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液体と気体の流動性を考察する流体力学の話 -4-

液体と気体をひとつの「連続体」と見做して、力学的な観点から議論する。流体力学の意味するところです。

流体力学は何かと非線形問題を扱う分野です。守備範囲は水理学や航空力学など裾野が広いです。

今回の連載(投稿)では、流体力学において特有の物理的挙動の表現について、数学の知識を交えてながら整理していきます。

前回は流体における代表的な特性として、主に圧縮性・粘性・熱伝導性を挙げて各々の特徴を示しました。

今回は流体力学で代表格と言える3種類の基礎方程式について、式展開を含めて示していきます。

流体の運動は流体内部の各点(位置)における速度や圧力、密度を時間の関数として与えることで規定されます。熱的問題を考える場合は温度など熱力学的変数も追加されます。

今回で示す3種類の方程式とは、上記の変数群を支配する際に必要な「保存則」ということです。


連続方程式

質量の保存則になります。流体内で閉曲面を仮定して、面要素と外向き法線ベクトルを定義します。閉曲面は空間に固定されているため、流体は閉曲面を自由に出入りする形になります。

閉曲面で囲まれた流体(領域)における単位時間あたりの流体の質量増加は、同閉曲面内に流入する流体の質量と同義であると考えます。

上記の流れから、流体の連続方程式を導出します。

$${\frac{D\rho}{Dt}+{\rho}{\,}\textrm{div}{\,}\bm{u}=0}$$

ここで、流体が非圧縮性である場合は上記の第1項が消去されます。密度がある時刻において空間的に一様であれば、時間的にも一定と言えるため、上記の式は次のようになります。

$${\textrm{div}{\,}\bm{u}=0}$$

ここでは時間微分を含みません。つまり、非圧縮性流体の扱い方が容易になるということです。

運動方程式

運動量の保存則になります。閉曲面(内部)の流体の運動量の単位時間当たりの増加量は、同閉曲面を通る運動量の流入量と表面上の応力の力積、流体に働く体積力の力積の和に等しいと考えます。

ここで、ガウスの発散定理を用いて面積分を体積分に変換します。そこから対積分の全体を抜き出すことで、運動方程式を導きます。

そこから先ほどの連続方程式を考慮すると、速度を基にした運動方程式は次のようになります。

$${\frac{D\bm{u}}{Dt}=\frac{1}{\rho}\textrm{div}{\,}{\bm{p}}+\bm{K}}$$

ここで、完全流体について考えます。完全流体は応力におけるせん断成分が無いことから、運動方程式は次のようになります。

$${\frac{D\bm{u}}{Dt}=-\frac{1}{\rho}\textrm{grad}{\,}p+\bm{K}}$$

これは「オイラーの運動方程式」と呼ばれます。

粘性流体を考えます。流体が非圧縮性である場合の運動方程式は次のように簡略化されます。

$${\frac{D\bm{u}}{Dt}=-\frac{1}{\rho}\textrm{grad}{\,}p+\frac{\mu}{\rho}\Delta{\bm{u}}+\bm{K}}$$

右辺の2項目(係数)は動粘性係数と言います。この形は非圧縮性流体における「ナビエ・ストークス方程式」と呼ばれます。

エネルギー方程式

エネルギーの保存則になります(前節から説明を開始しています)。流体の持つエネルギーは、単位体積当たりの運動エネルギーと内部エネルギーで構成されます。

また、熱伝導による熱流や応力・体積力が行う仕事もここに追加する必要があります。ここからエネルギーの保存を表す次式が示されます。

$${\frac{DU}{Dt}=\frac{1}{\rho}{\,}\bm{p}{\colon}\textrm{grad}{\,}\bm{u}-\frac{1}{\rho}{\,}\textrm{div}{\,}\bm{\theta}}$$

こちらは上記に示した式のベクトル表記です。

ここからはエントロピーSを考慮した場合について考えます。

エントロピーとは、等温可逆的な変化である物質が熱量を吸収したとき、エントロピーの増加は吸収熱量を温度で除した値に等しいとされています。例えば、完全流体のエネルギー方程式に準ずると、次式が成立します。

$${T\frac{DS}{Dt}=\frac{k}{\rho}\Delta{T}}$$

また、粘性を考慮した完全流体である場合は、次のようになります。

$${T\frac{DS}{Dt}=\frac{k}{\rho}\Delta{T}+\frac{1}{\rho}\phi}$$

追加されたのはエネルギーの散逸関数(散逸項)です。粘性応力のなす仕事を通じて単位時間内で単位体積当たりに発生する熱量を意味します。

$${\phi=\chi{e_{kk}}^2+2\mu(e_{ij}-\frac{1}{3}e_{kk}\delta_{ij})^2}$$

右辺第1項は体積粘性率を係数にします。粘性流体においては、散逸関数はゼロより大きいことが明らかです。断熱状態であるならば、エントロピーは流れに対して単調増加を示します。

おわりに

今回は流体力学における3種類の基礎方程式を示しました。これらは物理的な保存則に基づきます。完全流体や非圧縮性を考慮する場合においては、式はさらに簡略化されます。

これらの方程式の他に考える事項として、状態方程式の存在があります。ここはまた次回で詳細を示していきたいと思います。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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