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【前編】学生が解説する“さざえ堂”お参りの御利益とは?「花まつりって何?」大正大学「鴨台花まつり」をご紹介!

2023年5月13日、東京都豊島区の大正大学において、「すがも鴨台花まつり」が開催されました。大正大学は1926年創立の仏教系大学で、仏教学部を筆頭に、地域創生学部や文学部など様々な学部があります。そんな大正大学でおこなわれた「花まつり」。地域行事でもあり、仏教行事でもある、そんな興味深いイベントに密着しました。

※なお、本記事で紹介している教理や解釈は、地域・宗派によっても異なりますので、あくまで「筆者の解釈」として受け取って頂けますと幸いです。細かいことはご自身の菩提寺さんなりご近所のお坊さんに聞かれることが望ましいかと存じます。よろしくお願いいたします。


第1章 「花まつり」って何???

皆さんは、ひとえに「仏教」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?
特に若い世代にとっては、

 「実家に帰ると仏壇があって写真が飾ってある」
 「自分の家の宗派なんて気にしたこともない」

というのが正直なところでしょうか。
今でこそ法事や葬儀といった何らかの儀式行事にともなってその存在を感じる「仏教」ですが、その起源は「つらい環境を生き抜く術」を求める古代インドの人たちにありました。

●仏教の開祖は“お釈迦様”

お釈迦様(イメージ)

当時のインドはとても貧しく、お腹いっぱいの食事もままならない厳しい環境でした。そんな国にお生まれになったお釈迦様(以下、釈尊)(しゃくそん)は、城の王子として生まれ、29歳のときに「四門出遊」(しもんしゅつゆう)をして「この世は全て“苦”でできている」と体得し、その“苦”を取り除くべく、つらい修行を率先しておこない、35歳で悟りの境地に至ります(成道)(じょうどう)。その後は各地を巡り歩いて教えを伝え広めていきました。

釈尊の入滅後、その教えを授かった後世の人々が、「自分のためだけでなく人の“苦”を取り除くことはできないか」という心を起こして「大乗仏教」(だいじょうぶっきょう)を確立させ、お地蔵様や観音様といった仏さまがお生まれになって、現在に至ります。今回おこなわれた「花まつり」は、釈尊の「御誕生日」のことで、降誕会・灌仏会ともいいます。通例では4月8日に実施されますが、今回は1ヶ月遅い5月の開催となりました。

●「天上天下唯我独尊」

釈尊はお生まれになったときに、「天上天下唯我独尊」と発したと伝えられています。この言葉はよく「我ひとりこの世を牛耳る」という誤った意味で使われますが、本当は異なります。ここでの「我」とは、人称代名詞ではなく人間性一般であると解釈する先生もいらっしゃるようです。様々解釈はありますが、この言葉を発した姿がまさに「誕生仏」といわれる花まつりにおける釈尊なのです。
その際に、天から甘露の雨が降り注いだという伝説から、誕生仏の頭から「甘茶」をかけてお参りする風習があります。

誕生仏(イメージ)

第2章 1節 「さざえ堂」お参りの御利益

すがも鴨台観音堂 通称:さざえ堂

さざえ堂は、2013年に大正大学が建立したお堂で、最上階に観音様がまつられている「観音堂」です。

タワーのように上がっていく珍しい形で、内部は上りと下りの階段が交わらない「二重螺旋構造」になっています。

筆者はさざえ堂全体で「悟りの境地を追体験できる」と解釈しています。一体どういうことでしょうか。本章ではその謎に迫ります。

●「空思想」ってなに? 一度は聞いたことがある「般若心経」

日本でいちばん有名なお経、これは紛れもなく「般若心経」ではないでしょうか。様々な宗派で唱えますし、何より約260文字と短く覚えやすい。解説本なども多数発行されています。

般若心経は、仏教の「空」思想を説くお経です。インドの人々は、水の入っていないコップのことを、「水が“無い”」ではなく、「“空”が入っている」とも表現するそうです。まさに「空思想」とはこのことで、この世の物事には実態が無い様を表しています。

●必見!般若心経のストーリー 梵字ってなんだろう??

