青天の霹靂
20歳になった。
ある日、私用にて、とある病院に行った。
そこで私は迷子になってしまい、病棟を彷徨った。
病棟の廊下を歩いていると、病室がずらっと並んでおり、患者のネームプレートがみえる。
そこでふと、4人部屋の病室の入り口にあったネームプレートを見た。
祖母の名だった。
見舞客を装って中に入ることは容易かったが、やはりそれは憚られた。
勝手に病室に入って怒られたら?そもそも別人だったら?
私は一旦その場を離れた。
用事を済ませ帰宅した。だが、頭の中はあのネームプレートにあった名前のことでいっぱいだ。
今まで書いてきた通り、家庭環境が複雑であり、母に相談することはできなかった。
そこで私は妹1に相談した。
病棟で祖母の名前を見つけたこと。中を確かめることはできなかったけどすごく気になっていること。純粋に、「おばあちゃんに会いたい」という気持ちがあること。しかし父に鉢合わせすることは絶対に避けたいこと。
母には相談できないこと。
妹「確かめようよ。私も気になる」
私「どうやって?」
妹「病棟でカルテ見せてもらったりできないかな…」
私「家族ですって言えば見せてもらえるかも」
二人ともだいぶ世間知らずである。それでも、いてもたってもいられず、わたしたちは母に内緒で病院へ向かった。
病棟にあがった。ナースステーションの前。
中にいた看護師に事情を説明した。
もう何年も会ってない祖母の名前を見つけた。でも本人だという確証はない。生年月日や住所などの情報を教えてくれないか。もしくはカルテを見せてくれないか。
困った看護師は上司を呼んだ。師長が出てきた。
師長は子供2人がわけのわからない訴えをしたにも関わらず、話を聞いてくれた。
師長「事情はわかりました。ですが、個人情報を教えることはできません」
やっぱり…
師長「でも、あの方は面会禁止ではないので、中に入って確かめてみてはどうですか?」
私「いいんですか?」
師長「いいですよ。確かめられるかはわかりませんが…
あの方は面会もほとんど来られないですし、あなた方が心配してるような、他の家族との鉢合わせもまず起こらないでしょう。」
私「面会、ないんですか」
父との鉢合わせを心配したが、あの父が面会なんてするわけなかった。少し考えればわかることなのに。
師長「たまに、息子さんが着替えを持ってくるくらいかな…」
父は3人兄弟の末。その「息子」というのが父のことを指すのかはわからない。
私たちは師長にお礼を言って、病室に向かった。
4人部屋の、左奥の部屋。