小説「日和見さんと、境界線」(前編)
小説「日和見さんと、境界線」(前編)*無料記事
日和見さんと僕は一緒に縄を掴んで、大きくゆすって鈴を鳴らした。鈴は古くて錆び付いているように見えていたが、その見かけを裏切る、からんからん、一緒に青白い光が飛び散りそうな、明るく軽快な音がした。
僕はその音に満足し、二人で2回、社殿に頭を下げて、2回手を鳴らす。2礼2拍。
日和見さんはこの神社に来るのは子供の頃以来だと言った。この町でそんな人にいるんだと知って僕は少し驚いた。
「私のうちはいつもお正月は海外だったから初詣