般若心経には様々な解釈がありますが、ここでは第1章でご紹介した「大乗仏教」の視点から解釈してみましょう。大まかなストーリーとしては、「観自在菩薩(観音様)がどうやって悟りの境地に達したかを、弟子達(舎利子)に説法している」というものです。

さざえ堂の上り階段には梵字が描かれている

現にさざえ堂上り階段には、古代インドの「梵字」で「ギャーテーギャーテー‥」という般若心経のラスト1節が書かれています。ここは「心経最後の決め台詞」ともいえる部分で、先ほどの解釈に基づけば「私はこれを唱えて修行することで悟りの境地に達しました」と観音様が仰っているような箇所ということにもなります。つまり、さざえ堂を上っている修行者たる私たちは、「悟りへの近づき方を観音様からお授け頂いている」という解釈もできるのではないでしょうか。(あくまで一例にすぎません。)

宗派によって解釈は様々ありますが、般若心経全体を見てもここだけが漢訳ではなくインドの発音そのままの「音写」になっている理由が、「ギャーテーギャーテー‥」部分は“特効薬”で、その他は解説をする“処方箋”であるため、という解釈もあるほどです。漢訳ではなく音写である理由を考えてみてください。確かに、外国人に道案内をするのなら、その方の「母国語で」伝えてあげるのがいちばん正しく伝わりやすいですよね。不器用に現代語訳して解説するよりも、確実に仏様に伝わる呪文、それがこの「梵字」なのです。

梵字の一例 画像は観音様をあらわす「サ」字
御朱印にも付される大切なひと文字

●最上階には現世利益の観音様


ご本尊「聖観自在菩薩」

さざえ堂の最上階には、優しいお顔を浮かべた本尊・観音様がいらっしゃいます。正式には、「聖観世音菩薩(観自在菩薩)」といい、「今生きているこの世界がより良くなりますように」という願い(現世利益)を叶えてくれる仏様として有名です。観音様は、浅草寺などにも本尊として祀られ、その門前の賑わいからも、絶大な人気を誇っていることがわかります。

この大正大学の観音様も、学生の学業成就のほか、巣鴨の街の発展商売繁盛などを叶えてくださる存在です。合掌して一礼する作法が一般的ですが、宗派によっては「南無観世音菩薩」とか「おん あろりきゃ そわか」と唱えたりします。
観音様の右の御足を見ると、一歩踏み出そうとしています。仏の世界から我々の世界へ、今にも助けに来てくれそうです。

●さざえ堂お参りの「御利益」とは??

さて、ここまで長々とご紹介してきた豆知識ですが、いったいこの「さざえ堂」に上ることでどんな御利益がいただけるのでしょうか?
まずは「健康」です。
階段は上り60段、下り60段の計120段あるので、健康維持には最高のお堂といえるでしょう。
というのは冗談です。

一言で言えば「菩提心をおこせるお堂」であると筆者は考えます。

上り階段途中に鎮座するお地蔵さま

「菩提心」とは、「世の中のためになろうという心がけ」つまり「悟りを求める心」のことです。読者の皆さんは、般若心経の空思想、壁の梵字から何を感じ、観音様のそのあたたかいまなざしを前に、どんな「誓い」を立てましたか?
「友達の相談に乗って少しでも楽にしてあげよう」とか「少しでもエコな運転をして環境負荷を減らそう」とか、どんなに小さな誓いでも構わないのです。
皆さんが、皆さんの足で、さざえ堂に上ることで、「自分なりの誓い」を立て、自分のおこないを再確認できるんじゃないか、筆者はそう思います。
余談ですが、お寺やお墓にお参りする時間は、自分の行動を振り返って今後に生かす、とても大切な時間であると筆者は考えます。

●廻向(えこう)

さて、仏様にお参りをすると、なんだか心が晴れ渡るような、スッキリした気持ちになりますよね。自分の心の整理がついたような、あの感覚。
でも、その功徳(パワー)は自分のものだけにしてはいけません。
お参りして仏様からいただいたパワーのことを「功徳」といい、一度自分の身体に「種」が植えられたような状態になります。その種をしっかりと育てて実らせ、広く世の中に行き渡らせる、「廻向」という行為が大切です。さざえ堂の前に立っている大きな柱(廻向柱・角塔婆などという)は、仏の世界(法界)と私たちの世界(衆生)をつなぐために必要な「通信機」のような存在です。(お墓の「卒塔婆」なども似た意味があります。)

さざえ堂前に建つ「角塔婆」

お堂を後にするときには、振り返って合掌一礼し、「この功徳を大切にします」と心に誓いましょう。

【後編】もお楽しみください!

ここから先は後編記事に続きます。
「御朱印浄書」については後編記事をチェック!!


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