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地上の楽園 (夢のクロニクル)

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日本だけでなく、世界各国の読者に大航海時代の魅力を知ってもらいたくて書き続けています。今、世界は宇宙に向けての第二次大航海時代。未来へのビジョンをも喚起してくれるでしょう。
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2018年9月の記事一覧

マデイラ島の伝説 3

マデイラ島の伝説 3

「恋の病ってやつだね」
「それに加えて、ドーリーってひとは、人一倍多感な女性だったんでしょうね。ロバートの方も、彼女に劣らず情の深い男性だったみたいで、友人たちは見かねて一計を案じた」
「それで誘拐ってことになったんだ? で、ロバートも脱獄させたとか?」
「いいえ。彼女の結婚式がつつがなく終わった後、ドーリーの親族たちはロバートを釈放させてたの。そこで、友人たちは彼とともにブリストルへと馬を走らせ

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マデイラ島の伝説 2

マデイラ島の伝説 2

「この島を発見したのは、ポルトガル人じゃないって、知ってた?」
「いや、知らなかった」クリストバルはフェリパの方を見る。「そうなんだ?」
「ええ、実はエドワード三世の時代に、英国人たちがここに漂着したらしいの」

「このマデイラ諸島の存在そのものについては、すでにローマ時代から知られていたとは聞いているけど…」
「そう。そうして、エンリケ航海王子の命を受けた探検家ジョアン・ゴンサルヴェス・ザルコが

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葡萄牙の海 4

葡萄牙の海 4

《わかった。で、どうしてだったの? エンリケ航海王子は、どうしてもっともっと先へ行きたかったの?》
〈挟み撃ちにするためさ〉
《誰を?》
〈アフリカ西海岸沿いの土地々々を征服しつつあったイスラム勢をさ。そいつらを、こちとら海路を回って背後から攻めるってわけだ。それに、海戦となると、イスラム軍より我らがポルトガル船団の方が数段上だからな〉
《それは、成功したの?》

〈まあ、急くなって。はははは。お

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