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【創作】赤い部屋で【スナップショット】


 
 
 
綺麗な部屋ね
 
凄い赤だ
 
家具も椅子も全部真っ赤
なんて美しいんでしょう
 
少し恐ろしい感じがするな
 
そう?
私はとても気に入った
赤は夜に映える色
漆黒の影をまとって
夜の闇から浮かび上がる
 
君は赤い色が好きだね
 
ええ
だってそこには
毒があるから
私たちが健康に
まっとうに生きることを
横道にそらす
甘い毒
それは私たちの命と
真逆のイメージ
 
命の色ではないのかい?
赤は血の色だ
 
ええ
でもそれは
私たちが闇をまとって
生きている証拠だと思っている
ほら、海は青と緑に輝いて
森は深い緑に染まっている
そこは命の源
生き物がみんな心落ち着く場所
赤い血はそんな緑の補色
だから
安らぎと対極の
致命的な情熱のイメージになる
生きるということは
安らぎの中から出て
闇と共にこんな風に
赤い部屋で真っ赤に染まること
 
こんな風に先の見えない
終わりのない情熱に染まること
 
そう
赦されない私たちは
ここでしか本当には生きられない
私たちには終わりが見えている
だからここで
朝の白い光が差し込むまで
これから全てを忘れて
生きていることも忘れて
時を過ごす
 
この赤に
君の赤に
僕も染まってしまったようだ
 
私だってそう
貴方と初めて会った時
一緒に食べたリンゴの赤
その赤がにじみ出して
私たちを覆っていったよう
緑の森の中の赤い実には
甘さと毒がある
私たちはこうして
死ぬほど甘い情熱を味わいながら
毒に染まって
少しずつ死に近づいていく
 
生きることは
命のある場所を出て
死に近づくことでもあるんだろう
 
そう
私たちは血にまみれて生まれて
そんな闇の力をまとってきた
母なる命に満ちたみどりの海とは
決して交わらない力を
 
僕も君も血の味を
忘れられない
赦されないから
こうやって離れられない
 
いつか赦されるのなら
 
そんな日を想像する?
 
ええ
とても
貴方と一緒に
陽光の中を歩ける日を
こうした情熱を失って
美しい森や海に一緒に出掛ける幸福を
きっとその時情熱は消える
 
その代わりに愛を多分見つける
 
そう
あるいはきっと幸福を
きっとそんな森には
きれいな水が流れていて
私たちの渇きを癒してくれる
 
そうなるには
あまりにも長い時間を
かけなきゃいけない
遠くまで行かなきゃならない

あの人が
手の届かない場所まで
そうなる前に
私はもっと年老いていく
そうなるまで
貴方を見ていられるのか
貴方との本当の愛を掴むまで
生きていられるのか

多分僕たちは
本当の愛の代わりに
この赤を手に入れている

この赤の中で
血に染まって
闇に溶けて
私はあなたと一緒に
愛の代わりに
本当の自分に出会えている

本当の自分が鏡に映り
僕らは本当に生きていると
感じられる

わたしは
あらゆる他の色を失って
ここまできた

いつか終わるとしても
今は離したくない
 
ええ
わたしを失うことは恐い?

恐い
とても

わたしも
でも大丈夫
きっと恐がる必要はない
だって人は誰でも
最後に必ず出会うから
私たちを焼き尽くす
あの赤い炎に
 
 










(終)


※【スナップショット】では
ワンシチュエーションでの
短いダイアローグや詩を
不定期に載せていきます。

※過去の「スナップショット」置き場



今回はここまで。
お読みいただきありがとうございます。
今日も明日も
読んでくださった皆さんにとって
善い一日でありますように。
次回のエッセイや作品で
またお会いしましょう。


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