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picture Hiroshi Kamoto.

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香本博が描いた絵。描いた動機など、作者自身のメッセージを添えて。
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2019年3月の記事一覧

『薄透紅(うすべに)』

『薄透紅(うすべに)』

春の朝の空気を感じながらに歩いていた。
路の脇には水路があり菜の花が咲き
わずかだが、桜の並木のようになっている。
薄いピンクのドレスを着て
両手を広げているような桜の木があり
光を帯びて美しかった。

向こうから女子学生が自転車に乗って来る。
紅色のスカーフが風に泳ぎ
かごに赤いバックを入れている。
部活に行く少女はこれから
少しずつ大人の色香を持つ女性となる。
けばけばしい不透明さではなく

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『山かまど』

『山かまど』

武甲山にぶつかる雲は
まるで 釜戸の扉を開いたかのように
燃えている。
巨大な鯨のようにも見えるし
下の影や色の違う地層の形は
魚影の群れに見える。
約10年前、かまど色の空という題名で
こうした雲を描いたことがあり
東京都美術館に展示してもらったことがあった。
しかし秩父盆地の特別な光の屈折は
冬の大気と武甲山を出会わせて
ドラマを見せてくれるのだろう。
本格的な釜戸に これからも出会いたいもの

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『旅立ちの詩』

『旅立ちの詩』

一年で最も寒い2月 が過ぎて3月・・そして
一番待ち遠しい春
比喩的に言って、現代の世情は冷え冷えとして2月だ。
路はヌードの木々が立ち並ぶ..
創造性の無いものに囲まれる町並み
以前からタンポポを描きたかった。
でも『飾り』や『脇役』としては制作したくなかった。
そして『タンポポとはこうなっている』という絵にも
したくなかった。
自分が描きたかったイメージとは
タンポポの胞子たちが、良い風に乗っ

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『帰ろう!』

『帰ろう!』

厚手ワトソン 交響水彩 八つ切りサイズ

毎夕同じ時刻になると
海岸沿いの場所から
海猫たちが群れを成して帰って行く。
ヨブ記の中にある記述で
創造者が地の基を据えたときに
海に対して
《ここまで来ても良い、しかし超えてはならない》
と命じたとある。
鳥取砂丘は海よりとても高いわけではないのに
波は目ったなことが無い限り暴走しない。
幻想的な日暮れのドラマの中で
砂丘に打ち寄せ、帰っていく波が

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