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女性という世界観を垣間見る 〜鍵のない夢を見るを読んで〜

彼氏がほしい。母になりたい。普通の幸せがほしい。5人の女たちの夢と転落。帯にはそう書いてあった。

書いてあることからして、ハッピーエンドは迎えないんだろうなと思う。確かに5つあるストーリーのどれもモヤモヤ感が残る終わり方ではあった。また、書いてある通りに「転落」したのは、5人中1人だけだった。

前に「かがみの狐城」を読んで以来、また読みたくなった辻村深月先生の小説。今回は「鍵のない夢を見る」のレビュー記事。

本作は5つの物語を合わせた短編集で、主人公はもちろん女性である。それぞれが女性ならではの苦悩を本の中でさらけ出している。男性である私には、少し刺激が強すぎたかもしれない。

それでも、辻村深月先生の織りなす世界観を垣間見れたので、楽しみながら読めたと思う。

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本当の意味で「転落」を迎えた女性

大人ならではの生々しい表現もあり、小説でここまで表現できるのかと。私の中では初めて見る光景。女性が主人公であるからゆえかもしれない。

言葉のひとつひとつが主人公(女性)のすべてをあらわにする。特にそう感じたのは「芹葉大学の夢と殺人」である。そういうシーンがあったのももちろんだが、本当に最後は「転落」という終わりを迎えた。

最初は純粋に愛し合っていたのだろう。それが立場が違うようになって、心が離れていったのに、殺人を通してまた急接近する。それが2人の「転落」に続いていくとも知らず。単なるミステリーの次元を超えているような気がした。

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我が子のためならなんでもする女性

大切な我が子が目を離した隙にいなくなった。何かをもぎとられたかのように、大混乱する主人公。冷静でいられない中で、なんとか冷静さを取り戻して、行動に移そうとする。子どもを失うというのは、これほどまでにダメージの大きいことなんだと思わされた。

母親という存在をここまで主張する作品に初めて出会えた。タイトルは「君本家の誘拐」である。子どもができない苦悩、母親になってからの育児の大変さも描かれていた。自分が赤ん坊だった頃も、こうやって母親に苦労をかけたんだなと、遠巻きでみている感じ。

それらを経てのだいじな我が子。確かに、こんなに我が子が愛おしければ、その我が子のためなら何でもするという気になるのだろう。

この話はあまりモヤモヤは残らなかった。多少なりともハッピーエンドで締め括られてた。それでも母親の存在意義が強く心に残る話である。

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おわりに

5人の女性が主人公の短編を合わせた小説。鍵のない夢を見る。5編あるうちの2編を簡単に紹介してみた。

そこには、女性ならではのささやかな夢を探して、もがき続ける様子が描かれていた。モヤモヤ感が残る終わり方ではあるものの、それも含めて辻村深月先生の世界観だと思い、そのモヤモヤを味わうことに意義があると感じている。

また辻村深月先生の本を読みたいかな。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。

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