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中世からのスタイルで、新しいものを創る。ゾウガニスタ 望月さんの物語。 - n.3

フィレンツェで唯一、木象嵌細工を専門とする職人、望月貴文(Takafumi Mochizuki)さんにお話しを伺っています。今回は第3回目です。

過去から現在に時間は移り、「いま」の望月さんが想う木象嵌とは?

望月さんの「絶対に失敗しない」というコンセプトが、あるとないとでは、仕事に向かう気持ちは変わりますか?

日本の風潮なのか分からないですが、「失敗を怖がるな」ってあるじゃないですか。

もちろんそうなんですけど、自分がものを作っていて、自分の扱っているものって、アンティックだったりとか古いもので、それってもう人間の手術とまったく同じで、失敗したらもう戻せない。たとえば医者は失敗っしないじゃないですか。

失敗しないように、徹底的に練習して、シミュレーションして、仕事を始める。それがすごい大切だなって思っていて、そこまで徹底して準備してシミュレーションをやって、で、絶対失敗をしない環境を作ってから本番に挑む。

もしそれでなにか起きたら、それはもう事故だし。そういうものだな。っ思って。

とにかく失敗してもいいから、とにかくやるというスタイルだと、なかなか、中に入ってこない。1回1回の仕事の中身を濃くしたいな。という。

下準備にすごく時間をかけるんですね?

そうですね。木型とかだと、ずっと何ヶ月も木型を見ておいて、頭のなかにちょっとづつ作っておいて。

決めたときの作業は、とにかく早く。職人仕事はスピード仕事だと思っていて、手はとにかく早く動くようにしようと思っています。

決まる瞬間ってあるんですか? カチっと鳴る瞬間とういうか。

入りますね。本当にカチっという感じで。
電車に乗っててぼーっとしてて、あの型で何作ろうかなぁ、どう使おうかなぁと、外を見ててカチって入る瞬間とか。

例えばひとつの景色をみて、この木を使えるとか、どの木を使えるかな。ずっと考えている。

1枚の木で。船と影と光だけ入れて、そうすると、木目を活かして、川の流れみたいな表情。職業病で、例えば1つの景色をみてると、これだったら、この木でいけるなとか、この木どこで使えるかな。とずっと考えてて。

空の表情なんか特に、ニスを塗る前は全然出てないけど、塗ると出てくるのが、経験とか感覚で持っているので、想定して空に。一応濡らしても、石のようには光沢がでないので、感覚ですね。

木の素材は本当にいろいろで、そこにあるパレットが、素材のサンプルで、全部違う木。17種類くらい。素材としての木は好きですね。

アイデアが決まった瞬間から、どのくらいで完成するんですか?

木型だと2~3週間。普通の額物だと3~4日間。最短だと小さいものなら1日でできます。

よし、完成した! という瞬間は、あるんですか?

あります。あるし、つけないと仕事にならないんで。例えば磨きもそうなんですけど。磨きは、ここで終わりというのがないので、自分で判断しないといけないので、それが本当に苦手ですね。

もうこれ以上はやっちゃダメという、自分のなかでブレーキをかけます。

ということは、いくらでも磨けるんですね?

ピカピカのなかに、こう、締まりがでてくる感触があります。

オーダーの予算が決まっているなかで、もうちょっとなんだけど、これ以上時間をかけると。みたいな葛藤もあります。

ニスはゴンマラッカ(シェラック)です。99.9%のアルコールに溶かして液状にしたもので少しづつ膜を作っていきます。アンティック家具を磨いて行く方法と一緒で、少しづつ膜を作っていきます。

染み込ませて飽和状態になると、柔らかい木と硬い木との差がなくなってくるんです。そこがポイントで、木が吸わなくなって膜ができてきて、その膜をどこまで厚くするのかっというのが、結構どこまでやるの。という。

