といったユダヤ人視点からの映画と、それからナチス側からの視点の映画もあります。
「関心領域」はナチス家族のお話ですが描かれ方がどちらの視点でもない描かれ方をしています。家のあちこちに設置された固定カメラで家族の生活を捉えてまるで第三者としてドキュメンタリーを見ているかのようで新鮮でした。
一見普通の家族の日常生活に見えますが、壁を隔てた向う側では殺戮が行われています。しかしその様子は、時折空にみえる黒い煙や夜間に家族が暮らす家の窓から見える焼却炉の赤い炎以外壁のこちら側からは見えません。
実は家族の生活音と共に聞こえる壁の向こうの「音」がこの映画のポイントです。
怒号、悲鳴、低く鳴り響く機械音。今、私たちは行われてきたホロコーストの歴史を知っているからこそこの音の恐ろしさを感じられます。
けれど、当時のヘス所長家族にとっては近所の雑音でしかありません。
人は生活していると「音」に慣れてしまいます。
かなり昔、私は幹線道路添いのマンションに住んでいたのですが、引っ越した当初は夜間の長距離トラックの走行音に2か月悩まされて寝れませんでした。ところがその後不思議とその音に慣れてしまって気にならなくなったのです。
日常での音慣れは人間の本来の感覚を麻痺させます。
ヘスの妻は広い家と庭がある今の生活にとても満足していてこの暮らしを守ることに必死。人事異動で転勤になった夫についていこうとしません。彼女は手塩にかけてそだてた菜園と美しい花が咲く庭を自慢にしています。すぐ隣では食べるものもなく死んでいく人々がいるというのに。。。それからユダヤ人から搾取した物品を品定めするところが出てきますが、それを当然としているのがぞっとします。
そう、この映画「意味が分かったらぞっとするよね」というような場面が沢山出てくるので是非実際に映画を観てみてご自身で答え合わせをしてみて欲しいです。
(これ以上書くとネタバレになりそうなのでこの辺でやめておこう)
「ぞっとする」と書きましたが、ホロコーストの映画を観るたびに歴史は繰り返してはいけない、戦争はいけない、と思いつつも彼方の戦争に無関心を装ってしまう自分にぞっとしてしまいます。
普段自分の病気の事とか生活の事で精一杯であまり世界に目を向けられていないな、というのが正直なところ。
自分に出来る範囲で募金などをしていくしかないですが、このような映画を観たタイミングで戦争犠牲者の人々に思いを馳せることも大事だなと改めて思いました。
それにしてもエンディングの曲が不協和音でとても辛かったよー。
妻役のザンドラ・ヒュラーは以前見た「落下の解剖学」の主演でしたね!
私的に「関心領域」評価は★★★★☆でした!
今回の映画を観に行ったタイミングで数年ぶりに京都シネマの会員になりました♪ 年会費4千円+招待券2枚付き、更に毎回会員価格で映画が観られたら結構お得だと思います。
ミニシアター系映画好きなので今後のラインナップも楽しみにしています。
では、また。