#1)女性画家Cecily Brown-さわやなエロスの世界
セシリー・ブラウン (Cecily Brown.1969- UK)
エロスを追っているのだが、それは、さわやかに、やさしく描かれている。
当初は、抽象表現主義のポロックやウィレム・デ・クーニングを彷彿させる筆致と構成だった。
セクシーな身体表現を強調し、具象と抽象の間をさまよう、焦点のない独特な世界がある。
その後の傾向は、人物や自然という具象をベースにして、その筆致(マチエール)は、軽快だ。
そのエロスは、2000年代以降は、よりさわやかにして、やさしい世界になる。
それはエロチックな絵画なのだが、描く側のコンセプトが、ごく自然な視点であるからかも知れない。
そして、幻想的なテクスチャー(Texture)の世界へ導いてくれる。
(c)Cecily Brown
略歴
1969年、ロンドン生まれ。
1993年、ロンドンの美術大学(Slade School of Fine Art)他を卒業。
(1992年には、英国美術学生の全国大会で最優秀賞を重賞し、Slade School of Fine Artの交換留学生として、ニューヨークに在住していた。)この間、ロンドンでの学業の間には、ウェイトレスや、アニメーションスタジオのスタッフとして働いた。
1994年、アメリカ合衆国に渡り、ニューヨークで活動している。また、同じ時代に英国のトレイシー・エミンや、ダミアン・ハーストがいる。
そのセシリー・ブラウンは、当初はアニメーションの制作を行っていた。それは、ポルノアニメ「Four Letter Heaven 」(Animation Cells-1995)だった。(セル画-MoMA収蔵)
(c)MoMA-Cecily Brown
当時の女性蔑視の批判、また、性の解放、と言われるが、、そのような意味合いが果たして、あったのだろうか?
ショート・アニメーションは、2分30秒ほどで、コラージュ、ペン、インク、水彩絵具などを使い、高いクオリティーだ。この時期に、後のドローイングのコンテンツの様相になっていく、この時期のイメージを習作として、育まれたのだろう。それらは、ルネサンスから19世紀半ばの絵画を継承しているが、ただ、多くは、ポルノグラフィーからのイメージだった。
この90年代後半という時代は、ピーター・ドイグ、エリザベス・ペイトンなどの具象絵画の画家が注目された時期でもあった。また、*アプロプリエーション・アートの時代であり、セシリー・ブラウンもそうだったのだろう。
(註)*アプロプリエーション・アート(appropriation art):美術史・メディア・いわゆる消費物など、既成の表象からイメージを取り出し、新しい文脈に組み入れるアート手法。
CECILY BROWN - GAM
次回「女性画家Cecily Brownから美術史の一端(ヌード像)を考える」につづきます。