どこまで厚くできるんでしょうね。

何ミクロンという世界だと思いますけど、ちょっと薄いガラスがのったかな。と見えるところまではあげられます。

これは、今年の新しい作品なんですけど、もともと1枚の木で、コブの入っているところと、入ってないところがあって。

コブの部分を磨くと濃くなるので、輪郭線を切り抜いて別の木をはめ込んで、水の流れのような木目が入っているので、滝みたいなイメージで、鯉のぼり。

スタイルはあくまでも昔のスタイルです。素材も昔のままなんです。昔のアンティック家具を作る方法をベースにして、新しい感じのものを作ったりとか。

日常で使う場合には、ロウをのせてテーブルに使ったりとか。アンテイック家具と同じ磨きなんです。だから結構、アンティック家具の修復もやりますよ。

望月さんにとって「つくる」とは、なんでしょう。

アーティストじゃない人が、アーティストっぽく、無理やり生み出しているので、作るのは身を犠牲にしているというのか、消耗している感じがしますね。

職人さんの仕事も「作る」ですが、いま望月さんがおっしゃられたのは創造するほうの「創る」なんですね。

ある程度「作る」は、オートメーションのように体が勝手に動いちゃうんですよ。

頭を動かさなくても、手が勝手に動くので、そこまで意識がないんですよね。ただ創作の「創る」は、意識をぐーっともっていくので、身を削って生み出している感覚です。

Home Faberの展示会で実演中

苦しい時間の方が多いのかな。それでお客様に喜んで頂けると、ほんと、嬉しいですよね。

仕事をしていて一番楽しいときはいつですか?

楽しいのは、そうだなぁ。
お客さんの納品のときが怖いんですよね。

楽しんですけど、怖い。その両方なんです。
そのあとですね。怖さを超えたあと、満足して頂けたら一番楽しいです。

結構お任せの仕事が多いんです。

分かりづらい技術なんで、やっぱりある程度のモチーフとかは言ってもらえるんですけど、そこから先は知らない世界なので、お任せで。というのがほとんどです。

受注の70~80%は、日本の方です。

そういう状況だったんで、先日のコルシーニの職人展示も、イタリア人にはちょっと難しいかなと思いながら出していたんですね。

でも参加してみると、やっぱりイタリアでも、ターゲットをしっかりすれば、噛んでもらえるなっていう感触をすごく感じました。

イタリアの市場というのに諦めていた感じがあったんですけど、今回の出展で何かが変わった気がします。感覚的なもんなので実際どうなの。というと分からないですけど、前回出展したときはに、あまり感じられなかったことです。

いろいろなところで見たよ。という方が結構来てくれて、これだけ見てくれているんだな、記憶に残ってくれているんだな、というのを、すごく肌で感じれて、買ってこうという雰囲気を、すごく出してくれていました。

たくさん職人さんがいるので、記憶にそんなに残るかなぁと思っていたんですけど、しっかり覚えてくれてて。

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ふらりとアメリカ人カップルがお店へ入ってきて、作品をじっくり眺めています。

サウスキャロライナで、木製の家具やインテリアを作る仕事をしているブライアンさん、そして奥様のエミリーさん。前日にフィレンツェに来て、散策していて、目に留まったようです。

Very cool Very beautiful(すごい素敵、とても美しい)を繰り返し、望月さんの作品を大絶賛しています。どうやってこれを作っているのか。しばし同業者同士の話しをされていました。

アメリカ人、日本人、イタリア人、そんな国籍など取り払って、美しいものを愛でる心は、世界共通。フィレンツェの小さな工房が世界に繋がっているのを、とても嬉しく感じるエピソードでした。


望月さんが4年間勤められた家具メーカーAD Core Devise(エーディーコア・ディバイズ)にて、11月下旬から東京と大阪で個展が開催されます!工房に伺っていたときに、偶然知りました。なんという、ジャスト・タイミング。

望月さんも会場にいらっしゃいますので、ぜひ足をお運びください!

会場
AD CORE DEVISE ショールーム


東京
渋谷区広尾2-13-2 TEL 03-5778-3341
11月30日(水)〜12月3日(土)
11:00 - 17:00

大阪

大阪市中央区南船場2-6-12 SEDC PLACE 2F TEL06-6265-2060
12月6日(火)〜12月8日(木)
11:00 - 17:00

望月さんのnoteでもご案内しています。作品が出来上がるまでの工程も見ることができますよ!

次回も望月さんの工房にてお会いしましょう。
次回が最終回の予定です。

最後までお読みくださり
ありがとうございました!

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イタリアのモノづくり | ようこ
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