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【読書】小説/改良

あらすじ

女になりたいわけではない。ただ、美しくなりたいだけだった。

主人公の男は幼少期喘息を持っていた。
そのため少しでも心肺機能の向上につながるようにと、両親に勧められスイミングスクールに通わされていた。
そのスイミングスクールで仲良くなった少年に誘われ、野外で大人の関係になっているカップルの見学に付き合わされる。
見学中、あろうことか少年の自慰を手伝うよう強いられ、断ることもできずされるがままとなってしまう。

そんなことがあった主人公は、その後スイミングスクールには通わなくなったが喘息はよくなり大人になる。

大人になった主人公は、自宅でひっそり女装するようになる。
私生活ではアルバイト先の友人であり、幼馴染の女のことも良好な関係を築き、時々デリバリーヘルスを頼み、平穏な日々を過ごしていた。

はじめの頃は家でひっそり行っていた女装だが、メイクが上達するにつれ外へ出てみたくなる。

一体なにが起こるのか。

そんなお話。




感想

なんとも言えない、モヤモヤ感が残ったお話だった。
どんな風に書き残そうか考えているうちに、読み終えてから1ヶ月近く経ってしまった。

主人公は女性になりたい訳ではなく、美しくなりたかった。
美しいものの前では自分は酷く醜いものに感じられた。反対に、醜いと感じたものの前では自然に振る舞うことができた。
20代前半の女の私にとってはとても共感できる感情、感覚だった。恐らく、自尊心の低さや劣等感からそのように思うのだろう。

性被害を受けている描写が生々しく、主人公が感じたであろう怖さや悲しさ、怒りを感じることができた。

自分にはどうしようもない理不尽な状況、出来事に対して、適当に、自分が納得出来る理由をつける。無理やり納得して、やり過ごす。
主人公はことある事に、こんな風に怒りや悲しみをやり過ごしてきていた。

幼いころ私が経験したたくさんの理不尽な出来事も、思い返せば主人公のように、なんとか納得できるように理由をつけていた。
人は、納得できないと嫌な気持ちはやり過ごせないのだろう。

モヤモヤが解消が解消されなかったのは、結局最後まで理不尽な出来事が続いたからだろう。
スイミングスクール後の性被害から始まり、日々の生活の怠さ、美術館での強烈な劣等感、デリヘルの女性からの悪意のない罵倒、友人宅へ向かう途中のレイプ。
重ためな描写が続いた。
強烈な描写が多かった為か、その印象ばかりが強く残ったお話だった。


『改良』 著:遠野遥

是非読んでみてください。

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